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幼馴染と婚約したけど聖女も好きになったので頑張って爵位を取り、二人の女の子と結婚したい件  作者: ふくみどり
帝国学園編

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夏の選抜闘技大会 決勝①

決勝戦


闘技場の空気が、準決勝までとは明らかに違っていた。


観客席は満員。

期待と興奮が渦巻いている。


帝都でも名の知れたAランクパーティ。


ライブリオ隊。


その中心に立つのは、剣を肩に乗せて気楽そうに笑っている男。


ライブリオ。


対するは――


大会の番狂わせを起こし続けてきた、学生中心のパーティ。


イヴァンス隊。


イヴァンスは剣を握りながら、ゆっくりと息を吐いた。


脳裏に浮かぶのは、出発前にラプロスから言われた言葉だった。


「決勝まで行ったのだから、Aランクパーティとの戦いだな」


いつもの穏やかな口調。


だが、その目は鋭かった。


「普段の指導では味わえないものを感じて来い」


少しだけ間を置き、


「それが、次の段階につながるだろう」


その時、イヴァンスは笑って返した。


だが――


(あれ、ほぼ負けて来いって意味だったよな……)


目の前の男を見る。


ライブリオ。


軽く剣を振って肩をほぐしている。


その雰囲気だけで分かる。


(この人は強い人だ)


今まで戦ってきた相手とは、明らかに違う。


ライブリオがこちらを見て笑った。


「イヴァンス、今日はお手柔らかにな」


軽い調子の声だった。


だが、その言葉の裏にある余裕が、イヴァンスにははっきりと分かった。


「それはこっちの台詞です」


イヴァンスは苦笑する。


その瞬間――


高らかな鐘の音が響いた。


「――試合、開始!」


審判の声が魔力で拡張され、場内に轟く。


セーニャが静かに祈唱を始めていた。


「神聖術式展開。身体強化、付与」


柔らかな光がイヴァンスを包む。

温かい力が四肢に流れ込む感覚。


それはこれまでのように、速度や腕力だけを引き上げる単一強化ではない。

反応、筋力、持久、耐久――身体能力全体を同時に引き上げる総合強化だった。


イヴァンスは剣を握り直す。


一方で――


ライブリオの背後では、支援術師ネーミアが杖を掲げていた。


「強化術式、付与」


淡い光が重なっていく。


身体強化。

反応強化。

耐久強化。


その術式の流れを見て、セーニャの眉がわずかに動いた。


(……上手い)


無駄がない。


術式が滑らかに重なっている。


ライブリオが軽く肩を回した。


「よし」


剣を軽く振る。


空気が鋭く裂ける音が響いた。


「準備いいか?」


イヴァンスは剣を構えた。


「いつでも」


その瞬間。


――消えた。


「っ!」


イヴァンスの視界からライブリオが消える。


反射で剣を振る。


ガンッ!!


衝撃が腕に突き抜けた。


重い。


想像以上に重い。


「お?」


ライブリオの声が、すぐ目の前から聞こえた。


「反応いいじゃねえか」


次の瞬間。


二撃目。


三撃目。


四撃目。


金属音が連続する。


だが。


五撃目で剣が弾かれた。


体勢が崩れる。


「しまっ――」


その言葉の途中で。


冷たい感触が首元に触れていた。


ライブリオの剣。


あと数センチで喉。


完全な寸止めだった。


観客席がどよめく。


ライブリオが少しだけ笑う。


「イヴァンス」


「……」


「実戦なら」


剣先を軽く押す。


「今ので死んでるぜ?」


イヴァンスは歯を食いしばった。


悔しさと、理解してしまう冷静さが胸の奥でせめぎ合う。


その時だった。


闘技場の反対側で、空気が震えた。


カンサルとベラミカも、すでに魔導士同士の戦いを始めていたのだ。


ベラミカの手にファイアの炎が形成される。


「まずはこれでも食らいなさい!」


炎が槍の形に変化し、一直線にカンサルへと放たれる。


だがカンサルは杖を軽く振っただけだった。


「ウォーター」


空気中の水分が瞬時に集まり、薄い水の膜を作る。


炎の槍がぶつかる。


蒸気が爆ぜた。


白煙が一瞬で闘技場を覆う。


その煙の中から、ベラミカの声が響いた。


「カンサル!」


煙が割れる。


ベラミカが杖を向けていた。


「サンダー!」


雷が一直線に走る。


だがカンサルは動かない。


杖を軽く上げる。


「ウォール」


地面が盛り上がる。


石壁が雷を受け止め、砕け散った。


カンサルが小さく笑う。


「相変わらず派手だな」


ベラミカも口元を上げた。


「それはあんたもでしょ」


カンサルは杖を肩に乗せた。


そして顎で、イヴァンスたちの方向を指す。


「あっちの戦いには参戦させないぜ」


少し目を細める。


「昔のように」


杖を構える。


魔力が静かに膨れ上がる。


「一対一でガチンコ勝負しようや」


ベラミカの目が鋭くなる。


「望むところよ」


足元に新たな魔法陣が展開された。


空気が重くなる。


観客席の一部がざわめく。


明らかに、先ほどまでとは魔力量が違う。


カンサルが小さく息を吐いた。


「じゃあ」


杖を前に突き出す。


「本気でいくか」


魔法陣が展開される。


「アイスストーム!」


冷気が渦を巻く。


氷の刃が嵐のようにベラミカへ襲い掛かる。


ベラミカは一歩も引かない。


「ファイアウォール!」


炎の壁が立ち上がる。


氷と炎がぶつかる。


爆発音。


蒸気が闘技場に広がった。


その向こう側では――


ライブリオが剣を肩に乗せたまま、ちらりと横目で見ていた。


「へぇ」


小さく笑う。


「魔導士の方も熱いな」


そして再び、イヴァンスに視線を戻す。


剣を軽く構える。


「さて」


口元が吊り上がる。


「次、いくぞ」


その瞬間。


再び姿が消えた。


イヴァンスの瞳が鋭く動く。


そして――


決勝戦は、まだ始まったばかりだった。

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