038 ) だんじょんぼすが
ガタンと音を立てて蓋が落ちた棺から、豪華な服を着たスケルトンがムクリと上半身を起こすと、
《これはこれは皆さん、初めまして、私はこのダンジョンの新しいダンジョンボスとなったリッチです。
皆様の事はダンジョンの神から話を聞き及んでいます。
どうぞ今後ともよろしくお願いします。
特にヒューイさん、先代のダンジョンボスと同様に私の事も守って下さいね。》と新しいダンジョンボスとなったリッチが言う。
《それが我が王の命であれば何も問題はないが・・・》
「ダンジョンの神様らしき人からもお願いされたし、そのおかげで新しく『ゲート魔法』を覚える事も出来たし、僕が困った時に呼ぶからお願い出来ないかな?」
《我が王よ・・・》
「ヒューイ『我が王』って呼ぶのは辞めてって言ったよね?」
《分かりましたマーク様、しかし、家臣が主人の側を離れるなどとは・・・》とマメからの提案を渋るヒューイにエルとアール、それにアカネまでが円陣を組んで何やら相談を始める。
《マーク様、では我の部下達は新しいダンジョンボスを警護する様に申し付けて置きます。
アール殿、エル殿、アカネ殿とも話し合いましたが、やはりマーク様には護衛が必要との結論と成りました。
ですので、我だけでマーク様の護衛の任に就きたいと思います。》
「う〜ん・・・ 『護衛の任』と来たか〜」
「オヌシ何を悩んでおるのじゃ? 確かにダンジョンの攻略に敗れて、死してもダンジョンに囚われた者だが、このダンジョンのボス部屋にこれだけ大勢の兵士達を引き連れて来る事が出来る武将は早々には居らぬぞ? この様な優秀な将は身近に置いて色々と教えを乞うのが良いぞ!」と言うサテラの勧めで、ヒューイがマメの従者として付いて来る事が決まった。
ああサテラは始めからマメに付いてこのダンジョンを出る気だった。
サテラは友のリッチが気掛かりで中々ダンジョンから出て行けなかっただけらしい。
「新しいダンジョンボスさん、ヒューイは僕にどうしても付いて来るらしいけど、ヒューイの部下達の事は宜しくお願いします。」
《はい、判りました。
ヒューイさん、貴方の部下達をお預かりします。
ですが、万が一、この部屋に冒険者達が侵入して来た場合は、是非ヒューイさんもお力添えをお願いしますね。》
《分かり申した。こちらも部下達の事を宜しく頼みます。》
《マーク・メタリアーナ殿》と新しいダンジョンボスのリッチが、マメの前に歩み寄り、マメの顔を両手で挟むと、その凹んだ眼でマメをじっと見つめ、
《君は良い相をしている。
そして君の魔力は暖かいな。
こんなに暖かい魔力に触れるのはいつぶりだろうか?》
「貴方のお名前は、なんて名前なの?」
《ああ私にはもう名前なんて無いさ、私はただのダンジョンの主、名も無きリッチ、たのダンジョンのボスさ。
この先代のダンジョンボスさんは、古代魔法の権威だった者の様です。
君も魔法特性はかなり有る様うだから、先代に色々と教えて貰うと良いだろう。》
「貴方も死してリッチに成る程の方だから、貴方も魔法にはかなり長けたと言うか、賢者と呼ばれてた位の方じゃないの?」
《多分ですが、賢者と呼ばれてたと思いますが、結局は『リッチ』と言う魔物になってしました愚か者です。
ダンジョンの神から、ここのダンジョンの主として雇われた時にそこら辺の記憶もかなり薄くなってしまってね。》と目の前のリッチが寂しそうに笑う。
「しかしダンジョンボスが、ダンジョンの神様に雇われたお仕事だとは思わなかった・・・」
『よのなかのしんりなんて あんがいたんじゅん しんぷるなんだよ』とまたダンジョンの神らしき声が聞こえて来た。
ダンジョンボスになったばかりなのか?それとも元々フレンドリーな性格なのかは判らないが、目の前のリッチには人間臭さが残っている。
