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凪の国の騎士〜仮面騎士団長は異世界から来たばかりの子連れ未亡人に一目惚れする〜

作者: インリー
掲載日:2026/04/21


隣国との争いで顔に傷を負った。

その傷を見た貴族たちはヒソヒソと陰口を

言い、年頃の令嬢達は俺を見るだけで泣くか

酷い時はぶっ倒れる。

それから舞踏会では布の

仮面をつけるようになった。

最初はホッとしていた者たちも

理由を忘れるとヒソヒソあること無いこと

言い始める。

それが嫌で絶対に出席しなければならない

物だけ出席するようになった。

外の見回りの時はフルアーマーで

出かけるようになった。

声をかけられなくなって

気が楽になった。

使用人達や第2騎士団はそこまでしなくても

と言うが、本音では怖がってるのかも

しれないと思うと仮面を外す気にはなれなかった。

1人でフルアーマーを装備して

いつものように見回りをしていた時だった。

サァッと強い風が吹いた。

思わず腕で顔を覆い、目を閉じる。

風が止み、そっと瞼まぶたを開くと――

目の前には、見たこともない異国の服を纏った

一人の女性と子供が立っていた。

よく見れば、その腕の中にはさらに

小さな幼子も抱かれている。

彼女は呆然と周囲を見渡していたが

俺の存在に気づいた瞬間

腕の中の我が子を強く抱き締めた。

そして、俺を真っ直ぐに射抜くような

強い視線を向けてくる。

その、守るべき者のために牙を剥く

「母」の瞳を見たとき。

俺は、柄にもなく


――この人を、一生かけて守りたい――


と思ってしまったんだ。

醜い傷を隠すための「仮面」のことなど

一瞬で頭から消し飛んでいた。

「……何者だ。どこから来た」

ふと我に返り、いつもの癖で冷徹な声を

投げかけてしまう。

違う。俺が言いたかったのは

そんな怖がらせるような言葉ではなかったのに!

「……それは!こっちのセリフです!ここは何処なんですか!?」

「ここは、ニネメーア王国の東にある辺境だ。」

彼女は困惑した表情で身体を強ばらせてしまった。

そんな顔をさせたかった訳では無い。

もっと上手く伝えられれば……。

「ぷは!もう、ママ苦しいよ!」

腕の中に居た小さい子供が顔を上げた。

「ご、ごめんね?痛かった?

大丈夫?ケガしてない?」

抱っこしてる子供と腕の中の子供を

無事かどうかを慌てて確認し

自分も困惑して泣きたいだろうに

子供達を優先する……

そんな姿に彼女は強い母親なんだと

再確認させられた。

じっと見つめていると腕の中の

子供が振り返った。

「仮面のおじちゃん?だれ?」

「…………っ!」

お、おじちゃん……。

フルアーマーで顔など見えない筈なのに

おじちゃん……。

26だぞ、まだ……。

「!ちょっと失礼でしょ!

す、すみません!悪気はないんです!」

彼女が慌てて頭を下げて謝ってくれた。

「……いや、構わない。

私の屋敷へ来るといい。立ち話は疲れるだろう。

そこでゆっくり話すとしよう。」

それだけ何とか言って先を歩き出した。

俺の着ているフルアーマーの

ガシャガシャ言う音だけが静かに響く。

多分、母親を心配して

あの子は黙って歩いているのだろう。

しばらく歩いていると

「ママぁ、抱っこ。疲れた。」

「疲れちゃった?ちょっと待ってね。」

とリュックを下ろそうとしている

彼女がいた。

しまった!早く歩きすぎたか?

最近は人と合わせて歩くことが

減っているから。くそっ!

子供2人を抱えるのは辛いだろうと

「……俺で良ければ抱っこしよう。」

と申しでると

「おじちゃん、良いの?僕、重いよ?」

……おじちゃん、せめてお兄さんと呼んでくれ。

一気に老けた気分になるから。

フルアーマーのせいか?声のせいか?

「あ、あの!荷物持って貰えたら

この子は私が背負って運ぶので!」

悩んでいたら彼女に断られてしまった。

あぁ、そんな遠慮など要らないのに。

だが、しつこく言って困らせるのは本意ではない。

「……そうか。では荷物だけ預かろう。」

「ありがとうございます。」

彼女からのリュックを大切に受け取り両腕で抱えた。

「ほら、背中のって?」

「ママ、大丈夫?」

「大丈夫だよ!ママこう見えて

力持ちなんだから!」

そうやって言う彼女はどう見ても無理して

子供達を背負って抱っこしている。

プルプルと震えつつ立ち上がろうとしている

彼女は見ていて、とても不安定だ。

やはり、俺が1人抱っこした方がと思い

再び提案しようかと口を開こうとした時

キッと前を見据えて立ち上がり

前に抱っこしている赤子を潰さないよう

気をつけつつ歩き出そうとしていた。

今度は彼女の事を考えて先程より

ゆっくりと歩くことにした。

使用人達にはなんと説明するべきか。

異世界から来たインチェル人達を

毛嫌いする者たちは多い。

きっと、彼女達を快く迎える者は

そう多くは無いはずだ。

だが、彼女達を見捨てるという選択肢は無い。

彼女達を見捨てるということは

この国に彼女達は殺される。

ということだからな。

そんな事は……あんな思いは2度と!

2度としたくない。

ヴェレーナにも辛い思いをさせたしな。

……ヴェレーナに協力を仰ごう。

ヴェレーナなら2度と同じ過ちを

犯さないと奮起してくれるだろう。

そもそも国王がインチェル人を手に入れる為に

戦争を起こしたのが間違いだったのだ。

それより、あの子におじちゃんでは無く

お兄さんと呼んでもらうには

どうすれば、いいのだろうか。

名前を教えたら呼んでくれるだろうか……

彼女も教えたら呼んでくれるだろうか?

あぁ屋敷に着かずこのまま歩いていられたら。

……いや、ダメだ。彼女達が疲れてしまう。

安心して寝れる場所を子供達の為にも

用意してやらねば。

汗を流したりご飯食べたりも

必要だろう。

俺の気持ちを優先するのは

ただのエゴだ。

あぁ、屋敷の門が見えてきたな。

「……着いたぞ。ここが、俺の屋敷だ。」

「すごーい!大きいね!」

大きいか?男爵家とかと比べれば

大きいかもしれないが。

いや、そもそも彼女達は異世界から

来たのだったな。

この大きさの屋敷は珍しいのかもしれん。

俺は門を開け彼女達を中へと促した。

使用人達が彼女とるであろう態度を考えると

屋敷に連れていきたく無くなるな。

だが、保護するには必要だしな。

……あぁ、これから俺は彼女達を

守り通すことができるのだろうか?

不安で堪らないな。


ここまでお読みいただきありがとうございます!

騎士団長に拾われた親子が、この後屋敷でどう戦い、どう絆を深めていくのか……。

ヒロイン視点の本編『凪の国の騎士』で現在連載中です!

続きが気になる方は、ぜひこちらからご覧ください!


凪の国の騎士〜騎士団長は子連れ未亡人を全力で守りたい〜

https://ncode.syosetu.com/n2689lz/

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