004 ) マメの通ったあの森へ
「さてマメ君、僕は馬の鼻面を何処に向ければ良いかな?」
「はい、僕が薬草を採集ていたのは、ホド山の麓の森となります。
ですから、今は余り使われていない旧街道を西に向かって進んでください。」
「了解! 実は僕は豆くんの事は結構前から知ってたんだ。
まあバイス先生もからいろいろ聞かされていたと言うのもあるけどね、だから本当にさっきは色々と嫌な言い方をしてごめんね、本当は、今日、君と会うのをものす〜ごく楽しみにしていたんだ!
知ってたかい? 実は君と僕は色々と共通点が多いんだよ? まあ今から共通点が多い理由の一つを紹介しよう! さあエメラダ出ておいで!」とアスタが言うと、僕の目の前に空間魔法の魔方陣が現れ、その魔方陣の中から一体のマメとあまり変わらないサイズの人形が飛び出してきた。
まあ見た目はビスクドールと呼ばれるタイプの人形なのだが、モフモフボディーの『ぬいぐるみ』タイプのアールとは違い、その人形は白磁の陶器で作られている様な感じでとても瑞々しく、綺麗で可愛い顔立をしており、アイスブルーの瞳がとても印象的だ、しかも可愛く着飾ったドレスから覗くその手足もやはり白磁で出来ているのだろうか? その美しい手足の関節は球体関節で作ってあった。
手足の関節を自由に動かせる事で、様々なポーズを付けられる事から、通称ビスクドールと呼ばれるこのタイプの人形は、貴族の若い御令嬢や金を持っている豪商の娘さん達に大人気な人形らしい、まあ最近ではマメが作る『ぬいぐるみ人形』も結構な人気なのだが、マメ自身は自分が作る人形がそんなに人気が有る事は知らない様だった。
アスタに呼び出されたエメラダと言う名前の人形は、空間魔法の魔法陣から飛び出すと、マメの膝の上にちょこんと立ってスカートの裾を広げると可愛くお辞儀をした。
それを見たアールは大騒ぎ! まるで『なんだなんだ! 彼女はなんなんだ〜! 僕とは全く違うじゃないか!』て言う感じで僕をバンバンと叩いてくる。
「何だい?彼はそんなに彼女の事がそんなに気にいったのかい?」
「いやそんな感じではなくて、彼女の姿に驚いているんだと思います。
そんな感情が僕に流れて来ていますね〜 まあアールから見れば、自分と似た存在の彼女が『自分と比べて遥かに自由に動く手足を持てるじゃないか〜! 羨ましいぞ〜!』っていう感じですかね? アールは元々何処かの国の騎士だったらしくて、本人はさすがに何故リビングアーマーと言う魔物になってしまったのか? そんな体になってまで何を求めているのか?と言う事も、分からないみたいなんだけど、ただ剣は持ちたいみたいで、土魔法で作ったゴーレムにアールの魔核を移した時はともかく、このぬいぐるみに魔核を移した直後からずっと『剣を寄越せ〜! 剣を寄越せ〜!』って僕に訴えて来てますよ。」
ふと横を見ると物凄い勢いでブンブンと頭を縦に振っている。
「君、そんなに激しく頭を振っていると首元の縫い目がほつれて、頭がポロリと取れちゃうよ?」とアールに向かって言うと、アールが慌てて自分の首元を抑える。
アールの鎧については、新しく鎧を作ってやろうとは思っているけど、やはりただ鎧の体を作るだけじゃうまくいかないと思う。
だから、バイス師匠の所に足繁く通って色々と錬金術の勉強はしているんだけど、なかなか思う様には上達して無いのが現実である。
まあバイス師匠に言わせると!
「マメ、何をそんなに焦る必要があるんだ? 儂なんかはもう200年近くも鍛治師と錬金術師の勉強をしとるが、儂自身、まだまだ満足出来る仕事が出来たとは思ってはおらんわっ! 儂がマメと同じ様な年頃になった頃、鍛治師として先に見習いを始めたアニキに続いて、儂も師匠の所に見習いとして通い始めたが、マメの様に2年かそこらでは鍛治師スキルは兎も角、錬金術師スキルすら生えては来なんだ! それが、鍛治師の勉強を始めて2年かそこら辺の若造のマメに、錬金術のスキルが生えて来たんだ、儂は羨ましかったぞ!」
「いや、それは師匠が良かったから・・・」
「ガハハ! マメは嬉しい事を言う。 じゃがマメよ! お前は何も焦る必要は無いぞ! 毎日毎日、ただ、鍛治師の修行と錬金術の修行に励め! 例え今は先が見えんでも、一歩一歩前に進んでおれば、必ず目の前に『何か?』が見えて来る時がくる。 まあその『何か?』の輪郭がぼんやりと見えて来てからがまた先が長いんだがなっ!」と師匠は豪快に笑ってマメの杞憂を晴らそうとしてくれたが、まだまだ若いマメには少し難しい話しでもあった。
しかし、マメはアールの鎧の身体は必ず作ってやらないといけない様な気がしてならないマメにとって、自分の膝の上でアールと一緒に談笑している?・・・ まあアールが頑張って身振り手振りで何かを言おうとしているのに対して、エメラダも同じ様に身振り手振りを使って何か返事をしている様にも見えて微笑ましい。
まあその2人の姿に何か予感めいた物でもあったのだろう?アールの鎧姿の形が何と無く浮かび上がって来た気がする。
と、そんな事を思っていたが、思考を戻して道案内に専念するが、その後のアスタからの質問攻めにちょっと辟易してしまった。
最初は好きな食べ物や好きな物とか、たわいない質問から始まり、どんな女性が好みなのかとか、女性のどの部分が好きなのかとか色々とかなり攻めた質問までして来るのだ、しかも、アールもエメラダも従魔(マメにはアールを従魔だとは思っていない様だが)として一応はティムされている存在で、それぞれの主人と従魔の間には感覚と言うか?感覚的何か?とでも言うのか?まあお互いが言いたい事が何と無く感覚的に分かるのだ、勿論、アールなんかは特に言葉で伝える方が何十倍もマメが言いたい事は理解してくれる。
そんなアールとエメラダが何と無くキャッキャ!ウフフ!と楽しそうにしているのだ、そんな理由でアスタの質問攻めに対しても内心ではちょっと冷や汗かきつつ返事をしているマメちゃんだった。
マメ達が乗る馬車が森の入り口へ差し掛かり、アスタが馬車を止めると、茂みの中を掻き分けるようにして、通称『森の小人』と呼ばれている1匹のゴブリンが出てきた。
そしてマメの姿を確認した『森の小人』は一瞬安堵した表情を見せたが、再び慌てた様子で喋り出した。
「マメキタ! ヨカッタ! デモ! マメチガウニンゲン、タクサンキタ! タイヘン! タイヘン! ニンギョ チガウ、ニンギョウバラバラ! ウ、ヤメテ! イッタ! マメ、ナク、イッタ! デモ、ニンゲン! ワラッタ! ウ、ナグル、ワラウ、シタ! ウ、カナシイ! タカラ、マメ、サガス、シタ! マメ、アッタ!」とマメの足にしがみついて来たが、その話しを聞いたマメは、血相を変えて飛び出して行った。




