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幼馴染と婚約したけど聖女も好きになったので頑張って爵位を取り、二人の女の子と結婚したい件  作者: ふくみどり
帝国学園編

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レックの処遇

帝都、軍務卿の執務室。

レンミル学術卿は書類を手に、慎重な足取りで部屋に入った。

机の向こうに座るディハン軍務卿が目を上げ、軽く頭を下げる。


「レンミル学術卿、来訪とは珍しいな。何か報告か?」


「はい、少々ご相談がありましてな」

レンミルは机の端に書類を置き、深く息をついた。


「学園に関することです。

 主に、レックの扱いの件ですがな。情報の早い軍務卿のことだ、すでにご存じでしょう」


ディハン軍務卿は書類から目を上げ、淡々と入手している情報を口にする。

「うむ……レックがファイアを使いそうになった件であろう。昨日の小さな騒動のこともな」


レンミル学術卿は少し顔を曇らせ、書類を軽く机に置く。

「はい。昨日もイヴァンス君の近くで不快感を察知したのか、

 レックが魔法を出そうとする場面がありました。

 学園に来させないのが最も安全かと考えましたが・・・」


「しかし、帝都で暴れた場合に制止できるのはイヴァンス君ただ一人です。

 ゆえに、学園に連れてくることを許可した次第です」


「レックの学園に連れてくる件はそれで最良でしょう。

 特に問題はないかと。

 ただ、常に連れているとなると、

 今回のように貴族とイヴァンスが問題を起こした際、貴族の子息が怪我をしてはまずい……」


軍務卿は指を組み、ゆっくりとレンミルを見つめる。


「……逆に利用してみてはいかがかな?」


「え?」

レンミルは一瞬息をのむ。目を丸くして軍務卿を見返す。

「逆に……ですか?」


「うむ。ファイアを使えるのであれば、騎士団の対魔法戦の良い訓練相手となろう。

 さすがに生徒の授業ではレベルが高すぎるであろう。

 であれば、騎士団の訓練が最適だ。

 場所は騎士団が学園の訓練場を使えばよい。こちらから手続きは済ませておく。

 ただし、ファイアを意図的に使用できるよう命令できる人物が必要だ……」

軍務卿は机を軽く叩き、言葉を続ける。


「……以前、ドラゴン討伐隊に参加した際、

 マルティア参謀に甘えていた記述を報告書で確認している。

 なんでも、きれいな女性には自ら甘えていくそうだ……」

軍務卿は口元に軽く笑みを浮かべる。


「まあ、一度、マルティア参謀にレックの世話役をお願いしてみよう」


「お、王女にですか……」

レンミル学術卿は目を丸くして驚く。


「うむ。騎士団の参謀である故、もし訓練の指導役ができるのであれば、立場としても最適であろう」

軍務卿は落ち着いた口調を保ちながらも、どこか含みを持たせる。


レンミル学術卿は深く頷き、書類を整える。

「これで、レックも訓練を通して制御の仕方を学べますし、

 学園と騎士団双方にとって意義のある機会になりますね」


「ふむ……楽しみでもあり、不安でもあるがな」

軍務卿の言葉に、執務室の空気は緊張と期待が混じったまま漂う。


──そして数日後、マルティアのもとに軍務卿からの命令書が届いた。


「レックを使って対魔法戦の訓練を実施しろ……?」

マルティアは書類を手に取り、思わず目を丸くした。

「……え、私が?」


書類を読み進めながら、顔に微笑みが浮かぶ。

「そういえば、イヴァンス君、今年が帝国学園に入学する年だったわね。

 最近、ずっとデスクワークばかりだったし……ちょうどいい気分転換になりそう」


マルティアは机に置いたペンをくるくる回し、思わず体を少し伸ばす。

「久しぶりに、好きな戦術を考える時間が持てる……やっと、私のやりたかったことができるのね」


頭の中で訓練のシナリオを描きながら、心が躍る。

「学園の訓練場を使って……レックは魔法を自由に使わせつつ、騎士たちが魔法の対処法を学ぶ……。

 あの子のファイアは魔導士の放つ威力に匹敵してたものね。

 指示通りに行動してくれるかしら……ちょっと不安だけど、こういう挑戦は久しぶりだわ。

 女ったらしなところもあるから、訓練中に小さな騒動を起こすかもね……ふふっ」


書類を整理しながら、マルティアはさらに心の中で呟く。

「さて、どんな訓練になるかしら……少し楽しみでもあるわね。

 卒業してからほとんど学園にも訪問できてないし、園長先生にもちゃんと挨拶しておかないとね。

 それに、騎士団のメンバーたちがどんな反応をするかも見ものね」


その夜、マルティアは訓練計画のメモを広げ、

騎士団の予定と照らし合わせながら、綿密に組み立て始めた。

久しぶりに心が弾む感覚に包まれ、

デスクワーク続きで凝り固まった頭も、まるでほぐされるようだった。


学園の訓練場では、レックの暴走を制御しつつ、

騎士たちが対魔法戦の実践を積む

──想像するだけで、思わず顔がほころぶ。


その夜、マルティアの部屋からは、軽やかな鼻歌が聞こえてきた。


部屋の前を通りかかったランジールは、思わず立ち止まる。

「マルティア、なんかいいことあったのか?

 もしや、グレッグがデートでも申し込んだとか……

 ……まあ、ありえんか。

 それにしても、楽しそうにしているのはいいことだな」


ランジールは小さく首をかしげながら、鼻歌の響く部屋を通り過ぎた。

マルティアの嬉しそうな様子に、思わず顔が緩む。


外では、夜風が学園の塔を揺らす音が響き、これから始まる騒動と成長の序章を静かに告げていた。

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