出会い7
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空間の狭間にある場所。
殺風景な空間の中を歩く姿があった。
飛行機に似た羽を持つ小さな機体はモニター越しに何かを見ている自身よりも大きな機体の背後に立つ。
「醜い」
不意に呟かれた言葉に小さな機体はモニターを見上げる。
そこには「絶望の獣」が映し出されていた。
元の姿は自分達と同じ生命体だったと言われれば疑うであろう姿。
心を映し出すかのようなおぞましさが感じられる。
黙っていると機体が振り返った。
「迅、報告を」
漢服に似た布製の衣装の袖を合わせて礼をすると迅―シン―と呼ばれた機体は報告を始める。
反応のあった街で膨大な怒りの波動を感じたが、嘘のように静まった事を話すと機体は何かを考えるような素振りを見せた。
絶望に堕ちなかった機体の存在に興味を示して唸る。
気が変わったか、もしくは誰かの干渉があり消えたか。
誰かが絶望から救ったとすれば目の当たりにしてみたいと思った。
「絶望に堕ちそうになるのを回避出来る事例は聞いた事がありません」
迅の言葉に機体も頷く。
何か特別な存在が動き出している事を感じ、腕を組む。
目を閉じて思い出すのは深い暗闇の感覚。
それを逃れたからこそ此処にいる。
「引き続き捜索を頼む」
「分かりました」
布がパーツの中に収納されると羽と脚部のエンジンが起動して迅は狭間から出る為のゲートを開いた。
加速してゲートの中に消える姿を見つめ、機体はモニターに視線を戻す。
静まり返った場所で何度も再生される映像。
パネルを操作して映像を消すと機体が移動を始める。
二体の他に存在する機体が集まる所。
王によって居場所を奪われた機体達を集めて作った組織。
「データはどのくらい完成をしている?」
「はい、迅さんが手伝ってくれたのでほぼ完成です」
「迅が?あいつまた休まずに働いていたのか」
思わぬ名前に機体は顔を顰める。
手伝ってもらったと発言した機体は、休むように伝えていた事を言うが先程飛び立った姿を思いだし頭を抱えた。
「まさか……まだ働いているんですか?」
「そのまさかだ、気付かなかった俺も悪い……」
排気をすると研究者達は憐みの視線を向ける。
遠くから近づいて来るリズミカルな足音に気付き、全員は振り返った。
踊りながら現れた機体は上司の姿に気付くと音楽を止めて立ち止まる。
「ラッパー、お前は何をしている?」
「デルタっちが欲しがってた情報を集めてきたんだよね僕チン頑張ったんだけど欲しい?欲しい?」
早口な言葉で言うとデーターチップを見せつけた。
それを奪うと端末に差し込む。
何処かの監視カメラの映像が映し出された。
怒りに震えている女性を止める男性。
これが、欲しかった情報なのかと首を傾げるとラッパーは続きを見るようにと端末を指差す。
男の胸から生える長剣。
「これは……」
「絶望の反対……希望の勇者が現れたデルタっちはどうする?」
希望の勇者という言葉にデルタは表情を曇らせた。
この世界に今更と思うが何も言わずに端末の電源を落とす。
ラッパーも何も言わずに手を振ってリズミカルな動きのまま去って行く。