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ケータイ小説は終わった、なろう系は終わってない

作者: 水源
掲載日:2026/09/03

「なろう系は終わった」


 そんな言葉を見かけるたびに、私は少し引っかかります。


 私は今でも「小説家になろう」や「カクヨム」で作品を読んだり、書いたりしています。


 だからこそ、昔との違いは実感しています。


 10年前ほどの活気はありません。


 感想も、以前より明らかに付きづらくなったと感じます。


 ランキングの顔ぶれも変わりました。


 昔のように、何を書いても大きな話題になるような時代ではないのでしょう。


 それでも。


 本当に「なろう系は終わった」のでしょうか。


 そう考えると、どうにも腑に落ちないのです。


 なぜなら今でも、


 異世界転生。


 追放。


 ざまぁ。


 無双。


 悪役令嬢。


 スローライフ。


 こうした要素を使った作品が、普通に投稿され続けているからです。


 もし本当に終わっているのなら。


 なぜ、こんなにも残っているのでしょうか。


 私は、そのことを考えていくうちに、一つの結論にたどり着きました。


**「なろう系が終わった」のではなく、「なろう系」という一つの言葉では説明できないほど、Web小説そのものが広がったのではないか。**


 そう考えると、昔と今の違いも少し見えてきます。


---


# 「テンプレート」は、消えるだけではない


 昔のケータイ小説を思い出してみると、当時は大きな一つの流行として認識されていました。


 しかし今では、「ケータイ小説」という言葉だけで、現在の小説市場を語ることは難しいでしょう。


 一つの流行が、そのまま同じ形で残り続けるわけではないからです。


 ところが「なろう系」と呼ばれる作品群は、かなり長い間残っています。


 形を変えながら。


 流行を変えながら。


 別のジャンルと組み合わさりながら。


 ここには、「なろう系」というものの大きな特徴があるのではないでしょうか。


 それが、


**一つの型から、別の物語を作りやすいこと。**


 です。


 例えば「異世界転生」。


 この言葉を聞けば、似たような作品を想像する人も多いでしょう。


 けれど、


『転生したらスライムだった件』


『Re:ゼロから始める異世界生活』


『この素晴らしい世界に祝福を!』


 では、物語の方向性が大きく違います。


 同じ「異世界」という入口を使っているのに、その先で描いているものは別物です。


 政治を描く。


 戦争を描く。


 コメディにする。


 恋愛を描く。


 主人公の成長を描く。


 世界そのものを作り込む。


 異世界という舞台なら、極端に言えば世界のルールそのものから設計できます。


 だからこそ、


**同じ入口から、さまざまな物語へ進める。**


 ここが異世界系の強さなのだと思います。


---


# テンプレートには「広げやすさ」がある


 もちろん、すべてのテンプレートが同じように長生きするわけではありません。


 私は、テンプレートには、


**「広げやすいもの」と「広げにくいもの」がある**


 と思っています。


 例えば現代ダンジョンもの。


 現代日本。


 ダンジョン。


 能力。


 モンスター。


 レベルアップ。


 装備強化。


 そして、さらに強い敵。


 もちろん、そこから政治や経済、人間関係へ話を広げることもできます。


 しかし、意識して変化を加えなければ、物語の中心が似た形へ収束しやすい。


 外れスキル系もそうです。


「役に立たないと思われていた能力が、実はものすごく強かった」


 という構造は、とても分かりやすい。


 だからこそ人気になります。


 ただ、同じ構造を繰り返していけば、


「またこのパターンか」


 となってしまう。


 さらに、


「どうして、この能力が外れ扱いされているの?」


 という疑問まで生まれます。


 設定上は便利で強力なのに、周囲が無理に「ハズレ」と判断しているように見える。


 そうなると、


「主人公すごい!」


 という爽快感より先に、


「その判定に無理がない?」


 という違和感が出てしまいます。


 つまり、


**テンプレートそのものが悪いわけではない。**


 問題なのは、


**そのテンプレートから、毎回同じ物語しか作れなくなること。**


 なのだと思います。


---


# 古くなるのは「入口」ではない


 このことは、追放ものにも当てはまります。


「追放された主人公が、実は最強だった」


 これは非常に分かりやすい構造です。


 追放される。


