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幼馴染と婚約したけど聖女も好きになったので頑張って爵位を取り、二人の女の子と結婚したい件  作者: ふくみどり
帝国学園編1年生

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帝国評議会、夏の選抜武闘大会制度改定の議②

会議室の空気が、再び引き締まった。


宰相の言葉に続くように、レンミル学術卿が静かに口を開く。


「では、次に学生枠の出場編成について提案があります」


視線が自然と彼へ集まる。


学術卿は淡々と続けた。


「現行の“冒険者三:学生一”という構成ですが、

 これを“二:二”へと再編すべきと考えます」


一瞬、沈黙が落ちる。


宰相の眉がわずかに動いた。


学術卿は構わず理由を述べる。


「本来この大会は、学生の魔術力・戦闘技術を

 実地で確認する場として設計されていました。

 しかし現状では、冒険者の比重が過剰となり、

 学生の評価基準そのものが曖昧になっています」


視線を会議室に巡らせる。


「教育機関としての機能を維持するためにも、学生枠の比率を引き上げるべきです」


言い切ると、静かに席へと戻る。


室内の空気が、わずかにざわついた。


宰相はゆっくりと目を閉じ、一拍置いてから口を開く。


「……なるほど」


声は穏やかだが、その裏に硬さがある。


「しかし、それは大会の質を下げる危険性はないかね?」


視線を上げる。


「前回の結果を見ても分かる通り、冒険者の実力は学生を大きく上回っている」


そこで一拍。


「それを減らすというのは、競技としての価値を損なうのではないか」


その言葉には理屈と同時に、別の意図が混じっていた。


“現状維持による利益”。


そしてその裏には――前回優勝者の存在があった。


宰相の息子、バリンス。


彼が率いたチームの優勝は、単なる勝利ではない。


帝都における次代政治家としての“正統性”を示す、象徴的な成果でもあった。


宰相は静かに続ける。


宰相は静かに続ける。


「学生の部は“競争力の証明”でもある。過度に守れば意味がなくなる」


だが、その言葉に軍務卿が即座に反応した。


「逆です」


短く鋭い否定。


室内の空気が一段締まる。


軍務卿は淡々と続ける。


「現状は“競争”ではなく“蹂躙”に近い構造です。

 学生の育成という観点から見れば、むしろ逆効果になっているでしょう」


一拍。


「学術卿の提案は合理的です。二:二への再編は妥当と判断いたしますが?」


宰相の目が細くなる。


「軍務卿までそちらに乗るか」


軍務卿は揺らがない。


「はい。軍事教育の観点からも、段階的な実力評価は必要です」


沈黙。


その間に、会議室の力関係が微妙に揺れた。


だが宰相はすぐには折れない。


「しかし、冒険者側の質が落ちれば――」


そこまで言った時だった。


軍務卿は静かに言葉を継いだ。


「ですので――一般の部を設けたのです」


視線を円卓へ巡らせる。


「学生の部と一般の部を分離することで、競技の性質そのものを整理しました」


一拍置く。


「そのうえで、学生の部に参加できる冒険者は“Cランクまで”に制限します」


室内の空気がわずかに動く。


軍務卿は続けた。


「A~Bランクの冒険者は、もはや学生と同列に扱うべき存在ではありません。

 しかも学生自体が負傷しては、本来の育成目的から逸脱してしまうでしょう」


さらに静かに言葉を重ねる。


「したがって彼らは、一般の部において近衛騎士団と同列の

 “上位戦力枠”として扱うのが適切です」


しかし宰相はまだ引かない。


「……だがな」


低い声。


「もしその編成で、特定のチーム――例えばベラミカのような者が

 イヴァンスのチームに入った場合はどうなる?」


視線が一段鋭くなる。


「その時点で、勝敗の均衡は崩壊する」


その言葉は、政治的判断というより“現実認識”だった。


場が静まる。


確かにそれは否定できない。


軍務卿も一瞬だけ言葉を選ぶ間を置いた。


そこへ、初めて皇帝が動いた。


ランジール皇帝が、静かに口を開く。


「二:二とする」


短い命令。


それだけで議論は一段階上から確定される。


「ただし」


間を置く。


「宰相の懸念についても考慮すること」


視線が宰相へ向く。


皇帝は続けた。


「冒険者のみでのCランクまでに制限する。

 それでよいな宰相」


一瞬の静寂。


そして、その決定が確定する。


宰相は小さく息を吐いた。


「……御意に」


軍務卿は静かに一礼する。


「承知しました」


学術卿も軽く頷いた。


だが、この瞬間、帝国の大会構造は完全に再定義されていた。


学生は育成枠として再定義され、

冒険者は階級分離され、近衛騎士団を含む

“一般の部”という新たな舞台が生まれる。


そしてその再編は、表向きには制度改革でありながら、

実質的には帝国の戦力可視化そのものだった。


誰もがそれを理解しながらも、明言はしない。


会議は、次の議題へと移っていく。


だがその空気は、もはや単なる学園行事の調整ではなかった。


帝国という国家の力学そのものが、静かに組み替えられつつあった。

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