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幼馴染と婚約したけど聖女も好きになったので頑張って爵位を取り、二人の女の子と結婚したい件  作者: ふくみどり


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9/12

ドラゴンとの契約

翌朝、本格的なドラゴン討伐作戦が開始された。

「せっかくだ。

ドギと同等の実力があるなら、ドラゴン討伐の本隊に参加してみんか」


グレッグ将軍の提案に、イヴァンスは一瞬だけ目を瞬かせ、

そして、すぐにすぐに頷いた。


本来――

村からの参加者は、戦闘要員ではない。

野営地の設営と維持、それが彼らに与えられた役割だった。


そのため、

騎士団からはドギが、

村から参加しているビソップを含む四名は、

引き続き野営地に残り、待機となる。


討伐隊に同行するのは――

イヴァンスただ一人。


その異例の決定を受け、

イヴァンスは野営地の一角へと呼ばれていた。


「サイズ的にそうね~これかしら?」

そう言ってマルティアは、

並べられた装備の中から、慎重に一式を選び出す。


まずは防具。

過剰に重くならぬよう調整された胸当てと、

可動域を妨げない軽装の腕当て。

イヴァンスの体に合わせ、

一つひとつ留め具を締めていく。


「……きつくない?」

「大丈夫だ」


次に剣。

マルティアは数本の中から一本を手に取り、

軽く振って重心を確かめながら、微笑んで差し出した。

「これがいいわ。無理に力を入れなくても、ちゃんと応えてくれる」


イヴァンスはそれを受け取り、静かに鞘へ納める。

周囲の視線が自然と集まった。

――村から来た一人の少年が、

討伐隊の一員として選ばれる。

それが、どれほど異例なことか。

その場にいる誰もが理解していた。


やがて討伐隊は、

ドラゴン討伐の依頼が出された地点の周辺へと到着する。


「グレッグ将軍、この光景は……。あまりに想像と違います。

本当にドラゴンが出現したのでしょうか?

まったく荒れた痕跡が見当たりません……。

まずは、周辺の捜索から行いますか?」

マルティア参謀が、状況を確認しながら問いかける。


そのやり取りの最中、

イヴァンスはふと、小高い丘の上へと視線を向けた。

なぜかイヴァンスは、ドラゴンに呼ばれている気がした。

そして、何かに引かれるように――

そのまま、そちらへ歩き出す。


「イ、イヴァンス。

単独行動は控えんか!」

慌てて制止しようとするグレッグだったが、

イヴァンスは振り返りもせず、歩みを止めない。

自分が“感じた”ものに従うように、

迷いなく、丘へと進んでいった。


丘の奥、木々に囲まれた一角を抜けた先で、

彼らは一匹のレッドドラゴンと、その子供を発見した。


グレッグたちが姿を現した瞬間、

子供のドラゴンは「ぴぃ~~っ」と甲高く鳴き、

こちらを威嚇するように身構える。


だが、親であるレッドドラゴンは――

明らかに衰弱していた。

大きな体を地に横たえ、

その呼吸は浅く、かすかだ。


「……さて、どうしたものか」


グレッグが低く呟いた、その時だった。


――直接、頭の奥に響く声。


《あなた方は……私を討伐しに来たのですね》


突然の感覚に、討伐隊の全員が息を呑む。


《ですが……見ての通りです》

《私は、もう長くは生きられません》


衰弱したレッドドラゴンが、

ゆっくりとその瞳をこちらへ向ける。


《どうか……お願いがあります》

《この子を、保護してはいただけないでしょうか》


子供のドラゴンは、不安そうに小さく鳴き、

親の体に身を寄せた。


《この地を離れる力もなく、

この子を守りきることも……もうできません》


その声は、

恐れでも、怒りでもなかった。


ただ、

子を想う、母の声だった。


グレッグは即答できず、

一度、深く息を吐いた。


「……まさか、討伐対象に逆にお願いされるとはな」


重い沈黙が、その場を包み込む。


イヴァンスが、静かに一歩前へ出た。

「イヴァンス、そこで待機していろ」

グレッグが即座に制止の声を飛ばす。


だが――


「ぴぃぃぃ――っ!」

子供のドラゴンが甲高く鳴き、警戒を強める。

次の瞬間、小さな口から炎が吐き出された。

いくら子供とはいえ、相手はレッドドラゴン。

放たれた炎は、魔導士の放つ《ファイア》に匹敵する威力だった。


「――っ!」

だがイヴァンスは、身をひねるようにしてそれを軽くかわす。

そして、止まらない。

炎を吐かれたことなど、意にも介さぬ様子で、

彼はそのまま母ドラゴンの方へと歩み寄っていった。


「……!」

討伐隊の空気が一瞬、凍りつく。


その時――

弱々しく横たわっていた母ドラゴンが、静かに声を響かせた。


《我が子よ……お待ちなさい》


再び攻撃しようとしていた子供ドラゴンは、

その声にぴたりと動きを止める。


母ドラゴンは、ゆっくりと首を伸ばし、

イヴァンスの額へと、自らの頭をそっと当てた。


――次の瞬間。

イヴァンスの意識の奥に、何かが流れ込んでくる。

彼の内にある想い――

守ろうとする優しさを、

母ドラゴンは、静かに受け止めるように見つめた。


そして。

まばゆい光が、その場を包み込む。

イヴァンスの右手の甲に、

竜の紋様のようなあざが、浮かび上がった。


「……っ!?」


驚く討伐隊をよそに、

母ドラゴンは穏やかに告げる。


《我が子よ……》

《この方の手の甲に、触れなさい》

《この方は……あなたを、守ってくださるでしょう》


イヴァンスは、ゆっくりと手の甲を差し出した。

「……おいで」

その声は、命令ではなかった。


子供のドラゴンは一瞬、戸惑うように身を縮め――

やがて、恐る恐るイヴァンスへと近づいていく。


そして、

イヴァンスの右手の甲へ、そっと頭を触れさせた。


次の瞬間。

あざと、子供のドラゴンの体が、

再びまばゆい光に包まれる。


――契約が、結ばれたのだ。

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