 主人公が評価される。


 追放した側が後悔する。


 主人公は幸せになる。


 爽快感があります。


 だからこそ、多くの作品が生まれました。


 しかし、そこで終わる必要はありません。


「なぜ主人公は追放されたのか?」


「追放した側には、どんな事情があったのか?」


「主人公は追放後、何を求めるのか?」


 そこまで描けば、物語の方向は変わります。


 私自身、追放ものを考えるときに印象に残る作品の一つが『真の仲間』です。


 追放そのものだけではなく、その後の生活や人間関係まで物語を広げている。


 だから私は、


**古くなるのは「題材」そのものではない。**


 そう思っています。


 古くなるのは、


**その題材から毎回同じ出口しか作れなくなったとき。**


 テンプレートは入口です。


 入口が同じでも、その先の道を変えることはできる。


 そして、その違いこそが作品の個性になるのでしょう。


---


# カタルシスまで捨てる必要はない


 では、テンプレートを更新するために、読者が求める「気持ちよさ」まで捨てなければならないのでしょうか。


 私は、そうは思いません。


 例えば、


「すごい!」


「そんなことができるのか!」


「あなたはいったい何者なんだ?」


 主人公が周囲から評価される展開。


 これは分かりやすいカタルシスです。


 そして、これは決して「なろう系だけのもの」ではありません。


 昔から多くの物語で使われてきた構造です。


 最悪の環境にいた主人公が認められる。


 努力や才能が評価される。


 そして幸せになる。


 この構造自体は、今後も残るでしょう。


 問題は、


**「なぜ評価されたのか」**


 です。


 主人公を持ち上げるためだけに、周囲が急に無知になる。


 今まで優秀だった人物が、主人公を褒めるためだけに突然無能になる。


 そうなれば、


「さすが主人公!」


 よりも、


「さすがに不自然では?」


 という感想が先に出てしまう。


 主人公が努力する。


 能力を発揮する。


 結果を出す。


 その結果として周囲から評価される。


 読者も、


「それなら評価されるよね」


 と納得する。


 それなら、昔ながらのカタルシスを残したまま、物語を新しくできます。


 主人公が強いことも同じです。


 重要なのは、


**「その力で何をするのか」**


 でしょう。


 魔王を倒す。


 国を作る。


 商売をする。


 農業を発展させる。


 静かに暮らす。


 目的が変われば、同じ「強い主人公」でも物語は変わります。


 さらに、その力によって人間関係が変わる。


 政治が変わる。


 産業が変わる。


 社会が変わる。


 そこまで描けば、主人公の強さは単なる「無双するための設定」ではなくなります。


**物語を動かす力になる。**


 だから私は、


**変わるのはカタルシスそのものではなく、カタルシスを生み出す方法なのではないか。**


 と思っています。


---


# 読者が細分化すると、ジャンルは混ざる


 読者の好みが細かく分かれていけば、それに合わせて作品も細分化していきます。


 無双を読みたい。


 恋愛を読みたい。


 政治劇を読みたい。


 世界設定を楽しみたい。


 歴史を読みたい。


 経営を読みたい。


 そうした需要が、それぞれ存在する。


 しかし、それらは必ずしも別々ではありません。


 異世界転生を入口に政治劇を描く。


 追放を入口に人間関係を描く。


 無双を入口に社会改革を描く。


 恋愛を軸にしながら、世界設定を深く描く。


 こうした組み合わせができます。


 つまり、


**読者の好みが細分化するほど、作品がジャンルごとに完全分離するとは限らない。**


 むしろ、いくつものジャンルが混ざっていく。


 その結果、


「これは異世界ものなのか?」


「恋愛なのか?」


「政治ものなのか?」


 一言では説明できない作品も増えていくでしょう。


 私は、むしろそれでいいと思っています。


---


# 「なろう系」では説明できなくなる


 異世界転生を扱っている。


 チート能力もある。


 けれど、中心にあるのは政治劇。


 あるいはミステリー。


 恋愛。


 歴史。


 経営。


 群像劇。


 こうなってくると、


「なろう系」


 という一言だけでは説明できません。


 しかし、それは「なろう系の衰退」なのでしょうか。


 私は、むしろ逆だと思っています。


**一つの大きな括りから、いくつもの違った作品が生まれている。**


 そう考えられるからです。


 一つの型が生まれる。


 作品が増える。


