007 ) ダンジョンは楽しかった
その日、とある3人の少年冒険者達が、お日様が完全に頭の真上に昇る刻限になった頃に王都ガラルの冒険者ギルドに来ていた。
この冒険者ギルドでは、各種様々な依頼をクエストとして掲示板に掲示する事で、広く冒険者達に公開している。
そして冒険者達は自分の『冒険者ランク』に見合ったクエストを、掲示されている様々なクエストの中から見つけると、その『依頼書』を持って受付嬢の所まで行き、受託手続きを経てからクエストに出かけて行くのだった。
各クエストは、朝日が昇る前の時間帯にギルド職員が掲示板に掲示するのだが、その掲示板に貼り付けられたクエストを各冒険者達が大騒ぎしながら奪い合う姿は、この王都ガラルの冒険者ギルドの朝の風物詩でもあった。
まあ、楽なクエストや割りの良いクエストだと思えるクエストは『早い者勝ち』なのだが、ギルド職員達がそろそろ昼食でも取ろうか?と言う刻限になった頃になって、ギルドの掲示板を頑張って見上げている姿があった。
いつも行っている『早朝の薬草採取』のクエストを終わらせて、午後から出来るクエストがないかと確認しているマメの姿だった。
王都ガラルの冒険者ギルドでは、マメが薬草を採取している森で見つけたリビングアーマーを、コツコツと修復している話しは冒険者達のあいだでは割と有名になっていた。
そんなマメの姿を見て、3人の少年冒険者達と一緒にギルドに来ていた先輩冒険者が、面白くなさそうな顔をする。
まあマメは、コノ冒険者ギルドではちょっとした『アイドル的な存在』だったし、マメが見つけた2体のリビングアーマーの片割れが、モフモフの可愛いぬいぐるみ人形のボディを手に入れた事で、冒険者ギルドの受付嬢達や女性冒険者達にチヤホヤされているのだ、まあモテない男性冒険者達から見れば、面白くない事この上ないのだ、
彼等3人が所属しているクラウンで、何かと世話になっている先輩冒険者が密かに好意を寄せている女性冒険者が、マメが作ったぬいぐるみ姿のアールを猫可愛がりしている姿を見て『あいつ、邪魔なんだよな〜 居なくならないかな〜』と言っているのを聞いて、
「僕達でアイツを排除して来ましょうか?」と言って、3人のリーダー的少年が身を乗り出すと、
「お前達に出来るのか?」とその場に居た先輩冒険者では無く、その日は冒険者ギルドから呼び出しを受けて来ていた彼等が所属しているクラウンの幹部の一人が、彼等が座る後ろの席から顔を出して聞いて来た。
その幹部の名前はバンクスと言うのだが、余り良い評判を聞く人物では無かった。
その日バンクスは、王都ガラルの冒険者ギルドのギルドマスターであるギプスから、とある一件で呼び出しを受け、かなり厳しい叱責を受けたばかりだった。
しかも、呼び出しを受けて叱責された原因は、とある村に出没するレッドボア数体の討伐依頼に関してだった。
まあレッドボア自体の討伐は何事も無く終えたが、その後が悪かった。
レッドボアの討伐を終え村に帰って来た冒険者達に対して、その村を纏める村長は感謝の気持ちを込めて、夜には酒とその村では祭りの日にしか村人達の口に入らない様な食事を彼等に振る舞ったのだが、普段から素行が悪かった彼等の軟弱な自制心が、酒が入った事で無くなってしまい、やれ『若い村娘に酌をさせろ!』だの『今晩は生娘を寝床に用意しろ!』だのと、散々と無理難題を言って来たらしい、ただこの村人達が幸運だったのは、この素行の悪い冒険者達とは別のクラウンに所属している冒険者達がその場に居たからだった。
今回のレッドボア討伐は複数体同時の討伐依頼だった事もあり、それぞれのクラウンに所属して活動している冒険者達の中から、4組のパーティーを募集して、その4組で同時に複数体のレッドボアを各個に討伐する内容だった。
ギルドマスターから、かなり厳しく叱責を受けた事で鬱憤が溜まっていたバンクスが、ギルドマスターであるギプスへの仕返しとして、義理の息子であるマメを徹底的に痛め付けてやろうと思い付いて3人に指示したのだった。
