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幼馴染と婚約したけど聖女も好きになったので頑張って爵位を取り、二人の女の子と結婚したい件  作者: ふくみどり
帝国学園編

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貴族裁判④

司法省の裁判室。


高い天井と重厚な壁に囲まれた空間で、ピルバ司法卿が壇上に鎮座していた。


被告席には、イヴァンスとレック。


その背後の傍聴席には、マルティア王女、ベラミカ、シルフィス、ドキ。

騒動を聞きつけたレンミル学園長の姿もあった。


原告席には、リーパルとバリンス、そして付き従う貴族たち。


加えて――カイル宰相、クレール法務卿、ディハン軍務卿。

帝国の中枢に名を連ねる者たちが、この場に揃っている。


正式な出頭命令が出されていたとはいえ、

本来なら一学生の不祥事で集まるはずのない顔ぶれだ。


部屋には、最初から――

異様としか言いようのない空気が流れていた。


司法卿の開会宣言により、貴族裁判が開始される。


まずはリーパルの言い分だ。


「私が申し上げたいのは

 ――あの瞬間、私が救ったのはただの人間ではなく、

 帝国の未来を象徴する存在」


リーパルは誇らしげにくるりと回り、マルティアを指差す。

「そう、あのお方、マルティア王女その人であります!」


「ああ、私は将来の妃であるあなたを守るために

 ――勇敢にも、あの魔物に立ち向かったのです!」


手を大きく広げ、胸を張る。


「その結果、私は名誉ある負傷を負うこととなりました!」


さらに声を張り上げ、司法卿に向き直る。


「あれは明らかに殺意のある攻撃であり、

 私ほどの勇気がなければ回避も叶わなかったでしょう!」


「しかも、私が受けた衝撃は単なる物理的打撃に留まらず

 ――精神的、道徳的、そして政治的

 帝国自体の損失を伴うものなのです!」


傍聴席の貴族たちに向かってさらに演説調に続ける。


「もし私が負傷せずして放置していたなら、

 帝国の威信は大いに傷つき、

 将来の王妃の安全も危うくなったことでしょう!」


マルティアの顔を見やり、微笑みを浮かべて言う。


「ですので、この私の負傷は、

 単なる自己犠牲ではなく、

 帝国全体への奉仕であるのです!」


「ああ、私は何と帝国に献身的なのでしょう」


そして静かに手を下ろし、

リーパルは司法卿に向かって、

まるで貴族の理屈を畳み掛けるように言った。


「そこの卑しき魔物の明らかな殺意に対する厳罰――

 すなわち、そのものの命をもって償うほかございません」


「さらに、その監督者であるイヴァンス。

 彼がこのまま悠々自適に学園生活を送ることなど、

 帝国にとって多大なる損失となりましょう」


手のひらを大きく広げ、司法卿に向けて、

リーパルは付け加えた。


さらに、リーパルはイヴァンスとレックを指さし、

胸を張って言い放った。


「司法卿、その魔物の死罪と、

 監督者の帝都からの追放を、

 どうかお取り計らいください!」


こうして、彼は満場の注目を浴びながら、

堂々と締めくくったのだ。


その発言に、傍聴席で椅子が倒れる音がした。

あまりの内容に、マルティアは反論しようと立ち上がったのだ。


王族であるマルティアは、

貴族会議においてイヴァンスの擁護ができる唯一の存在である。


だがその瞬間、彼女の目にふと軍務卿の仕草が入った。


口元に人差し指を当て

――「今は黙っていろ」という無言の指示である。


勢いよく立った音と椅子の倒れる音に、

周囲は気を取られ、

軍務卿の仕草に気付く者はごくわずかだった。


司法卿がマルティアに問いかける。


「マルティア王女、何か言い分があるのかね?」


ベラミカがマルティアの服を少し引っ張り、小声で囁く。


「軍務卿に任せましょ。あの方のことよ。何か対策があるの」


マルティアはぎゅっと拳を握りしめ、静かに答える。


「申し訳ありません司法卿、特にございません」


軍務卿の意図を組んで座り直したその手は、

拳の先まで力がこもっていた。


そこに、宰相が口を挟む。


「軍務卿、

 学園の訓練室は近衛騎士団に貸し出されていたとのこと。

 それならば、あなたにも監督責任がございますぞ。

 連帯責任を取っていただかねばなりませんな。

 何か言い分はございますかな?」


軍務卿は落ち着いた声で返す。


「名誉ある負傷だと申されるか。

 埃すらついておらぬその服の、

 どこを見たら負傷がわかるのやら」


「ふむ、あまりに傷が痛むのであれば、

 騎士団支給のポーションでもお持ちした方がよいかな?

 もっとも、それすら必要ありますまい」


あまりにも小馬鹿にした切り返しに、リーパルの顔が赤くなる。


「いくら軍務卿でも不敬ですぞ! 

 あなたの監督不行き届きさえなければ、

 こんなことにはならなかったのです!

 少しは反省する気がないのか!?」


軍務卿は肩を軽くすくめ、さらに余裕を見せる。


「反省しているからこそ、

 ポーションでもお持ちしようかと言ったのだが、

 ご不満か?」


リーパルは声を張り上げ、机を叩く。


「ふざけるな! 公爵の子息にそんな言い方、許せん。

 帝国の貴族を馬鹿にするのか!」


原告の取り巻きの貴族たちからも軍務卿の態度にヤジが飛ぶ。

だが、軍務卿の余裕ある態度と、理不尽なリーパルの怒声――

この光景こそ、帝国貴族裁判の異様さを象徴する瞬間であった。


そんなやり取りの最中、法廷の扉があわただしく開いた。


「姫!!!」


取り乱したグレッグ将軍が駆け込み、後ろからカムシスも入室してくる。


「グレッグ将軍、落ち着きたまえ。貴族裁判中だぞ」


冷静な軍務卿の声が将軍を我に返らせる。

その直後、カムシスが依頼された書類を軍務卿に手渡したのだった。


ここから――軍務卿の逆襲が始まる。

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