 読者が慣れる。


 作者が変化を加える。


 別のジャンルと組み合わせる。


 そこから新しい型が生まれる。


 こうしてテンプレートは更新されていく。


 これは、


**ジャンルが消えていく過程ではなく、ジャンルが変化していく過程**


 なのではないでしょうか。


---


# Web小説は「Webだけ」で終わらない


 そして、もう一つ忘れてはいけないことがあります。


 仮に「小説家になろう」そのものの勢いが、10年前より落ちているとしても。


 それだけで、


**「なろう系」という作品群の商業展開まで終わるわけではありません。**


 Web小説として公開される。


 そこから書籍になる。


 コミカライズされる。


 さらにアニメ化される。


 場合によってはゲームや映像へ広がっていく。


 もちろん、すべての作品が書籍化されるわけではありません。


 書籍になった作品が、すべてコミカライズされるわけでもない。


 コミカライズされた作品が、すべてアニメ化されるわけでもありません。


 それでも、


**Web小説から生まれた作品の作り方が、出版や映像の世界へ入り込んでいる。**


 この点は無視できないでしょう。


 だから私は、


「なろう系の書籍化やコミカライズが、これからすべて終わる」


 とは考えていません。


 もちろん、10年前と同じ勢いが永遠に続くとも思っていません。


 売れる作品の傾向は変わる。


 出版社が求める作品も変わる。


 アニメ化される作品の傾向も変わる。


 Web小説サイトそのものの勢力図も変わるかもしれない。


 しかし、


**「昔ほど流行っていない」ことと、「商業ジャンルとして消滅する」ことには、大きな差があります。**


 ここを一緒にしてしまうと、今起きている変化を見誤るのではないでしょうか。


---


# 「なろう系の終わり」の先を見る


 だから私は、


「なろう系は終わった」


 という言葉だけでは判断しません。


 異世界転生がなくなる必要はない。


 無双がなくなる必要もない。


 追放ものも残るでしょう。


 主人公が評価される展開も残るでしょう。


 ただし。


**昔とまったく同じ形で使われ続けるとは限りません。**


 テンプレートの価値は、その名前だけでは決まりません。


**その型から、どれだけ違う物語を作れるか。**


 私は、そこにあると思っています。


 だから、


**「なろう系は終わった」のではなく、「なろう系という大きな括りが、内側から分岐している」**


 と考えたい。


 テンプレートは消えるとは限りません。


 形を変える。


 別のジャンルと結びつく。


 新しい物語を生み出す。


 そして、その新しい物語が、また別のテンプレートになっていく。


 つまり、


**テンプレートが残るのではない。**


**テンプレートから、次の物語が生まれ続ける。**


 だから私は、


「なろう系は終わったのか?」


 と考えるより、


**「なろう系から、次に何が生まれるのか?」**


 と考えるほうが、ずっと面白いと思っています。


 10年前と同じものが残るとは限りません。


 むしろ、残らないでしょう。


 読者も変わる。


 作者も変わる。


 市場も変わる。


 流行も変わる。


 けれど、その変化の中から新しい作品が生まれてくる。


 もしかすると数年後には、今の「なろう系」を見て、


「そんな作品が昔は流行っていたんだ」


 と言う人もいるかもしれません。


 そのとき、今のテンプレートそのものは消えているかもしれない。


 でも。


 そこから生まれた物語の形まで、すべて消えているとは限りません。


 名前を変え。


 形を変え。


 別のジャンルと混ざり。


 また別の作品として残っているかもしれない。


 だから私は思うのです。


**「なろう系の終わり」を語るより、「その先で何が生まれるのか」を見たほうが面白い。**


 少なくとも私は、そちらを見ていたいと思います。

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本当に、感想がつかなくなりました・・・・。 感想が生きがいの底辺作家にとってはなかなか淋しい現状です。 今までのサイクルですと、 人気のあった作家さんがいなくなって活気がなくなったなと思ったら、 ま…
ジャンル以上に影響が大きそうなのがAI作品で ランキングを席巻しつつありますから、今後書き手にどういう影響が出てくるかですね。 場合によっては小説投稿サイト全体が終わりになる可能性も無くはないので。 …
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