ただ、この3人に出した指示が原因で、後々バンクスは自身の身の破滅は無論の事、バンクス自身が所属しているクラウンまでが解体された上に、あわや『国家間での戦争一歩手前』までの騒ぎになるとは、思いもしなかっただろう。
まあ、バンクスがマメの本名に気付いてさえいれば、そんな事にはならなかった話しだが・・・
バンクスが3人の少年冒険者達に指示を出した結果、最悪の事態一歩手前の事件が起きた。
そしてギプスは、諜報員達が色々と調べた結果報告書を読み進めて行くうちに、到底看過出来ない事態が影で進められていた事を掴むと、
「兄貴には早々にガラルに来て貰わんといけんかのう〜」と、ギルドマスターの執務室でひとり暗い顔をして悩み混んでいた。
あの日、思考の硬直が解けたギプスは、
「今から予定通りにダンジョンへ行くぞ〜! 可愛い息子と『レッツダンジョン!』じゃあ〜〜〜!」と雄叫びを挙げると、有無を言わせずに全員をダンジョンへと引っ張って行った。
まあ結果として、初ダンジョンは楽しかったし、ダンジョンのボス部屋前に在る中ボス部屋で見た。
ギプス父さんと4人の叔父さん達の『重戦士アタック』は圧巻だった。
その時のマメは、目の前でイレギュラー出現したオーガの集団が、いとも簡単に殲滅させられる様子を、瞳をキラキラと輝かせながら見ていた。
通常なら初心者向けのランクが低いダンジョンなんかでオーガが出現する事は先ず無いのだが、
「今回は予想外の高レベル冒険者達が侵入して来たので、ダンジョンも慌てて高ランクの魔物を用意したのだろう。」とデイス叔父さんが言っていたが、基本的にはマメのレベル上げが目的で来たダンジョンだったので、マメが出現して来る魔物達をせっせと退治して、その様子をギプス達は黙って見ていた。
まあ毎回、討伐後は全員から色々とダメ出しやアドバイスはあったが、鎧をバイス師匠に修復してもらい、自由に動ける様になったエルも魔物の討伐に参加して順調にレベルを上げる事も出来たし、意外な方法で無事にアールもレベルを上げる事が出来た。
ギプス父さん達との初ダンジョン攻略の感想は、『物凄く楽しかった。』の一言に尽きると思う。
ダンジョン攻略中の野営時なんて、テントを設営した途端にギプス父さんとアイス叔父さん達は宴会を始めるし、エレナ母さんは空間拡張したテントで入浴タイムに突入するし、アスタさんはせっせと僕の身の回りの世話を焼きたがるし、アールはエメラダと一緒にエルの肩に登って話しをしている様だし、まあアール達がエメラダと意思疎通が出来ている事は、割と簡単な方法て確認する事が出来た。
ただ単に、アスタが欲しい物をマメが言葉ではなく意識と言うか?思念でアールに
『アスタさんがタオルを探していると、エメラダに言って。』と伝えると、エメラダはトトトとテントの中に走って行き、タオルを持って出て来たのだった。
「アール、君とエメラダは本当に仲良しなんだね〜」と言葉に出して伝えると、アールはテヘヘと頭を掻く仕草した。
そしてアスタにタオルを渡したエメラダは、アールの横にちょこんと座ると、またアールと楽しそうにおしゃべりを再開した様で、見ていて微笑ましくなる。
それ以外でもアスタさんは、マメにダンジョンで必要な知識を色々と教えてくれたが、僕に『ダンジョンの攻略方法を伝授するんじゃ〜!』と息巻いていたギプス父さんやアイス叔父さん達は、ダンジョンが用意したメマでは到底相手すら出来ない様なイレギュラー種扱いの魔物が出現すると、
「マメに儂のカッコいい姿を見せるぞ〜!」
「良い暇つぶしじゃ〜!」
「偶には現場にも出んと、良い錬金術素材も手に入らんか?」
「マメの為にも良い品をドロップしろよ魔物達!」
「今回のオークキングが率いる集団は、今夜のオカズを落としてくれるかな?」などと言いながら、一瞬で魔物達の集団を殲滅してしまうわ、野営地では毎回宴会を始めるわ、鉱物が採取出来る場所に来ると、『サービスタイムじゃ〜!』などと言って、その辺り一帯を掘り返しまくるわ・・・
