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僕は魔王の子  作者: ねぎ
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ある勇者の話

何番煎じだって感じですね…ノリと勢いで書きました。続けるつもりでしたが出来そうもないのでこのまま放置です。

 後のヒーローやプリンセスは、最初から幸せな訳ではない。いじめられていたり、周りより劣っていたり。そうでなくても基本は普通の一般人で、幸せを仲間たちと共に自分の手で掴みに行くのだ。

 だからこそ英雄、それでこそ英雄。

 そしてまたある世界で、新たな武勇伝が刻まれた。


 魔界から現れた魔王を、勇者が仲間たちと共に倒したという。当然人々は塵と化した魔王を悪の権化として捉え、勇者たちを英雄として讃えた。

 主役となった勇者は村の中でも落ちこぼれと呼ばれ、身体も小さく馬鹿にされていたが、魔王を倒したことで皆に認められ…


 …と言うのは、公園で子供たちにお話を聞かせるお婆さんの思い込みである。


 現在勇者は城と見まごう程の豪邸で高級ブランド品に包まれ、妖艶な美女に囲まれて貴重な酒と食材を使った料理を食らっては下品な笑い声を上げていた。

 そもそも産まれは村などではなく王国の中心街の大富豪の1人息子で、落ちこぼれどころか金にものを言わせて超名門校を卒業したエリートで、魔王を倒した手柄として現在の王の娘である王女を嫁に貰うことが決まっている。王の子どもに男性はいないので、つまるところ既に未来の王である。

 その王になるきっかけを生んだ魔王退治も、金で雇った鍛冶職人に最高の武器や防具を作らせ、金で雇った最強の兵士たちにそれらを装備し、金で雇った全知全能の魔法使いを連れ、更には魔王の仲間を金で雇い寝返らせ、魔王が酒に弱いことを知って高い酒を用意し、寝返った魔王の元仲間に酒宴を開かせ、泥酔した上に毒を盛られ弱った魔王を総攻撃した…と言う。


 そして勇者はこれを「作戦勝ちだ」と胸を張って言ったという。大富豪の嫡子が必死になって働いた後のように汗水を垂らす姿は民衆の心を打ったという。

 魔王が怖くて冷や汗が止まらなかっただけなのに。


 民衆には知る由もないだろう。真実を知る勇者に協力した雇われ達も、魔王の城にあった金銀財宝に留まらず家具や装飾品までありとあらゆる物を持ち去り、人間界で高値で売り捌いで稼いだ上、勇者から口止め料まで貰って裕福に暮らしているのだから。

 民衆にとっては勇者が語ることが全てで、全てが真実なのだ。誰も本当のことなど知ろうとしない。

 このまま彼らは死ぬまで英雄として讃えられるのであろう。いや、死んだ後も、彼らの輝かしい英雄譚は後世に語り継がれ子供たちの夢になり報われない人々の救いとなるのだろう。


 ーーが、それを許さない者がいた。


「…楽しそうだな、勇者」


 薄暗い、ボロい木造の建物の中。水晶に映るのは美女に鼻の下を伸ばす小太りの男…勇者。

 そしてそれを酷く冷たい目で見つめているのは、耳が長く角と黒い翼が生えた少年。


「父さんを殺したくせに、楽しそうだな。豚勇者」


 そう、此処は魔界。


 彼は魔王の子、魔王子。


 勇者を見つめる魔王子の身体から黒い煙のようなものが漏れ出す。それは徐々に大きくなり、やがて巨大な鎌のようになった。

 魔王子は呟く。


「殺す」


 振り下ろされた煙の鎌が、勇者ごと水晶を砕き割った。 



 金で全てを解決してきたクズ勇者になにもかも奪われた魔王子、そして彼の下に集う物語の嫌われ者たち。

 復讐劇という名の英雄譚が今、幕を開けた。




繰り返しますがコメディのつもりです。プロローグなので真面目なだけです。

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