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出会い6

「話が長くなったね、俺はそろそろ行く」


「ま……って、お願い、もう一度聞かせて……今、なんて言ったの?」


ライラックでの絶望。

その正体についてもう一度聞き返す。

信じたくないと思った。

嘘であってほしいと。

記憶に残る姿に、身体が震えた。

向けられていた笑顔は、励ます為では無い。

記憶が再生される度に分かって来る笑顔の意味に、ネリネは頭を振った。


「悲しい事だけれど、彼は絶望の先に堕ちてしまったんだ」


ニコルが絶望に堕ちていた真実に映像が狂ったように巻き戻されては再生される。

獲物を見つけたような笑顔。

伸ばされた手は、助ける為でなく喰らう為に伸ばされていた。


「嘘、嘘、嘘嘘嘘!」


何度も何度も信じたくないと発せられる言葉。

劫火の中にいる影は、振り返ると手を伸ばしていた。

間違っていた記憶にネリネは拳を地に叩きつける。

硬質な音が響き続けるも止める者はいない。

ただ、雨に濡れている機体を静かに見つめていた男はゆっくりと関節を折って傷付く腕を掴む。

行き場を無くした感情をぶつけようとしたが、重い音が一度鳴るだけでそれ以降は何も聞こえなくなった。

一体の身体にもたれかかるようにしてネリネは声を出さずに泣いている。


「……ネリネ、ここでは錆びてしまう……戻ろう」


静かに響く声に返答はない。

腕を引かれるまま、宿に戻る道を進む。

ふと、研究者が武器を持っている理由が知りたくなり聞こうとしたが気力が無い。

乾燥装置の前に座っていると男に引っ張られて無理矢理、放り込まれた。

濡れた身体が乾燥し装置から出ると男は固形燃料を差し出す。


「……なんで?」


「え?」


「なんで貴方は武器を手にしたの?」


「世界を造った神にチャンスを貰ったんだ」


胸の石に触れて言うとネリネは不思議そうに首を傾げる。

難しいかっただろうかと笑みを浮かべた。


「仲間が絶望に堕ちた時、俺は修復出来ない程に破壊されたんだ、その時に思った事が創世主を呼んだ」


それ以上は何も言わずに固形燃料を齧る。

名も分からない男には、誰にも言えない秘密があるのだと理解して深くは聞かなかった。


「王を恨みたい気持ちは分かる、けれど恨んだ所で王を破壊した所で何かが変わるとは思えない……俺達生命体は生きているんだ」


「生きているからこうして自分の意思で動いている、俺達には意思があるんだ分かり合えるんだ」


「私は、どうしたらいい?」


「世界は創造主に見放された、それはどうしてだと思う?」


科学者は皆、答えを言わずに自分で見つけさせようとする。

固形燃料を齧って考えた答え。

創造主が見放したのは、一体一体が運命に抗おうとしないから。

言いなりになって崩壊していく世界を見ているだけの存在なんて必要ない。

だから、見放した。


「私達がすべき事は運命に抗う事なの?」


「そう、絶望の反対は希望……希望を忘れた世界なんて悲しいじゃないか、だから俺は希望を持って生きている」


「希望……」


絶望に堕ちた者を助ける為に出来る事をしたいと男は言う。

武器を持つのも王を破壊する為じゃない、助ける為なのだと。

ニコルのような機体を救う。

ネリネは男の言葉に頷くと立ち上がる。


「私も!」


いきなりの行動に目を丸くする男の手を取って決意を言葉にした。


「私も、誰かの為に武器を使いたい!復讐の為でなく、誰かの為に」


こうして、一体の旅は二体に増えた。

街を出て新たなる場所へ向かって歩きだす。

しかし、これからどうするのかという質問を受けた男は立ち止まって腕を組む。


「創造主が取り上げた物を取り戻さなければいけないし、王と分かり合えると思っている仲間も欲しい」


「プラン無し?」


「いや、その……はは……」


ネリネは排気をすると行き着く街で仲間を探す事を提案した。

ただ仲間を増やすだけでは意味が無い事、仲間を増やした後どうしたいのかを質問すると男は唸る。

何も計画していない事に絶句し、頭を抱えた。


「あ、そうだ……そうよ!まだ聞いてない!」


「へ?」


「貴方の名前よ!」


指を向けられた男はそうだったかと首を傾げる。

共に希望を進んでくれる仲間に手を差しのべると目を細めて言う。


「私の名前はオメガと言う、これからもよろしく頼む」


ネリネは頷いて差し出された手を握り締めた。

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