043 ) じつはしんぱいしてた
クールにつられてマメがセーフティゾーンの入り口を見ると、ギプス父さんを先頭にマメを探しに来た捜索隊一行が呆然とした表情でセーフティゾーンの入り口で立ち尽くしていた。
それもそうだろう。
改変が起きたダンジョンに置き去りにされた格好になったマメを、決死の覚悟で捜索に来たのだ、しかもEランクダンジョンからAランクダンジョンへと改変が起きたダンジョンなのだ、マメにはエル達が付いて居たとは言え、状況的にはかなり苦しい状況は確かなハズだったのだ、しかし決死の苦労の末に辿り着いたセーフティゾーンの先には、円卓を囲んで呑気に談笑しているマメ、しかも円卓には見知らぬ者達の姿も有るのだ、
まあ順当に考えると彼等もダンジョンの改変に巻き込まれた人種達なのだろうが、ただその場には場違いとも言える人物・・・ いや、人物と言うか魔物が居た。
「あっ、ギプス父さん!」
「おおマメ、無事だったか??? 心配したぞ!」
《《 マメちゃんのお父上殿達かな? 》》と、今迄は普通にクールとは会話する事が出来て居たハズなのに、クールの声が妙にマメの頭に響く、
「ああ儂がマメの父親のギプスだ、このダンジョンが在る王都ガラルで冒険者ギルドのギルドマスターを勤めている。」とクールに返すと、
「マメ、いや、Eランク冒険者マーク・メタリアーナ、冒険者ギルドのギルドマスターとして聞くが、私の目の前に居る魔物は危険度Sランク指定魔物のあの『リッチ』で相違ないか ? 」
「うん・・・ いえ、相違ないですギルドマスター 」
「そうか・・・ それで何故お前はこの危険度Sランク指定の魔物と一緒に居てそんなに笑顔でおれるのだ ? 」
「えっ ? 友達だから?」
「待て待て! どうやったら危険度Sランク指定の魔物と友達になれるんだ!? 儂はそんな話は一度も聞いた事無いぞ! 第一、ダンジョンボスクラスの魔物と一体全体どんな話しをするんだ?ダンジョンでの効率的な冒険者の狩り方か? それとも効率的なレベル上げのアドバイスでも受けていたとでも言うのか?」
「普通に学園生活での話とか? 古代魔法の話しとかかな?」
「何を呑気な・・・ 」
「ちょっと待ってマメちゃん! 今、古代魔法って言ったよね? 古代魔法の話しってどう言う事よ!?」
「そのまんま古代魔法の話しだよエレナ母さん」とギプスの話しを遮って話しに割り込んで来たエレナに答える。
まあ魔法使いのエレナ母さんにしてみれば、古代魔法と聞いて黙ってはいられなかったのだろう。
しかも、本当に敵意の有る魔物ならエレナ達がセーフティーゾーンに入って来た瞬間に容赦無く攻撃されていただろうし、肝心のマメがのほほんと笑っているのだ、本当に危険な事は無いのだろうと一瞬で判断・・・ と言うよりも、自身の好奇心が勝ってしまった側面もあったが、エレナはどうしても目の前に居るリッチに聞かずにはいれなかった。
《《 そうですよ、私達はマメちゃんが言う通り学園に通う優位性や、学園で習う魔法や様々な教養や技術の話しをしていました。
その話の中に古代魔法の話も出て来ました。》》
「そうなのね! 凄い話しだわ! 理性的なリッチさんも凄い発見だけれど、それ以上にそのリッチさんから古代魔法の話が聞けるなんて、マメちゃん良かったわね〜♪」とエレナがおかしなテンションで喋りまくっている。
その一方で、マメの救出の為に集まったメンバー、ギプスを筆頭に、アイス叔父さん、バイス叔父さん、カイス叔父さん、デイス叔父さん、クラウン『雷槌』のアスタさん、アスタさんの従魔と言っても良いのか?ピクスドールのエメラダ、ああエメラダは速攻でアールに抱き着いて何やら楽しそうに会話している。
そして、一番後方で今にも死にそうな青い顔をしているのが、第15階層の転移門で別れた居酒屋のオーナーでBランク冒険者のアウグストさんだった。
アウグストさんは、どうしても救助隊のメンバーに入れて欲しいとギプス父さんに懇願して此処まで来てくれたらしい。