確か? ギプス父さん達は、僕にダンジョンの攻略方法などを教えてくれる為にダンジョンに一緒に来た筈だったのだが、いつの間にか?戦闘技術に関してはアスタさん、魔法に関してはエレナ母さんが指導してくれる様になっていた。
何度目かのイレギュラー的な魔物達の集団襲撃があった後、メマはダンジョンの『主』的な存在に対して『非常識な一行と一緒にお邪魔してすみません。』と心の中で謝罪込めて本気で祈っていると、誰かに『少年よ優しいな、しかし、まあ気にするな!』と言われた気がした。
その後は、ボス部屋前の中ボス部屋に出現したオーガ達以外は、初心者向けダンジョンでは先ず出現しない様な魔物も出現する事は無く、レベルアップするマメにまるで合わせたかの様に、メマが討伐出来るギリギリのランクの魔物達が出て来る様になった。
そして、レベルを12まで上げる事が出来たマメに対して、ダンジョンの『主』的存在が用意したラスボスは、マメから見れば巨大な2体のミノタリウスだった。
実は此処に辿り着く迄に、エルはダンジョンの鉱石回収ポイントでギプス父さん達が掘り当てた魔鋼石を元に、マメとバイス師匠の2人で、純粋な魔鋼のインゴットに錬成した素材を使って、貧弱だった鎧を重厚な重戦士の鎧へと作り直されていた。
暇潰しに、かなり魔改造された重戦士の鎧を作り上げてしまう人達って・・・
とは思ったが、多分たがコレも僕の今後の事を考えてだと思うと嬉しくなるし、アールには、エメラダが配下の人形を貸し出してくれた。
なんとダンジョンの攻略中に、エメラダが貸し出してくれた人形を、アールが操って戦う事が出来るという事が判明したのだ、お陰でアールのモフモフなぬいぐるみ姿を損なわずに、アールにも鎧と剣を持たせる事が出来ると分かった。
しかも、アールの剣の腕前はアスタも舌を巻く程の達人レベルだった。
まあアールの剣の腕前が達人レベルだったのも、アスタさんの人形のレベルがSクラスだったからだとマメは思っていたが・・・
そんな感じで、マメ達と2体のミノタリウス戦が始まったのだが、不思議な事にマメには、ギプス父さん達以外にも別の存在の視線も何と無く感じたし、その存在から『君の卒業試験相手を特別に用意してあげたよ』と言われた気もした。
マメ達の戦い方として、重戦士装備のエルが前衛なのは当然だとして、ダンジョン内でバイス師匠が即席で作った鍛冶場を使い、アイス叔父さんとカイス叔父さんが作った大楯を片手に持ち、もう一方の片手には巨大な大剣を装備している。
そして、何故だかは分からないけど、その背中には棒の様な剣?を背負っている。
エルの鎧の製作を監督し、色々と指示を出していたギプス父さん曰く、
「このエルの鎧のスタイルは、儂が若い頃に一緒に戦い、一緒に旅をした『勇者マサヒロ』が良く話しをしてくれていた、彼の故郷の物語りでは有名で、根強い信者も多いと言っていた『3体の星の守護者』を再現した物だ!」と言って胸を張っていた。
マメは鎧の事に関しては余り良くは知らないのだが、エル自身は何と馴染みのある懐かしい形状の鎧だった様で『懐かしい』と言う感情が流れ込んで来た。
そしてアールは、エメラダ借りている人形で振るう細身で長い両手剣を作って貰っていた。
アールはアイス叔父さんに剣を打って貰う際、頑張って地面に絵を描いて説明していたし、剣を実際に打っている最中には、アイス叔父さんに剣を持たされて色々と確認もさせられていた。
そんなアールは勿論、エルが足止めした相手を切り裂くアタッカーポジションだ、そしてマメはと言うと、槌や剣を使って戦う事も出来るが、一番しっくりとくる戦闘スタイルは、デイス叔父さんと同じ魔法使いタイプだった様で、戦闘スタイルに関する職種的には『魔剣士』の分類に入る様だった。
