プロローグ
よっろしっくお願いしま~す♪
zzzzz……
m(―.―)m
すみません、眠いです…
俺の大嫌いな人種。――――それはいろんなことを夢見ている人だ。
例えば、
ちょっと今回宝くじ当たるかもしれない、だの。
カノジョこそは運命の相手に決まっている、とか。
今度こそダイエットできてかわいくなれるはず、だったり。
次こそはイケメンをゲットして見返してやろうじゃんか、とやら。
今日もまた、俺の周りではそんなことしか話せない奴ばかり。
そして俺はそんな奴らが大っ嫌いだ。
どうしてそんなに夢見るのがいいのだろう? まったくもって理解しがたい心情だ。
「なぁ、神宮司、オレ今度こそ上手くいくと思うわ」
話しをふられてうざいと思う。
だけど、一応は合わせる。何故ならそうするのが楽だからだ。
にっこりと笑って言う。100%作り笑顔。でもみんなコロッと騙される。
「おう、がんばれよ」
未来に浮かれた少年は元気にカノジョのもとへと駆けていく。
そんな彼の背中を見送りながら、笑顔の下で悪態をつつく。
――――雑魚が。浮かれてねーで現実見ろよ。
絶対に言わない。言ったらどうなるか、それは想像するに絶やすい。いじめだ、パシリだ。まぁ確実に良い方へは天秤は傾かないだろう。さらに追い打ちをかけるように親や先公がああだこうだと騒ぎ出して、一躍俺は有名人だ。そんなことはごめんこうむる。
なにしろ、俺は目立たずひっそりと生きることには長けているのである。
さて、本日も頑張った。
帰るか。
ぽつりぽつりと雨が降り始めた。
「あーあ、完全に降ってきやがった」
「傘を忘れたお前が悪い」
「いいや、僕は悪くないとも。降水確率が40%だと言ったニュースが悪い」
「いいや、それを言うならロッカーの中に傘を普段から入れて無かった方が悪い」
俺は夏樹の口調を真似てみる。夏樹の話し方は語尾が必ず上がる。真似るのは案外簡単だ。
夏樹がニヤリと笑う。俺は視線を逸らす。
「なんと! お前の口からそのような言葉がでようとは」
「……」
「まぁいいことだよ。僕らは高校生だ。普通であればそうして腹を抱えて笑っている頃さ」
「ならやればいいじゃないか」
「まさか。僕はそんなことに貴重な高校生活を使い果たしたくはないね」
「同感だ」
雨はまだ降っている。