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幼馴染と婚約したけど聖女も好きになったので頑張って爵位を取り、二人の女の子と結婚したい件  作者: ふくみどり
帝国学園編

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小さな決意

放課後、学園の訓練場には夕陽が斜めに差し込み、床に長く伸びた影を落としていた。


イヴァンスはグレッグ将軍を相手に剣を振るっていたが、

その動きはどこか雑で、力が入っていない。

肩や腰の使い方もぎこちなく、攻撃のタイミングも緩慢で、

対する将軍の剣もあえて力を抜いて受け流しているように見えた。


訓練場の端では、プラーサがレックを抱え、

座ったままイヴァンスの動きをぼんやりと眺めていた。


顔には少し影が落ち、先ほどの魔導の授業での出来事を思い返しているのか、

肩がわずかに落ちている。

レックが小さく手足をもぞもぞ動かすたび、

プラーサはそれに気づき微かに眉を緩めたが、すぐにまた視線を訓練に戻す。


グレッグ将軍は鋭い目で二人を見渡し、やがて剣を下ろして腕を組む。

「イヴァンス、ちょっと待て」


イヴァンスはぎこちなく剣を構え直し、息を整えながら答える。

「は、はい……将軍」


将軍は眉を少し寄せ、静かな声で問いかけた。

「お前、全然力が入っていないな。

 それに……プラーサ、お前の様子もいつもと違う。どうした?」


プラーサは慌てて目を逸らし、口ごもる。

「い、いえ……別に、大丈夫です……」


将軍は鼻で小さく笑いながらも、暖かく声をかける。

「大丈夫、か……そうは見えんな。無理に隠そうとするな。話してみろ」


イヴァンスは小さく眉を寄せ、プラーサをちらりと見た。

「……将軍、あの……今日の授業で、

 俺たち二人……ちょっと、色々あって……」


プラーサも小さく頷き、肩の力を少し抜く。

「……はい、少し、落ち込んでいるだけです」


グレッグ将軍は穏やかに頷き、二人を包み込むように声をかける。

「そうか……では、話してみろ」


イヴァンスは少し俯きながら、もじもじと口を開いた。

「実は俺、魔法が全くダメで

 ……発動はできるんですけど、うまく制御できなくて……」


「私もサーチしか発動できなくて……今日の授業で、

 二人揃って散々馬鹿にされたんです……」

プラーサは言葉を抑え、少し肩を落とした。


将軍は腕を組み、鼻で軽く笑う。

「なるほど、魔法が使えないのか」


「グレッグ将軍、簡単に言わないでください……」

イヴァンスは少し強く言い返したが、声にはまだ迷いが残る。


将軍はゆっくりと視線を二人に移す。

「イヴァンスは剣術、プラーサは学術が得意だろう? 

 ならばその部分を伸ばせばよい」


彼の声には諭すような響きがあり、決して責めるものではない。

「その力を伸ばし、バリンスたちのからかいを黙らせることもできるはずだ」


そのとき、背後からマルティア王女の軽やかな声が割り込む。

「ああ見えて、グレッグ将軍はほとんど魔法が使えないのよ。

 使えないからこそ剣術を極めて、あそこまで上り詰めた人なの」


「ひ、姫……からかわないでください……」

将軍は顔を赤くして言葉を詰まらせる。


「ま、まあ……どうしても言ってくる輩には

 ……その……剣で十分、対応できる」


グレッグ将軍は少し顔を赤らめながらも、

柔らかく二人を見つめ、言葉に力を込めるように続けた。

その声には優しさと、どこか父親のような励ましが宿っており、

二人の胸に静かに届いた。


将軍は一つ咳払いをして続ける。

「実はな、ラプロス先生に剣技をみっちり指導してもらったが、

 私も学園では魔術の授業がからっきしでな

 ……だからこそ得意な分野を伸ばすことに専念した。

 イヴァンス、お前も魔法が苦手なら剣術に力を入れればよい」


「プラーサは……一度、軍務卿に相談してみるといい」

その言葉に、プラーサは少し驚きながらも眉をひそめる。

「パパに?」


「そうだ、軍務卿は適材適所を見抜く目がある。

 プラーサの強みを活かせる助言をくれるはずだ」


マルティア王女は肩に手を置き、柔らかく笑った。

「もうすぐ学園恒例のチーム対抗戦があるわ。

 せっかくなら、あなた達でチームを組んで優勝しちゃえば?

 そうすれば、誰もあなた達をからかわなくなるでしょう。

 せっかくの機会よ。目標を持って挑戦してみなさい」


イヴァンスは小さく息を吐き、剣を握る手に少し力を込める。

「……そうか、俺たちの得意分野を伸ばせばいいんですね。

 そうすれば……馬鹿にしてくる奴らも……」


プラーサもわずかに頷き、目に決意の光が宿る。

「……見返せるかもしれませんね」

レックが手足をもぞもぞ動かし、二人の心をほんの少し和ませた。


王女は微笑み、さらに言葉を添える。

「あなたたちは魔法だけが全てじゃない。

 自分の得意を磨くことが、何よりも強い武器になるの。

 学園を卒業すれば、魔法に頼ることなんてほとんどないのよ」


将軍も目を細め、二人を見つめる。

「そうだ、イヴァンス。魔法に頼れなくても剣術の腕で十分戦える。

 プラーサも、軍務卿が何か道筋を示してくれるはずだ。

 お前たちなら必ずできる」


イヴァンスは拳を握りしめ、心の奥で小さく決意を固めた。

プラーサもレックを抱き直し、深呼吸をひとつ。

「……わかりました、将軍、王女様。やってみます」


夕陽に照らされた訓練場で、長く伸びる影の中、二人の心には少しずつ希望の光が差し込み始めていた。


グレッグ将軍は二人の様子を静かに見守り、口元に微かな笑みを浮かべた。

「よし、それでこそだ。では、訓練の続きだ、イヴァンス」


イヴァンスは拳を握りしめ、少し力を込めて剣を構える。

プラーサもレックを抱き直し、深く息を吸い込んだ。


夕陽が差す訓練場で、長く伸びた影の中、

二人の胸には小さな決意と、前向きな光が静かに差し込んでいた。

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