エルがミノタリウスの突進を受け止め、アールがそこにすかさず攻撃を与えてミノタリウスの体力を奪って行く、そしてマメはもう一体のミノタリウスを相手に、小柄な体型を活かしてその足元を潜り抜けて、剣でミノタリウスの足を切り付けて、ミノタリウスの突進力を奪いながら、マメが相手をしているミノタリウスの意識がアールとエルに向かない様にする。
そして何故か?アールが操る人形の肩に、さも当然のようにエメラダも一緒になって座っている。
そしてアールとエルを相手に戦っているミノタリウスは、エメラダを一番警戒している様でもあった。
大分後になってアスタさんから聞いたんだけど、
「あの程度のミノタリウスなら、エメラダなら苦もなく討伐してしまうわよ? だってエメラダが本気を出したら、地竜の突進をも止めて地面に縫い付けてしまうもの?」との事だった。
そりゃあミノタリウスさんも警戒してしまうよ! 可哀想に・・・
そして初心者向けダンジョンのラスボスであるミノタリウスとの激戦も、エルが相手をしているミノタリウスにシールドバッシュを決めて、ミノタリウスが思わずたたらを踏んだ瞬間、両足の膝から下全体に仕込まれている重力操作魔法と、腰の後ろに仕込まれている風魔法を駆使して、ミノタリウスを追撃して吹っ飛ばすと、すかさずアールがミノタリウスの四肢を切り飛ばしていた。
そして、エルはミノタリウスを吹っ飛ばした勢いのまま、今度はマメが相手取っていたミノタリウスに対しても、真横から突っ込んで来て、その勢いでまたまた吹っ飛ばしてしまったので、マメは遠慮なく、ぶっ飛んで行って仰向けに倒れるミノタリウスの胸元に、錬金術で作った魔鋼製の杭を突き刺して、ミノタリウスにトドメをさした。
トドメを刺されたミノタリウスが姿を消すと、複数個のアイテムがその場に残っていたが、マメがそのアイテムを確認しようとしていたら、アールが肩に乗って操る人形が迎えにきた。
そう、アールはもう一体のミノタリウスに対してもマメにトドメを刺させる為に、四肢を切り飛ばしただけでトドメを刺さずにいたのだった。
そしてマメが『ミノタリウスさんありがとう。 良い経験をさせて頂きました。』と感謝の念を込めて、その手に持ったアイス叔父さんが『ここ数年では、一番の会心の出来の剣だ!』と豪語していたが、見た目は素朴な造りの剣にも見える一振りを、ミノタリウスの首に向けて振り下ろした。
その瞬間、ミノタリウスが笑っていた様にマメは感じていた。
そして最後のミノタリウスが姿を消してドロップ品が現れた瞬間、マメを眩暈が襲う。
マメがレベル15以上にレベルアップした瞬間だった。
この初心者向けダンジョンでは、レベルが5アップする度に冒険者は眩暈を発す事から、マメは3度目の眩暈なので、レベル15以上が確定と言う事だった。
後は教会で鑑定して貰うと、鑑定して貰った時点でのレベルや、所持しているスキルの詳細が詳しく記載されている『鑑定証書』なる物が貰える。
無論、無料では無い、鑑定料と『鑑定証書』の発行代金として、金貨1枚の教会への寄進が必要となっている。
そしてもう一つ、初心者向けダンジョンでは珍しい事に、ボス部屋攻略の対価として『金の宝箱』が出現した。
そして『金の宝箱』を見たマメ以外の全員が一瞬息を呑む。
それ程『金の宝箱』の出現は珍しい事なのだ、あのSランクダンジョンでさえ『金の宝箱』の出現率は0.01%を切っていると言われている中で、ましてや初心者向けダンジョンで出現する『宝箱』は今までは『銅の宝箱』が最上記録で、通常は『木の宝箱』の出現が一般的で、運が悪いと出現すらしない事もあるが、出現した『金の宝箱』を目の前にしてマメ以外の全員が自分自身の目を疑い、思わず同時に自分の頬を抓ってしまう程だった。
エメラダでさえ、自分の両頬に両手を押し当てて驚きを表していたが、当のマメとアール&エルは『何で皆んなはそんなに驚いている?』ってな感じで首を傾げている。
そして暫しの時を経て、一番に思考が再起動したエレナ母さんが、マメに『金の宝箱』の蓋を開ける様に促した。
