#03 私はカナメ
「美保ちゃん、大丈夫~~」
自分を心配する声がする、あの妖精の声だ。
美保は少し眼を開けてみた。
白い天井が見える。
どうやらここは階段の踊り場のようである。
(ということは、助かったの?私?)
(頭から落ちたように思ったけど?)
「あたし階段から落ちて…」
「No,Problem。私が助けたわ。」
「でも、確かに頭から落ちて…?!」
その時、美保は驚いた。全く怪我らしきものがないのだ!
「あたしね、ちょっとだけ時間を巻き戻したの!それで、美保ちゃんが落ちる前に助けたのよ!」
「そんな!信じられないわ!時間を巻き戻すだなんて!」
「でも、怪我してないでしょ?」カナメが言い返す。
「うっ!」
確かに怪我はしていない。あれだけ派手に落ちたのに無傷はありえない。
「でも、だからって急にそんなこと信じれないわ!」
「う~~ん、そ~だよね~」悩むカナメ。
カナメ的には今回の件で、自分が妖精であることを信じてもらえると思っていたのだ。
だがかえって疑惑を深めてしまったようである。
「ならとりあえず、あたしが妖精であるかどうかは、今後確認するということで!」
本来ならそんなことは美保が決めることだが、さっさとカナメが結論を先延ばしにしてしまった。
「ちょっと、何勝手に話し進めてんのよ!」
「めんどくさいことは後、後!」引かないカナメ。
「大体、あんた何なのよ!なんであたしに絡んでくるのよ!」
「それはですね~~」
(ポン!)
クラッカーを取り出し、美保の前で鳴らすカナメ。
「おめでとうございます。あなたは初代人間界大使に選ばれました!」
「で、そのお世話係としてわたくしカナメが遣わされました。」
「というわけで、今後ともよろしくお願いしますw」
美保の意思など無関係にとりつくカナメであった。