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第四話 新たな刺客! 灰色の魔宝具使い!

「ったく、何が伝説の勇者や。ワイが勇者だったら、もっとまともな暮らしをしているちゅうねん。なぁ、ペケ? あれ? ペケ、どこ行った?」

 バッツは辺りを見渡す。だがペケの姿はどこにも無かった。

 密かに家から抜け出したペケは、家から少し離れた所にある森の中を駆けていた。

 参ったニャ。あんな強力な魔宝具使いが傍にいられたら、勇者を暗殺するなんて出来ないニャ。ここは一旦引いて作戦の練り直しニャ。

 森を駆け抜けると、やがて小さな湖が見えてきた。

 湖のほとりまで辿り着いたペケはひょいと湖を覗き込む。すると、湖に映り込む猫の姿がゆらめき、やがて彼の本当の姿が露となった。全身を黒い毛で覆われた猫耳の怪物、邪神の使い、魔族ニャン吉である。

 ニャン吉は首輪についていたロケット型のペンダントから何かを取り出した。それは豆粒のような小さい小瓶だった。ニャン吉は小瓶の蓋を外すと、パッパッと湖に撒く。すると、まるで黒の絵の具を水に溶かしたかのように、湖が黒く染まっていく。

「こちらニャン吉、応答するニャ。こちらニャン吉、応答するニャ」

 ニャン吉は、黒く染まった湖に向かって何やら呼びかけている。すると、湖の表面がゆらめき始め、凶悪そうな魔族の姿が浮かび上がった。

 筋肉質な体を包む銀色の体毛、爛々と赤く光る獣の瞳。その口元には鋭い牙が覗いている。それは、狼の頭を持つ人狼であった。

「待っていたぞニャン吉。作戦は上手く行ったのか?」

「シ、シルバ様、それが……」

 ニャン吉は、事のあらましを上官であるシルバに臨場感たっぷりに説明した。勇者の家に猫を装って潜入に成功した事。その後、魔宝具を操る女魔宝具使いが現れた事。危うく猫鍋になって食べられそうになった事、などなど。

 ニャン吉が話している間、シルバは目を瞑り、眉一つ動かさず黙って聞いていた。

「……と言うワケニャ。とてもじゃないけど、オイラ一人じゃ太刀打ち出来ないニャ。誰か援軍をよこして欲しいニャ」

 一気に話し終えたニャン吉は、ふぅと一仕事終えたような顔で息を吐いた。

 暫く黙っていたシルバだが、やがて重い口を開く。

「……よかろう。では、援軍を送ってやる。但し、次は無いぞ。失敗したら命は無いと思え」

 その言葉と同時に、湖がザザザッとゆらめき始める。そして、ザバっと湖から手が飛び出し、ニャン吉の足をガッシリと掴んだ。

「ニャニャニャ?!」

「アーッハッハッハ!」

 驚くニャン吉の目の前に、湖からけたたましい笑い声と共に一人の少年が飛び出した。

 灰色の髪、灰色の瞳、灰色のローブ。

 全身を灰色一色に包んだその少年は、狂気に満ちた目でニャン吉を見据え、ケタケタと狂ったように笑っている。

「アーハッハッハ! ごめんねぇ、驚かせちゃったかなぁ? 僕の名前はクライム! 灰色の魔宝具使いクライムとは、僕のことさぁ!」

 呆気に取られているニャン吉に、クライムはニコリと微笑むと、懐から取り出した小箱を差し出した。

「ニャ?」

「お近づきの印ですよ、ニャン吉先輩♪」

 ニャッと、ニャン吉は嬉しそうに尻尾を立てる。

「ふむ、先輩であるオイラにちゃーんと土産を用意しておくとは中々殊勝な心がけニャ。お前は出世するタイプニャ」

 口笛を吹きながら上機嫌に小箱をくるむリボンを解いたニャン吉は、ニコニコしながら小箱を開けた。そして次の瞬間、真っ白な閃光と共に小箱が大爆発を起こした。

「アーッハッハッハ! 引っかかった引っかかった。どうです、僕の魔宝具『びっくりBOX』は? 面白いでしょ? でしょ?」

 ケホッと口から煙を出し、黒い体をさらに黒くさせたペケがジロリとクライムを睨む。

 そんなペケを指差しながら、クライムは腹を抑えながらケタケタと笑っている。

「嫌だなあ先輩、そんな怖い顔をして睨まないで下さいよ。ただの冗談じゃないですか」

「この火薬の量は、冗談で済まないレベルニャ!」

 怒るペケをよそに、クライムはその場でクルリと背を向けると、まるで人形のようにギギギと首だけを180度回転させた。

「まぁ、任せてくださいよ先輩。僕にかかれば勇者の一人や二人、イチコロですって♪ きっちりと殺して見せますから」

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