マメが『金の宝箱』の蓋を開けた瞬間、宝箱はスッと消えてしまったが、後には黒表紙に金文字で装飾された2冊の魔導書と、同じく黒表紙に赤文字で装飾された1冊のスキルブックが残されていた事に、またもやマメ以外の全員が息を呑む。
本来なら、宝箱から出て来る魔導書ないしスキルブックは、宝箱一つに対して1冊しか出て来ないのだ、またしてもイレギュラーな自体に対してマメ以外の全員が混乱する中、またもやマメの耳には『私からの 特別サービスだから 気にする必要はないよ!』と、何処からか聞こえた気がした。
「先ず、マメよ冷静なれ!」とかなり興奮している様子のギプスに
「いや、ギプス父さんの方がかなり興奮している気がするよ?」と自分が引き当てた『金の宝箱』がどれだけ超絶レアな現象で、しかも魔導書とスキルブックが同時に3冊も出現するなどあり得ない事なのに、当のマメはそんな事は全く知らないので、平然とした物で、ギプスから聞かれるままに、3冊の魔導書とスキルブックの表紙に書かれた文字を読む。
この魔導書とスキルブックは、正当な権利を持った持ち主しか読む事が出来ない上に、例え盗まれて持ち去られたとしても、不思議な事に翌朝には持ち主の下に戻って来るのだ、だから誰も横取りしようとも考えない。
そしてマメが手にした魔導書は『空間魔法』と『重力魔法』の魔導書で、スキルブックの方が『錬金術』だった。
『空間魔法』はエレナ母さんも持っているし、『重力魔法』はデイス叔父さんも持っている上に、スキルブックの方は最近マメにも生えてきた『錬金術』だったので、皆んなの興奮も徐々に冷めてしまい。
『まあ初心者向けダンジョンで出現する宝箱の結果としては、こんな感じが上場なのだろう。』と言う結論に至り、ギプス父さんからは、
「後日教会に行って鑑定して貰って、折角空間魔法を覚えて、空間収納で色々な物を保管しておく事が出来る様になったんだ、その空間収納の中に、記念に鑑定証書も大事に保管しとけよ〜」と軽く流されて終わったのだが、マメは魔導書とスキルブックの表紙に『極み』と書いてあった事は伝えていない、この事はマメが意識して伝え無かったのでは無く、ただ単純に何も知らなかったから言わなかっただけで、もしマメが『極み』の意味を知っていて、ギプス達に『極み』だった事を伝えていたら、かなりの大騒ぎになったであろう事は確実だった。
そしてマメが『金の宝箱』を引き当てて以降、この初心者向けダンジョンでは、時々『金の宝箱』が出現する様になったのだが、どの魔法書やスキルブックも『ちょっと良い程度』の魔法やスキルだった為、初心者冒険者以外には喜ばれる事も、珍しがられる事も無くなり、初心者向けダンジョンで時々出現する『金の宝箱』は、『夢の宝箱』と呼ばれる様になったとか?
だって初心者冒険者達に限っては、魔法やスキルを持っている者はまだまだ少数だし、魔法やスキルを一つ得るだけで、ダンジョンで得る事が出来るドロップ品が増えたり、覚える事が出来た魔法に寄っては、魔物の討伐クエストを受ける事も出来る様になるし、条件の良いパーティーやクラウンにも所属する事も出来る様になり、収入が増えると普段利用している宿の雑魚寝部屋から、個室部屋にランクアップしたり、夕食時には肉料理が一品増えたりするのだから、正に駆け出しの冒険者達に取っては『夢の宝箱』だった。
その楽しかったダンジョン攻略も終わり、約10日が過ぎた頃、マメは次のDランクダンジョンに挑戦する為の準備の一つとしてと、もう一つの目的が有って、王都の外れにある古い教会に来ていた。
その教会からの今回の依頼は、古くなって脆弱になって来た外壁の修復と、その外壁の強化、そして別件で出ていた教会の広い敷地内の草毟りと、その後片付けだったが、その依頼が終わった後は、教会で鑑定をしてもらい、鑑定証書に記載される自分の魔法とスキルの特性と言うか?性能?を知る事が目的だった。




