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スクール

ドラ○エ10の修学旅行のニュースを見て。

 体に違和感を感じて目を覚ます。

 顔を上げて見回すと、学校の教室だった。

 俺の名前は高橋翼たかはしつばさ、高校2年生だ。

 教室のプレートは二年A組になっていた。


 慌てて時間を見てみると17時になっている。

 今日は家に18時までには戻っていなければいけなかった。

 俺は教室をでて、下駄箱に向かう。

 その途中の階段で俺は女の子とすれ違う。

 長い緑の髪をポニーテールにしている。

 大きい青い瞳がとても綺麗な女の子だった。

 彼女は俺に向かってとびきりの笑顔で話しかけてくる。


「あれ、今帰り?

 教室で居眠りでもしてたの?」


「そうだよ悪いか?」


 彼女はくすくすと笑うと、


「悪くないけど、寝顔見たかったなぁって思ってね」


 と言い、俺にウインクをしてきた。

 その笑顔にドキドキしながら、俺はそのまま下駄箱に歩いていく。

 すると彼女は、


「また明日ね、まってるよ」


 と言って、手を振っていたのだった。


 下駄箱に付くと俺は履きを履き左手の手のひらを見ると、甲側にくるりと回転させログアウトのメニューを表示させる。

 そして、ため息をつくとログアウトのボタンを押したのだった。

 


 西暦20☓☓年。

 教育委員会はある決定をした。

 それは教育の放棄だった。

 二十一世紀初頭に起こった教育の崩壊が、ある種最悪の結果を引き出してしまった。


 体罰の問題、モンスターペアレンツ、顧問の問題、教師の待遇問題、そして自殺問題。

 最終的には教諭一人で最大300人以上の人間を面倒みなければいけなくなったと言えば、その悲惨な状況が目に浮かぶだろうか?

 正直医師不足の比ではない。


 離職率ナンバーワン。

 自殺率ナンバーワン。

 逮捕率ナンバーワン。

 エトセトラ、エトセトラ。

 なんというかワースト記録だけでも数えきれないほどの状況だった。


 国はどうにか教員の数を減らさないよう努力をし続けたが、どのような対策を打とうがそのすべてが予め決まっていたことのように失敗に終わったのだった。


 そして、この年教育制度の崩壊を止めることができなかったのだった。


 さて、教育制度を失った国がどうなったかというと、それはそれは悲惨なことになってしまった。


 読み書き、経済、治安、歴史何もかも崩壊していくのだった。

 かつて先進国と言われた日本の姿はもうそこにはなかった。

 ただ、これは日本だけの問題ではなかった。

 諸外国も同様の道を歩み続け、世界的に崩壊の様相を呈していた。


 人類の衰退が戦争でもなく、厄病でもなく、教育で起こるなんて信じられなかった。


 そして人類はある決断を実行することになる。

 それはVR技術による教育制度の復活である。


 VR技術の第一人者伊藤カエデ博士は提唱した。


 全投入型VRによるAI主体のNPCによる教育システムの構築こそが人類を救う唯一の道だと。

 

 考えてみよう。

 なぜ教育システムは崩壊してしまったのか?

 それは人という種が自己というものを認識しすぎてしまったが故の必然である。

 自分が一番大切にされるべきである。

 自分が気に入らないことはすべて消えてなくなってしまえばいい。

 自分さえよければそれでいい。

 まさに人は自己認識によって精神的に神に進化したのである。


 であるならば。

 

 精神が神であるならば!


 自分が最優先される世界を作るしかないのではないのか?


 学生一人のためにすべて作ってしまえばいいのではないか?


 そして、伊藤カエデはシン教育委員会を立ち上げ、新たな教育システムを生み出す。


 人類は再度教育を手に入れることが出来たのだった。


 本当に人類の希望たりうるのか?

 

 それは時代が決めることだよと伊藤カエデ博士は締めくくったのだった。



 俺は世界から切り離されるのを感じると不安を感じた。

 この世界はあの世界とは違って居心地が悪いともいえる。


 俺は仰向けに寝ている。

 体にものすごくフィットする材質でできたベットに寝ているのだ。

 ぷシューっという音が聞こえると眼を開ける。

 見ると、カプセルの扉が開いていくのが見えた。

 俺は今全投入型VR機器の中にいたのだった。

 

 ゆっくりと、俺は外に出ると掛けてあった服に着替える。

 投入中は下着姿になっているのだった。

 ここは俺の部屋、投入型VR機器の他には、ベットとクローゼットぐらいしかなかった。

 勉強机すらこの部屋にはない。


 部屋から出る。

 階段を下りるとリビングに入る。

 そこには40代の女がいた。

 高橋朱美たかはしあけみ、俺の母親だ。

 若作りと派手な化粧が鼻につく、服装も派手だ。


 テーブルの上には母が作ったのか料理が並んでいた。

 母は俺を見ると、


「また、無駄に入っていたの?

 時間は無限じゃないんだから、こっちで勉強でもしていなさい!!」


 と不機嫌を隠さずに言葉を発した。

 母は最後の義務教育世代だ。

 全投入型VRに拒否感があるのだ。


「こっちでも向こうでも変わらないだろ!

 むしろこっちの世界は息苦しいんだよ!

 あんたの常識を俺に押し付けるな!」


 売り言葉に買い言葉、母の高圧的な態度にイライラしてしまう。

 思春期特有の反抗期的反応だ。


 母はテーブルを叩くと、俺に向かって叫ぶ。


「あなたは現実を見てないのよ!

 いくらあんな世界で勉強したって役に立つわけないじゃない!

 いつまでも子供みないたことはやめなさい!」


 俺はキレた。

 同じくテーブルを叩き叫ぶ。


「ふざけんじゃねえババア!

 俺はあんたのおもちゃじゃないんだ!

 もうてめぇの顔なんて見たくもねえよ!

 早くあいつのところにでも行って来いよ!

 そんな色目を使って気持ち悪いんだよ!!」


 母はとてもショックを受けたような顔をしているが、その後顔を真っ赤にさせて俺に言い返してくる。


「そんなことを思っているの!!?

 それにあの人のことを悪く言わないで!!!

 あなたと違って現実と向かう人だわ!!

 あなたの顔なんて見たくない!

 私は二日ほど留守にするけど、今後のことをしっかり考ええて反省してないさい!!」


 俺の前から去っていく母にイラつきながら、伝える。


「二度と帰ってくるなババア!!」


 玄関のドアが強くばたんと閉まる音が聞こえた。


 気分は最悪だった。

 俺はイライラし、母が作った晩御飯をすべてゴミ箱に叩き捨てると、部屋に戻ってベットに突っ伏す。

 そして枕に顔をうずめただ叫んだ。


 しばらく、していると睡魔に襲われそのまま寝てしまった。



 次の日最悪な気持ちで目覚めると、俺は下に降りてとりあえずシャワーだけ浴びた。

 台所に行き、冷蔵庫の中から栄養ゼリーを取り出すと一気に飲み干す。


 そのまま部屋に戻ると、カプセルの中に入り、投入スイッチを押す。

 数秒のタイムラグがあり、俺の意識がこの世界から離れるのを感じていた。


 俺は目覚めると、校門の前にいる。

 もちろん制服を着ているしかばんも持っている。


 ここはVR世界、アプリ『スクール』の中のなのだった。

連載予定ですが、更新が遅くなるかもしれないです。

感想や意見よろしくお願いします。

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