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幼馴染と婚約したけど聖女も好きになったので頑張って爵位を取り、二人の女の子と結婚したい件  作者: ふくみどり
帝国学園編

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夏の選抜闘技大会 決勝③

闘技場の熱気の中、ベラミカとカンサルの魔法が激しくぶつかり合う。

炎が飛び、氷の刃が空気を裂き、観客席からは歓声が上がる。


そのとき、ライブリオが闘技場の中央から叫んだ。


「おい、カンサル、ベラミカ、少し戦いを止めろよ。

 学生さんのお勉強に、カンサルの魔法が必要だからな」


二人は互いの視線を交わす。

ベラミカが眉をひそめ、わずかに舌打ちをする。


「なに、余裕こいてんのよ」


「なに、せっかく観客が見に来てんだ。

 いきなり終わらせたら悪いだろ。

 金もらってんだから、ちゃんと見世物にしないとな」


ライブリオは笑みを浮かべ、闘技場の中央で悠々と立つ。

その声に、ベラミカとカンサルは魔力を緩め、戦いを一時停止した。


「ベラミカ、あとで思いっきり相手してやるから、まあ見てろって」

ライブリオの目がカンサルに向く。


「カンサル、ミストだ!」


呪文が闘技場に響き、濃密な霧が瞬時に空間を覆った。

視界が遮られ、先ほどまで交わしていた攻防は霧に包まれて消えた。

観客席からはざわめきが上がる。


「ど、どこだ。ライブリオ!」

イヴァンスの声が霧の中で空回りする。


プラーサも、セーニャも、

周囲の気配がまったく掴めず、焦りの色が顔に広がる。


プラーサは必死でサーチを走らせるが、全く探知できない。


「ははは、俺の居場所が全く分からないみたいだな。

 そうだ、その焦りを身に刻んでおくんだ。今後の役に立つぜ!」


どことも分からない四方八方から声が迫る――

まるで闘技場全体が生き物のように、三人を押し包む感覚だった。


その瞬間――


プラーサの腹部に鋭い衝撃が走る。


「――っ!」


思わず声が漏れるが、言葉も息も届かない。

体が強烈な力で押し込まれ、足元から崩れ落ちるプラーサ。

全身の筋肉を硬直させ、何が起きたのか理解しようとするが、

視界も感覚も完全に遮断されていた。


遅れて、場外の転移陣が閃く――プラーサ、退場。


セーニャは咄嗟に身を翻し、周囲を探ろうとするが、

濃霧に包まれた世界では手掛かりは何もない。

呼吸が乱れ、心臓が跳ねる。


――どうしても、気配を掴めない。


その瞬間、首の後ろに手刀の冷たさが刺さる感触。


「くっ!」


意識が薄らぎ、体が重くなる。


遅れて、場外の転移陣が閃く――セーニャ、退場。


《ベラミカ、情報をくれ!》


イヴァンスは焦燥と恐怖を押し殺し、魔道具テレパスで念話を飛ばす。

濃霧に視界を奪われ、仲間の動向もつかめない。

今、頼れるのはベラミカの情報だけだった。


しばしの静寂。

霧が肌にまとわりつき、呼吸を重くする。

耳を澄ませても、仲間の声はもちろん、足音ひとつすら届かない。


《待ちなさい、今サーチしてる》


短い念話の応答。


心臓の鼓動だけが耳奥で跳ね、手の指先まで震える。

だが、その瞬間――


微かな振動、空気の揺れ、わずかな殺気が指先にかすかに伝わる。

イヴァンスは瞬時にそれを感じ取り、体が自然と反応する。

濃霧の中で、頼れるのは感覚だけだった。


「――ここだな……!」


一歩前に踏み出し、剣を構える。

霧が濃くとも、全身の神経は一点に集中する。


そのとき、耳元でベラミカの声が魔道具を通じて届く。


《イヴァンス、左!》


情報を受け、イヴァンスは咄嗟に盾を傾け、身体を反転させる。

濃霧に包まれた闘技場で、襲い来るライブリオの剣。


――ガキィーン!


盾に叩きつけられる衝撃。

イヴァンスは踏みとどまり、体勢を整える。


(くそ、俺の感覚と逆から来た……)


「ちぇ~!ベラミカだろ。助言したの。

 さすがに気配消しはベラミカには通用せんか」


「カンサル、ウインドウで霧を晴らせ!」


カンサルは魔法を唱え、闘技場を覆う霧を一瞬で吹き飛ばす。

視界は完全に確保され、闘技場の輪郭と相手の動きがくっきりと見えるようになった。


「さて、ベラミカ。俺とイヴァンスの戦いをよく見てな。

 この勝負が終わったら、たっぷり相手してやるからよ」


「イヴァンス、こっからは小細工なしのガチンコ勝負だ。構えな」


ライブリオが低く笑い、砂を蹴る。


濃霧は消え、完全に視界が開けた中で、

イヴァンスは半年間ラプロスやグレッグ将軍に鍛えてもらった経験を信じ、

全身の神経を研ぎ澄ます。


――来る!


剣先を微かに揺らし、空気の揺れや殺気を感じ取りながら反撃のチャンスを狙う。

一撃、防ぎ、また一撃――その都度、イヴァンスは反射的に剣を振る。

短い、ほんの一瞬だけだが、攻撃は確かにライブリオに掠っている。


「ほう、やるじゃねえか」


ライブリオはにやりと笑い、軽く剣をかわしつつ、

次の瞬間には別角度から斬りかかる。


イヴァンスの攻撃は、鍛えた体の反応速度をもってしても、

一瞬しか通用しない。


――まだ……まだしのげるか……


斜め下からの突き、跳躍しながらの薙ぎ払い、横からの旋風斬――

防御に集中すれば反撃は出せず、攻撃を仕掛ければ盾の隙が生じる。


イヴァンスは全力で剣を振るが、ライブリオの動きは常に一歩先を行く。


「いい反応だ、だがそれじゃ足りねえ!」


次の一閃。

イヴァンスは鍛錬の成果として前に踏み込み、短く反撃する。

だが、その瞬間、肩に鋭い衝撃が走る。


「――っ!」


体が弾かれるように後退し、

砂煙の中で反応が間に合わなかったことを悟る。


反撃はかすり傷程度にしかならず、

ライブリオは微笑みながら間合いを調整して次の攻撃を準備している。


――限界……!


胸の奥で冷たい焦燥が広がり、手の震えが止まらない。

視界の端にちらりと見えたライブリオの笑み。

逃げ場はない。


そして、イヴァンスの体が前後から引き裂かれるような衝撃を受け、足元が崩れる。

光が瞬き、闘技場の現実から切り離される転移陣が閃く。


――イヴァンス、退場。


砂煙の残る闘技場に、わずかな静寂が広がる。

残ったのは、空気に残る恐怖と、ライブリオの余裕に満ちた笑いだけだった。

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