表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

昼食攻略

 ホームルームが終わると退屈な授業が始まる。

 基本科目である国語、英語、数学の他に選択科目として美術や体育などがある。

 そして、必修科目としてあるのが電脳技術。

 この時代パソコンが扱えないのは、生きていけないと同意だったからだ。

 ぶっちゃけ国語はできなくても電脳技術だけはしっかりやらないといけない。


 『スクール』の特徴は大学生のような単位制だ。

 おれは自分で決めた授業を受ける。

 クラス全員を道連れにして。


 もちろん文句を言う人間はいない。

 文字どおり人間はいない。

 なぜならば、全員がNPCだからだった。

 クラスメイトも全員がおれが無意識に好ましいと思っている人格や容姿の生徒なのだった。

 クラスは全員で15名。

 俺のクラスは男が7で、女が8のなかなかにバランスが取れたクラスになった。

 これが別の人間だと男女比1:14だったりする。


 先生も男女比は無意識に決まる。

 俺はそっちも半分ずつだった。


 『スクール』の攻略サイトで見た画像で恐ろしいのがあったのを思い出した。

 男がプレイヤーだけのハーレムな画像だった。

 違法ツールでも使ったのか全員が妊婦だったのはさすがに引いた。


 4時間目まで終わると次は昼の休み時間になった。

 俺は食堂に向かおうとするが、それを綾子が止める。


「翼くん、お弁当作ってきたの。

 よかったら食べない?」


 綾子はカバンから二つのお弁当を出して聞いてきた。

 俺は右手を綾子に向けくっつけた親指と人差し指を話す動きをする。

 俗に言うピンチアウトの動きだ。

 すると綾子のステータス画面空中に出てくる。

 俺は料理スキルレベルを確認する。

 レベル5。

 専業主婦でもレベル3で満足するレベルである。

 最高レベルはテレビに出る有名料理人でさえMAX6ということを考えれば、現状最高レベルであると言える。


「いただこう」


 俺はその初イベントに乗っかってみることにした。

 もちろん綾子の好感度アップを意識したのだが、今朝から感じている感覚の向上が味覚にどう影響するか気になったのもある。


「やった!

 じゃあ、屋上に行かない?」


 俺の答えを聞いて、綾子は嬉しそうに言った。

 小声で朝早く起きて作った甲斐があったと言っていたが、俺は聞かなかったことにしておいた。


 サイトに書いてある好感度上昇テクニックだった。

 ここで突っ込むと後々料理を食べ終わった後にお礼を言うときの好感度上昇が著しく減るのだった。


 俺たちが屋上に向かうために教室を出ようとすると、東さんが声をかけてきた。


「お、お昼食べるなら私も一緒に行ってもいいかな?」


 彼女は小さなピンクのお弁当を持って俺たちに聞いてくる。

 綾子を見ると綾子はなんとも言えない表情をしていた。

 東さんと綾子はかなり仲がいい。

 でも、俺がそこに入るとそれがおかしくなる。

 なぜならば東さんは俺のことが気になっているのだった。

 幼馴染の綾子としてはライバルになるわけである。


 俺はそれを聞くと、


「じゃあ、正樹も一緒に食べないか?」


 と、カバンからパンを取り出していた正樹に声をかける。

 正樹は驚いた顔をしていたが、急に立ち上がると、


「よし行こう!」


 と言って、パンを持って歩いていく。

 東さんと正樹は親戚だった。

 従姉弟と聞いておる。

 そして、正樹は東さんが好きなのだ。


 さて分かりやすくいうと四角関係。

 俺はこれを利用する。

 サイトに書いてある攻略情報は四人での昼食がベスト。

 二人だと東さんの好感度が落ちる。

 三人だと片方の好感度がだだ下がるか両方微減で二人の仲が悪くなる結果になる。


 俺たち三人は正樹が先に向かった屋上へ足を進めたのだった。


 屋上はなかなかに爽快感があった。

 一応フェンスがあるのだが、腰程度までの高さなので景色に邪魔が入らない。

 遠くまで見渡すことができた。

 一番いい場所に正樹が座っていた。

 もうパンをくわえている。


「遅いぞ、みんな」


 俺たちはそこに座ると、お弁当を広げた。

 綾子の弁当はオーソドックスなものだった。

 白米に卵焼き、ウインナーにミニトマト。


「いただきます」


 そういうと、俺は卵焼きを口に含んだ。

 甘い卵焼きですごくうまい。

 やはり感覚がクリアにリアルになっている。

 俺が美味しそうに食べるのを見て、綾子が嬉しそうな顔をする。

 そしてそれを見た東さんが自分のお弁当を差し出す。


「も、もし良かったら私のも食べてみない?

 綾子ほどじゃないけど美味しく作れてると思うよ」


 お弁当を見るとそこには綺麗に作られているサンドウィッチが入っている。

 俺はその中からハムが挟まったサンドウィッチを取ると口に含む。

 こっちもなかなかにうまい。

 気になったので東さんの料理スキルレベルを確認する。

 レベル4納得の味である。


「うまいな」


 そういうと東さんが顔を赤らめて照れていた。

 すると、綾子が言いたいことがある雰囲気を出す。

 これがもし三人だったら、どっちの方が美味しいかったの?と聞かれ、選ばない方の好感度がかなり下がる。

 両方とも同じぐらいというと好感度が少しづつ下がって、二人の仲が悪くなり喧嘩にまで発展する。

 ただ、今は正樹がいる。


 正樹は綾子がその言葉を言う前に、俺の弁当から卵焼きを強奪し、口に含む。

 唖然とする俺たちを横目に正樹はその手を東さんのサンドウィッチにまで伸ばした。

 そして、それもパクリと食べ、


「二人とも料理うまいな!

二人の旦那になるやつが羨ましいな!」


 と言ったのだった。

 二人は俺を見ると顔を真っ赤にしてまんざらでもない様子だった。


「綾ちゃん今度私に和食教えてよ」


「いいわよ、悠美ちゃん。

それじゃ私にも洋食教えてよ」


 結果的に二人は仲良く話し最終的に、


「それじゃ、翼くんのお弁当は一日置きに私たちで作ってくるということでいいわね?」


「高橋君私も料理うまくなりたいから協力してね」


 と言って丸く収まった。

 俺はその様子を見てサイトに感謝したのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