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幼馴染と婚約したけど聖女も好きになったので頑張って爵位を取り、二人の女の子と結婚したい件  作者: ふくみどり
帝国学園編

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夏の選抜闘技大会 一回戦①

『夏の選抜闘技大会』

16チームによるトーナメント。

6日間にわたる、若き実力者たちの頂上決戦だ。

そして今日、その第一歩を踏み出す。


初日と二日目に一回戦が各四試合。

三日目に準々決勝。

四日目に準決勝。

五日目は休養日。

そして六日目、決勝戦。


イヴァンスのチームは初日の第一試合に登場する。

対戦相手は、民生卿の子息率いるチームだ。

チーム構成は、アタッカー、武闘家、支援術師

そして民生卿の息子のアセプト4名である。


しかし、この相手は侮れない。

表向きは素行の悪さからCランクに留まっているアタッカーと武闘家だが、

実際の実力はBランクに匹敵する――そんな噂がある。


プラーサは作戦を説明しながら、

魔道具テレパスを指差した。

「魔道具テレパスは、決勝戦まで本来の機能は温存よ。

 指示は私が普通に声をかけるから、あとは安心して戦って」


しかし、セーニャは心ここにあらずといった様子で、上の空になっていた。


「セーニャ、聞いてる?」


ハッと我に返ったセーニャは、顔を少し赤らめて答える。

「え?あ、ご、ごめんなさい……」


イヴァンスはセーニャの肩に軽く手を置き、

落ち着いた声で声をかけた。

「緊張してるのか?セーニャ。

 何かあれば俺が守ってやるから。みんなで頑張ろうぜ」


セーニャは小さく息をつき、

少し顔を伏せながら答える。

「う、うん……」


闘技場へ足を踏み入れる。

中央で、対戦チームと向かい合った。


観客席のざわめきの中、向こう側のアタッカーがいきなり大きく鼻で笑った。


「はっ……なんだよこれ。学生の寄せ集めか?

 お遊戯会なら他でやれっての」


わざとらしく肩を回し、首を鳴らす。


「どうせちょっと削られたらテレポートで強制離脱だろ?

 ぬるい試合だよなぁ。痛がる顔もろくに拝めねぇ」


横で武闘家が下卑た笑いを漏らす。


「しかも一人だけ場違いなのが混ざってんな」


その視線が、ゆっくりとベラミカを舐めるように上下する。


「姉ちゃん、若い連中に混ざって何やってんだ?

 年ごまかすのも大変だろ。

 若い血でもすすらなきゃ、その面も保てねぇのか?」


一歩、踏み出す。


「相手いねぇなら俺が遊んでやるぜ?

 俺がなんで武闘家やってるか知ってるか?

 一番近くで相手の苦しむ顔を見られるからだよ」


舌で唇を湿らせ、にたりと笑う。


空気が、明らかに悪くなる。


イヴァンスの拳がわずかに強張る。

セーニャが小さく息を呑む。


そのとき。


ベラミカが静かに一歩前に出た。


ゆっくりと男たちを見据え、薄く笑う。


「よく吠えるわね」


声音は穏やかだ。だが、その瞳は冷えている。


「実力も伴っていない犬ころが、随分と大きな口を利くのね」


観客席のざわめきが一瞬止まる。


「私たちをなめていると――」


ほんのわずか、ベラミカの口角が上がる。


それは理知的な微笑ではない。


獲物を前にした虎のような、不敵で鋭い笑み。


静かだが、確実に“狩る側”の目。


「痛い目を見るわよ?」


右手をゆっくり持ち上げる。


観客が息を呑む。


親指が立つ。


一瞬の静止。


そして――


くるり、と手首を返す。


親指が、地面を指した。


断罪。


宣告。


逃げ場はないという無言の合図。


その仕草に、武闘家の対抗心が爆ぜる。


「……上等だ、ガキが!」


火花が散る。


闘技場の空気が張り詰める。


そのとき――


高らかな鐘の音が響いた。


「――試合、開始!」


審判の声が魔力で拡張され、場内に轟く。


結界が淡く発光し、闘技場全体を包み込む。


観客席が一斉に沸き立つ。


だが中央に立つ八人の間には、異様な静寂が落ちた。


誰が最初に動く。


空気が、破裂寸前まで膨れ上がる。


刹那が永遠に引き延ばされる。


ベラミカは微笑んだまま。


そして――


一瞬の隙だった。


セーニャの視線がわずかに揺れた、その瞬間。


アタッカーの目が細くなる。


「試合中に考え事とは、いいご身分だなぁ――もらったァ!!」


地を蹴る音が爆ぜる。


一直線に距離を詰め、振り下ろされる剣。


「きゃあっ――!」


鋭い金属音が闘技場に響いた。


間一髪。


セーニャの前に割って入ったのは、イヴァンスの背中だった。


盾が火花を散らし、衝撃が腕を通して全身を震わせる。


「……っ!」


押し込まれながらも、イヴァンスは踏みとどまる。


「大丈夫だ、セーニャ!」


盾越しに叫ぶ。


「俺が守るって言っただろ! 支援に集中しろ!」


その声に、はっとセーニャの瞳が焦点を取り戻す。


――私、何をしてるの。


唇を噛み、杖を握り直す。


「風よ……彼の刃に宿れ」


淡い翠の光がイヴァンスの剣に絡みつく。


「イヴァンス君! 剣を振って――かまいたち斬りよ!」


風を纏った刃が唸りを上げる。


「――はぁっ!」


イヴァンスが横薙ぎに振り抜いた瞬間、

風が裂ける音とともに、見えない刃が走る。


「ちっ!」


アタッカーは咄嗟に盾を構えた。


轟音。


かまいたちが盾を削りながら、男の身体を数歩後退させる。

地面に靴底が食い込み、砂煙が舞い上がる。


「……悪くねぇ」


口元を歪めながらも、盾は割れていない。


その横で、武闘家がすでに動いていた。


「よそ見してんじゃねぇ!」


一直線にベラミカへ突進。


「ウォール!」


ベラミカの足元から石壁が瞬時にせり上がる。


激突。


鈍い衝撃音が響く。


だが――


「ベラミカ、左!」


プラーサの鋭い声。


次の瞬間、武闘家の姿が壁の影から滑り出す。


蹴りで壁の端を砕き、死角から踏み込んでくる。


「もらったァ!」


「バリア!」


透明な障壁が瞬時に展開される。


拳と防壁が衝突し、空気が震える。


防いだ――


そう思った刹那。


ベラミカの両手の指先に、五つの小さな炎が灯る。


赤橙の光が揺らめき、熱が集束する。


「ファイア!」


五条の炎が、一直線に武闘家へと放たれる。


しかし――


「甘ぇ!」


武闘家は一歩も引かない。


拳を振り抜く。


一つ。


二つ。


三つ。


四つ。


五つ。


五つ目が爆ぜた瞬間、拳の皮膚が焦げる匂いが立つ。

だが男は笑う。


「ちっ……熱ぃな!」


焦げた拳を一度握り直す。


「いいぜ、効いたぞ。だが――こんなもんじゃ倒れねぇ」


指の隙間から、かすかに白煙が立ちのぼる。


だがその目は、なお闘志に燃えていた。


熱に焼かれながらも、一歩も引かない。


闘技場の中央。


砂煙の向こうで、二人の視線がぶつかる。


静かに、火花が散る。

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