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幼馴染と婚約したけど聖女も好きになったので頑張って爵位を取り、二人の女の子と結婚したい件  作者: ふくみどり
帝国学園編

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学園戦、大規模拡大!?

イヴァンス、セーニャ、プラーサはベラミカの魔道具研究室を訪ねて行った。


机の上には分解された魔導回路、床には魔石の欠片。

室内は相変わらず雑然と並んでいる魔道具研究室。


中央の作業台で、ベラミカは何かの魔道具を組み上げている。

細い工具を器用に動かしながら、振り返りもせずに言った。


「いらっしゃい。爆発は今のところ予定してないから安心していいわよ」


「予定して“ない”って何だよ……」


イヴァンスは苦笑しつつ、一歩前に出る。


「ベラミカ先生、お願いがあるんです」


工具の動きがぴたりと止まる。


「どしたの? イヴァンス。そんなに改まって?」


「学園のチーム対抗戦の助っ人として、俺たちのチームに入ってほしいんだ」


その瞬間、ベラミカはゆっくり振り返った。


ぱちぱちと瞬きをし、それからにやりと口角を上げる。


「え? なに助っ人。今年そんなことになってんの?

 いいわよ、面白いじゃない」


あまりにもあっさりした返事に、セーニャが目を丸くする。


「よろしいのですか? お姉さま。

 また、貴族派の嫌がらせがきつくなるかもしれないんですよ」


ベラミカは肩をすくめ、わずかに目を細めた。

「いいわよ」


そう言って、何気なく右手を掲げる。


次の瞬間、指先に小さな〈ファイア〉の炎が灯った。

橙色の火は静かに揺れながら、しかし異様なまでに安定している。

揺らぎが少なく、密度が濃い。


「嫌がらせ? 上等じゃない。

 どうせ貴族派の子息たちが出るんでしょ。

 いたぶってあげるわよ~……ふ、ふ、ふ……」


ベラミカの唇が弧を描く。


炎がふっと膨らみ、一瞬だけ青白く変化する。


プラーサが一歩引いた。


「ちょっと……それ、普通のファイアじゃないでしょ」


「術式を三層にして圧縮してるだけ。

 対抗戦ならこれくらいの出力制御は必要でしょ?」


ぱちん、と指を鳴らすと炎は霧のように消えた。


ベラミカは楽しそうに笑う。


「いいわ。助っ人、引き受けてあげる。

 どうせやるなら、今年の対抗戦

 ――記録に残る年にしてあげましょう」


イヴァンスは思わず息を吐いた。


これで戦力は一気に跳ね上がる。


同時に、火種もまた増えた気がした。


その日、宿屋に帰ると、イヴァンスはニコラ会長の部屋を訪ねた。


扉を叩くと、すぐに中から声が返る。


「開いとるでー」


部屋に入ると、帳簿の山に囲まれたニコラが、湯呑みを片手にこちらを見た。


「ニコラさん、今度の学園のチーム対抗戦、見に来てほしいんだ」


「イヴァンス君か。ええよ、ちゃんと時間作っときましょ。楽しみにしときまっせ」


にこやかな笑み。


だが次の言葉で、その目の色が変わった。


「まあ、少し荒れそうだけどね。

 実は助っ人OKになったから、

 冒険者ギルドの高ランクだらけになりそうなんだ。

 俺のチームも、セーニャとプラーサに助っ人で

 ベラミカ先生入れることになったしね」


「……なに?」


ぴたり、と空気が止まる。

ニコラの鼻がひくりと動いた。


「ええ匂いがするで」


ゆっくり立ち上がる。


「銭の匂いや!」


両手を広げ、天を仰ぐ。


「銭の匂いがぷんぷんしよるでぇ!!」


「ニ、ニコラさん?」


次の瞬間、どこからともなく取り出したそろばんを、猛烈な勢いで弾き始めた。


ぱちぱちぱちぱちぱち。


「まずは規模や。

 二日間開催、16チーム総当たりは無理やからトーナメント方式やな」


「場所は帝都の闘技場……あそこやったら三万は入る。

 立ち見も入れたらもっとや」


「貴族席は特別観覧席で値段三倍。

 来賓は思う存分呼べまっせ。スポンサー料も取れる」


ぱちぱちぱちぱち。


「出店も考えんとな。食料品、酒、記念グッズ。

 出場チームの紋章入りマント、応援旗、限定魔道具キーホルダー……」


「魔道具キーホルダーって何だよ」


「光るんや。そら売れる」


ぱちっ。


そろばんを伏せる。


ゆっくりと顔を上げた。


「……できた」


目がぎらりと光る。


「大儲けの計画書や!!」


イヴァンスは半歩後ずさる。


「いや、ただの学園行事なんだけど……」


「学園行事? ……イヴァンス君、何言うとるんや。

 これは“帝都最大級の興行”になるんや!」


ニコラはにやりと笑った。


「イヴァンス君、楽しみにしときや。

 対抗戦はな――勝つだけやない。

 伝説と売上を同時に作るんやで」


イヴァンスはニコラの部屋を出ると

宿屋の廊下を歩きながら、イヴァンスは遠い目をした。


「レック……もしかして俺、今とんでもないことをしでかしてしまったかもな……」


部屋の中からは、まだ微かに聞こえる。


――ぱちぱちぱちぱち。


そろばんの音。


「ぴぃ……」


レックが肩の上で小さく鳴く。


その声は、どこか同情めいていた。


「ただ見に来てほしいって言っただけなんだ。

 それがどうして“帝都最大級の興行”になるんだよ……」


窓の外では、帝都の夜景がきらめいている。


そのどこかで、すでに闘技場の予約や出店交渉が始まっている気がした。


「……もう、後戻りできないよな」


「ぴぃ」


短く、しかしはっきりとした鳴き声。


覚悟を決めろ、とでも言うように。


イヴァンスは天井を見上げ、小さく笑った。


「よし。どうせやるなら、派手に勝つしかないか」


こうして――


学園の一行事だったはずの対抗戦は――

帝都全体を巻き込む興行へと姿を変え始めた。


まだ誰も知らない。


その中心にいる少年が、

火種を抱えたまま歩き出していることを。

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