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幼馴染と婚約したけど聖女も好きになったので頑張って爵位を取り、二人の女の子と結婚したい件  作者: ふくみどり
帝国学園編

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炎を消そうとしただけなんです

リーパルは額を押さえながら、大きくため息をついた。


「……いや、何をやっている。学園を壊すつもりか。

 毎度毎度、君たちには呆れてしまうよ。ちゃんと説明してもらおうか」


呆れ半分、怒り半分といった声でそう言いながら、

ずかずかと訓練場の中へと足を踏み入れる。


地面には無数の焦げ跡。

空中には揺らめく炎の人形。


どう見ても普通の訓練ではない。


「さっさと説明――」


その瞬間だった。


炎の人形の一体が、ぴたりと動きを止める。


そして――


ぎぎ、と首をリーパルの方へ向けた。


「む?」


わずかに眉をひそめるリーパル。


次の瞬間。


ドォン!!


炎の人形が火球を放った。


「なっ!?」


突然の攻撃に、リーパルの顔が引きつる。


さらにもう一体の炎の人形が動いた。


火球が連続して放たれる。


ドォン! ドォン!


爆音が訓練所に響く。


「な、何だこれは!? なぜ私を狙う!?」


慌てて後退するリーパル。


その様子を見て、イヴァンスの表情が変わった。


「まずい!」


炎の人形は気配に反応する。


つまり――


リーパルも完全に“標的”になったのだ。


「伏せてください!」


イヴァンスは叫びながら、リーパルの前へと飛び込んだ。


ドォン!!


火球が炸裂する。


イヴァンスは剣でそれを弾きながら、リーパルを庇うように立つ。


「ここに入ったら危ないです!」


「い、今それを言うのか!?」


リーパルは完全に顔を青くしていた。


その様子を見ながら、セラフィスが楽しそうに頷く。


「いいわね、イヴァンス君」


にこりと笑う。


「ちゃんと人を守れてるじゃない」


火球を弾きながら、イヴァンスが必死に叫ぶ。


「伏せてください!」


リーパルの前へと飛び込み、剣で炎を弾き返す。


ドォン!!


火球が地面で炸裂し、砂煙が舞い上がった。


「な、なぜ私まで狙われるのだ!?」


顔面蒼白のリーパルが後退る。


炎の人形はゆらりと揺れながら、じりじりと距離を詰めてくる。


その様子を見て、ベラミカの顔色も変わった。


「師匠!」


慌ててセラフィスへ振り向く。


「いくら師匠が嫌いな宰相の子息だと言っても、

 さすがにリーパルをケガさせたらまずいです!

 炎の人形を止めてください!」


だが。


セラフィスはきょとんと首をかしげた。


「え~、無理~」


あっさりと言う。


ベラミカの目が見開かれる。


「無理って何ですか!?」


セラフィスは困ったように頬へ指を当てた。


「だって、一度作ったら魔力使い切るまで攻撃し続けるんだもん。

 一応あれでも、魔力で圧縮された高温体の炎の人形なんだから」


あっけらかんと言う。


ベラミカの顔が引きつった。


「作る前に言ってくださいよ、それ!」


隣でグレッグが腕を組んだまま、焦った眼差しでリーパルを見ている。


「……私も助けに行った方がいいのか?」


一瞬そう呟いたが、次の火球が炸裂した瞬間だった。


ドォン!!


「ちっ、さすがにまずいか」


グレッグは小さく舌打ちすると、地面を蹴った。


さすがに宰相の子息をこのまま放置するわけにはいかない。


近衛騎士団長としても、ここで見ているだけというわけにはいかなかった。


「イヴァンス! 右を任せろ!」


鋭く声を飛ばしながら、グレッグがリーパルの前へと飛び込む。


次の瞬間。


ドォン!!


火球が再び炸裂した。


「うおっ!」


イヴァンスがリーパルを引き寄せて避ける。


「だからここは危ないんですって!」


「最初に言え!!」


リーパルの悲鳴が訓練所に響き渡った。


「師匠、水魔法で消せないんですか?

 ほら、雨とか降らせれば!」


ベラミカが慌てて声を上げた。


セラフィスは「あっ」という顔をする。


「あ~その方法があったわね。水を当てるのね。

 じゃ、これでいくわよ」


軽く指をパチンと鳴らす。


その瞬間、空中に水の槍がいくつも出現した。


透明な水が鋭く形を取り、槍となって浮かんでいる。


セラフィスは満足そうに頷いた。


「えい」


軽い掛け声とともに、水の槍が一斉に炎の人形へと襲いかかる。


「師匠、それはダメ!!!!」


イヴァンスも危険を察知し、リーパルを押し倒して床に伏せさせた。


ベラミカが叫ぶ。

だが、時すでに遅し。


水の槍が炎の人形に突き刺さった瞬間――


バァァン!!


轟音が訓練所に響き渡った。


大量の水が一瞬で蒸発する。


白い蒸気が爆発的に膨れ上がり、凄まじい爆風となって訓練所を吹き抜けた。


砂煙と蒸気が一気に視界を覆う。


床が揺れ、壁に衝撃が走る。


「うわあああ!?」


イヴァンスの悲鳴。


爆風が過ぎ去ったあと、訓練所の中は真っ白な蒸気に包まれていた。


焦げた匂いと湿った熱気が立ちこめる。


誰の姿も、ほとんど見えない。


やがて。


蒸気の向こうから、かすれた声が聞こえた。


「……誰か……」


リーパルである。


「……説明を……」


その近くで、鎧の擦れる音がした。


「生きているか」


低い声で言いながら、グレッグがゆっくりと立ち上がる。


その腕には、爆風から庇われたリーパルの姿があった。


蒸気で髪は濡れ、服は焦げ、顔には煤までついている。


そのまま低い声で言った。


「……近衛騎士団長」


「なんだ」


「王都の警護とは、いつから火球の中を転がり回る護衛になったのだ?」


グレッグの眉がぴくりと動く。


リーパルはさらに続けた。


「宰相の子息が訓練場で焼かれかけているのだぞ。

 もう少しまともな護衛はできないのか?」


完全に八つ当たりである。


そして。


蒸気が少し晴れたその時。


唯一、まったく無傷の人物がいた。


セラフィスである。


彼女は満足そうに頷きながら言った。


「うん。やっぱり水と炎は相性いいわね」


ベラミカが叫ぶ。


「師匠、それ爆発する相性です!!」


その直後――


訓練場の扉が勢いよく開いた。


「今の爆発は何事ですか!?」


澄んだ声が響く。


全員の視線が一斉に入口へ向いた。


そこに立っていたのは――


マルティア王女だった。

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