《そうそう、アノ方から先代殿に宛てて伝言を預かっています。
先代の体を作るなら、先代が長年愛用してた、あの棺を素材にして新しい体を作ると良いそうですよ》と言いながら、新しいダンジョンボスのリッチが後方に有る棺を指差して示す。
「使うと良いよって言っても、そうすると貴方の棺ぎが無くて困らない?」
《いえ私の棺は別に有りますから》とまた別方向を指差すと、確かにそこには真新しい黄金に輝く棺が鎮座して頂いた。
《まあ金ピカ過ぎて眠れるかが少々心配でわ有りますが・・・》と苦笑いをする目の前のリッチ、
マメは大きな棺を収納魔法で収納すると、
「じゃあ行こうか?」
《是非、また来て下さいね。
貴方方一行ならココまで直接来れる様にゲート設置の許可を出して起きますから、》
「あっ!ゲート魔法の魔法書を未だ読んで無かった!」と言う事で、上の階に向いて歩き出そうとしたのを中断して、ゲート魔法書の『極み』を取り出して読み込んだ、まあ目の前のリッチさんがゲート魔法が得意なんだそうで、色々と教えて貰えたのは助かった。
「ヒューイ、ヒューイはその馬はどうするの?」
《我は連れて行ければと思っておりますが》
「う〜ん、困ったな〜 僕の所はそんな大きな馬を飼うスペースが無いんだよ」
《なら私の所でお預かりしましょうか? 貴方が馬を必要になれば、ゲート魔法で呼び出せば良いだけです。
ヒューイ殿の兵達も同様に呼び出せますし、私も『召喚』されたと言う事で一緒に参上させて頂いても良いし、それは良い考えです。
貴方、スキル『召喚』をお持ちですよね?私と『召喚契約』しませんか?》
「はい?ダンジョンボスって『召喚契約』が出来るの?」
《ダンジョンの神様から寵愛を受けている貴方なら大丈夫かと?》
『それはいいね けいやくはかんたん かれに なまえをつけるだけ』
「なんかダンジョンの神様が貴方に名前を付けてあげたら『召喚契約』が完了するって言われてよ?」
《では良き名をお願いしますね♪》
「う〜〜〜ん・・・
『我の名はマーク・メタリアーナ、我、汝にクールの名を授けるなり』
これで『召喚契約』が出来たかな?」
《はい上出来です。
マーク・メタリアーナ殿》
「ああ、堅苦しいのは嫌だし、対等なお友達契約なんだから、僕の事は気安く『マメちゃん』って呼んでくれたら嬉しいかな?クールさん♪」
《普通ならば『召喚契約』を受けた魔物が対等とは言えないのですが、貴方がそう言うならば、今後私は貴方を『マメちゃん』と呼ばせていただきます。 それと、私の方からもマメちゃんにゲート魔法を使って接しても良いでしょうか?》
「ダンジョンのお仕事が忙しくなかったら良いけど? ああ、大勢の前で突然クールさんが姿を表したら周りの人達が驚くから、事前に連絡が貰えたら嬉しいかな?」
《はい判りました。
マメちゃんの周りの状況を確認してから現れますね。》
「そんなに簡単に僕の周りの状況を確認したりする事が出来るの?」
《はい、マメちゃんがこの指輪を指に嵌めてさえすれば簡単です。》とクールと名付けられたリッチが、マメに小さな指輪を差し出した。
「ありがとう。
じゃあそろそろ第13階層のセーフティゾーンまで移動しようか? 多分だけどギプス父さん達もそろそろ僕を探して迎えに来ると思うし、」
《マメちゃん、ちょっと言い辛い事なんだけど、今、このダンジョンは改変中なんだよ? 前と同じ場所にセーフティゾーンは無いんじゃないかな? それにAクラスダンジョンに相応しい様に各階層の魔物達はかなり強く成ってるよ? それと、今このダンジョンは100階層有るけど大丈夫? 何だったらゲートで浅い階層のセーフティゾーンまで送ろうかい?》
「え〜〜〜!?」と、マメの絶叫が広い階層に響き渡った。




