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幼馴染と婚約したけど聖女も好きになったので頑張って爵位を取り、二人の女の子と結婚したい件  作者: ふくみどり
帝国学園編

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番外編(ランジール君のお茶会②)

アルフォース城の中庭。

皇帝の護衛を任されている近衛騎士団の者も、

政務を支える文官たちも――

この場に限っては、一切の立ち入りが禁じられていた。


ここは、

ランジール皇帝の唯一の私的な時間。


学園時代、

数々の問題を起こしながらも不思議と処分を免れてきた、

ランジール皇帝、ディハン軍務卿、

そして帝国学園剣技教師ラプロス――


かつて“悪ガキトリオ”と呼ばれた三人による、

恒例のお茶会の場である。


ランジールは手元のティーカップを軽く揺らし、柔らかな笑みを浮かべた。

「選抜闘技大会は大成功だったな。

 ニコラ会長から提案されたときは、正直どうなるかと思ったが。

 ディハンすら宰相とつるんで賛成するのだからな。

 まったく、皆の親ばか具合と言ったら、笑いが止まらんぞ」


「さらに、ディハンの慌てようを見たのも久しぶりだったな。

 娘のことになると、さすがに鉄仮面の軍務卿も、ただの親になるんだな」


ランジールの言葉に、ディハンは軽く顔をしかめる。


「まあ、お見苦しいところを見せてしまいましたね。

 あれだけのファイアの中に飛び込むとは、正直想像していませんでしたから」


「プラーサは相変わらずのお転婆ぶりだったな」


ラプロスが豪快に笑いながら肩を揺らす。


ランジールは少し得意げにカップを傾け、次の話題に移る。

「ラプロスよ、イヴァンスの指導をしているそうだな。

 あの“鬼の指導”と聞いておるが、成長の度合いはどうだ?」


ラプロスは眉をひそめ、少し困ったような顔を見せつつも、声には冗談っぽさが混ざる。


「決勝でライブリオがイヴァンスの欠点をことごとくさらけ出したからな。

 ある意味、良い機会だったろう。

 ……それにしても、ライブリオの動き、

 あれ先生みたいだったんだが……何であんな風に戦ったんだ、あいつ?」


「ふふ、おそらくランジール君の仕業でしょう。

 大方、手を回されたのではありませんか?

 Aランカーが宰相側に行かないように釘を刺す意味と、

 イヴァンス君の指導も兼ねてですね」


「さらに、冒険者ギルドのギルドマスターにも手を回していたのでしょう。

 もう一つ、セラフィスを焚きつけたのも、

 ランジール君の策略ではないのですか?」


ディハンは落ち着いた声で、理知的に順序立てて推察する。


ランジールは満面の笑みを浮かべ、嬉しそうに頷いた。


「ははは、その通りだよ、ディハン。すべて儂の計略だ。

 準決勝の後、ギルドマスターに頼み込んでな。

 ちょうど謁見に来ていたから、たんまりとお金も握らせておいた。

 ライブリオも嬉々として協力してくれたぞ」


「で、セラフィスはなんで巻き込んだんだ?」


ラプロスが首をかしげ、思わず声をあげる。


ランジールは軽く肩をすくめ、陽気に笑った。


「ははは、セラフィスも魔導士団を思うように運営できておらんからな。

 ならば、不満解消も兼ねて、

 イヴァンス君の指導に参加させるのも一興かと考えた次第だ」


「……俺とセラフィス、帝国のトップ二人を師匠にするなんて、

 どんだけイヴァンスに期待してんだ、ランジール」


ラプロスは思わず吹き出し、豪快に「ははは!」と笑う。


「それはお前の方だろう、ラプロス。

 聞いておるぞ、グレッグ以来の鬼の指導を再び出すつもりではないか」


更にランジールが続ける。


「しかも、グレッグまで協力しておるそうだな。

 大方、グレッグはラプロスの“鬼”の指導時代を思い出しておるのだろう。

 まあ、学園に駐在しておるのだ。問題はないだろうな。な、軍務卿様」


ディハンは落ち着いた声で軽く首を傾げる。


「からかわないでください、ランジール君。

 まあ、イヴァンス君がグレッグ将軍の補佐として騎士団を引っ張っていける人材であれば、

 帝国の安泰は続くでしょうけどね」


ランジールはカップを揺らし、微笑を崩さずに言った。


「ああ、グレッグが皇帝になって、儂が気楽に過ごせる時代を迎えるためにも、頼んだぞ」


「なに、ランジール。お前、自分が楽になりたくてやっておるのか?」


ラプロスが豪快に突っ込み、三人の笑い声が中庭に広がった。


しかし、その笑いが落ち着くと、ラプロスは突然真剣な表情でディハンに訴えかけた。


「ディハン、あと一つだけお願いがあるのだ。プラーサのことなんだが……

 娘に、私を無視するように焚きつけるのはやめさせてくれ!頼む!

 イヴァンスの訓練を始めてから、娘が俺に冷たいんだよ……

 プラーサお姉ちゃんから『パパのこと無視しろ』って言われてるし、

 とか平然と言うんだ。半年も娘とまともに会話できていないんだぞ!」


ランジールは思わず豪快に笑いながら、肩を揺らした。


「本当か、ラプロス。それは災難だな。はっはっはっ」


ディハンは落ち着いた声で頷き、冷静に答える。


「くくく……分かりましたよ、ラプロス君。

 ちゃんとプラーサには言っておきます。

 さすがに半年も会話できないのは、耐えがたいでしょうからね」


ラプロスは胸をなで下ろし、深く息を吐いた。


「頼むぞ、ディハン……これで少しは親子の会話が戻るといいんだがな」


ディハンはカップを静かに口元へ運び、紅茶を一口飲む。


「ええ、プラーサにはきちんと伝えておきますよ。

 もっとも――」


そこでわずかに口元を緩めた。


「娘さんが本当にやめるかどうかは、保証できませんがね」


「おい!」


ラプロスが思わず声を上げると、ランジールが堪えきれずに吹き出した。


かつて帝国学園で騒ぎを起こしては教師たちを頭痛の種にしていた、

“悪ガキトリオ”のままだった。


ランジールはティーカップをゆっくりと置き、満足そうに微笑む。


「さて、今日はこのくらいにしておくか。

 また面白い話ができたら、ここで聞かせてくれ」


「次はラプロスの家庭事情の続きかもしれんな」


ディハンの一言に、ラプロスが頭を抱える。


「勘弁してくれ!」


三人の笑い声が、アルフォース城の中庭にもう一度響いた。


そして――


悪ガキトリオのお茶会は、今日も平和に幕を閉じた。

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