獣臥 2
「やっぱりこの森は結構いいものが揃っているな。」
早いうちに宿を発って正解だった。
だいぶこの土地は越えているようだ。
浅い地域でも豊かな土壌が無ければ芽を出すことすらしない植物が生い茂っている。
「おっと、こいつは朝告花。本当に珍しいもんが揃ってんな。」
ある程度摘んで背嚢に入れると腰を上げる。
「ん?先客か。」
奥からガサガサと音を立て現れたのは黒い髪を腰まで伸ばした美しい女性だった。
彼女は自分を見るとひどく驚き、その場で反転すると
「あっ。」
勢いよく地面に突っ伏した。
転けたのだろう。勢いよく地面の草が宙を舞う。
「大丈夫ですか?」
「…………」
「あの?大丈夫ですか?」
「…えぇ、大丈夫。」
そう言うと彼女はゆっくりと立ち上がり、服の泥を落とした。
こちらを向くと吸い込まれそうなほど深い青い目が自分の目を捉える。
「おっ……。」
「お?」
「お、おは、おお……。」
何が言いたいんだ……?
オロオロとし始めた彼女を見ているとふと気づいた。
靴を履いていない。
それに両手と両足に包帯を巻いている。
しかも真っ赤だ。
「それ、どうかしたんですか?」
「えっ、あ、ああぁ。え、えぇ、まぁ。」
そう言うと彼女はすっと両手を後ろに隠した。
「それに靴も履いていない。」
「あっ。」
どうやって隠そうかと一瞬悩んだのだろう。しゃがむ素振りを見せた後。
「ごめんなさいっ!」
森の奥へよたよたと走り出した。
突然の行動に唖然と見送ってしまう。
「……なんだったんだ…。そういえば森の奥には狼がいるという話だったな。これは助けに行くべきか否か……。」
少し悩む。
「行ってみるか。いなけりゃ奥のもん取って帰るだけだし、いたらいたで追い払えばいいだろう。」
背嚢を担ぎなおすと彼女が駆けていった奥へ歩き出した。
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