「目の前のリッチに敵意がない事は取り敢えず理解した上で、この件は一度脇に置いて置くとして、所でマメ、マメ以外にもこの場には要救護者が居た様だな、この方達とは何処で出会ったのだ ? 」
「え〜っと・・・ 」
『だいじょうぶ せつめいは とぱすに まかせるといい』と、またダンジョンの神らしき声が聞こえたのでマメは黙ってトパスに委せる事にした。
「初めまして私はトパス、彼女はサテラと言う。
私はガイアス帝国のガイア学園の講師で、彼女は私の護衛として一緒にダンジョン探索に付き合ってくれたAランク冒険者のサテラです。」と言ってトパスは空間収納の中から身分証明書の様な物を取り出してギプスに提示して見せている。
「いやいやちょっと待ってくれ・・・ ガイアス帝国のガイア学園だって?・・・ 」
「どうしたのギプス父さん?」
「あのな〜マメ・・・ いや、マメが知らないのは当たり前か・・・ 良いかマメ、ガイアス帝国って国はな、お前が大好きな絵本の話の元になった国の名前なんだ、しかも、今提示して貰った身分証が本物だったら、彼女達は約3000年以上も昔の人になる。
これが一体どう言う事なのか分かるかマメ?」
「どう言う事?」
「途轍もなく大騒ぎになるって事だ、第一、一体どうしたら約3000年以上も昔に存在した人物が、今も生きておれるのだ? 彼女達はどう見ても精霊種のエルフではないし、彼女達がガイアス帝国が繁栄していた時代の者達だと証明のしようが無いんだ」
《《 ああそんな事ですか? 》》と、エレナ母さんに色々と質問攻めにあっていたクールが話しに混じる。
「そんな事とは?」
《《 このダンジョンは時空間が歪んでいる場所が沢山あります。
彼女達はその時空間の歪みの深い場所に居たのでしょう。
そうですね、多分ですがこの場所の様に『セーフティーゾーン』と呼ばれている場所でも、稀に時空の歪みが発生しますから、彼女達はそれに巻き込まれたのでしょう。》》
「そんな事をどうやって証明するのだ、第一、そんな荒唐無稽な事を一体誰が出来ると言うのだ ? 」
《《 私なら出来るが? 》》
「いやね、『私なら出来るが?』って言われても・・・ 」
《《 ああ私の自己紹介がまだだったな! 私はこのダンジョンのダンジョンボス、生前はエバグリーン公国で時空魔法の大魔法師とも大賢者とも呼ばれておった。
その私がリッチへと成ったのだ、私から漏れ出す魔力の影響でダンジョン内部の時空が少々歪んでも一切不思議では無いと思うが? そう言う事で説明が付かんか?》》
「やはりダンジョンボスだったか〜 」と困り顔のギプス父さんに対して、
「え〜! あの数々の伝説を残したエバグリーン公国の大賢者様なんですか〜?♪♪♪」と対照的に大歓喜のエレナ母さん、
《《 伝説とは大袈裟な・・・ 》》
「いいえ!決して大袈裟な事では有りません! 空間魔法の大賢者様が残した論文は大変興味深い物ばかりでした。
私が学園の学生の頃は、大賢者様が残された論文や研究資料を寝食を忘れて読み漁ったものです!」
《《。」
《《 それほど評価して貰っているとは、存外に嬉しいものだな! これも何かの縁だ、聞きたい事があれば何なりと答え様ぞ 》》
「では大賢者様、大賢者様が発表された亜空間拡張に・・・ 」
「良い加減せんかエレナ、先にマメの心配をしてやらんか、仮にも母親だろうが・・・」とおかしな方向にテンションが上がってしまったエレナ母さんをギプス父さんが嗜めている。
「何をそんなに心配することがあると言うのギプス? 無事にマメちゃんと出会えたじゃない、それにマメちゃんが笑顔で笑っている姿を見て安心したもの、それに新しい女性達も増えた様だしね♪」とマメの顔を覗き込んで微笑むエレナ母さん、実はマメが改変に巻き込まれて遭難したと聞いた時には、誰よりも取り乱していの一番に改変が起きたダンジョンに入って行こうとしていたのは、マメには内緒なのである。




