037 ) どくろさん
目的地には神殿の様な建物が有り、その神殿の大理石の床の中央でエルがポツリと立って、床に転がる骸骨を見下ろしていた。
そして、アールもエルの中から出て、骸骨の額に手を当てている。
「エル、これが君たちが言っていた目的?」
《主人殿よ、我がここに来た目的は、我の古い知り合いである此奴に会う為ですが、此奴、愚かな事に我とアールの事を全く忘れてしまっておった様子で、一向に正気に戻らなんだ上に、我達に攻撃を仕掛けて来るので、少々お灸を据えてやりました。》と言うエルに釣られて、マメは再度床に転がるスケルトンの残骸を見たが、エルの言う『ちょっとお灸を据えた』程度にはマメにはどうしても思えなかった。
ふと後ろを付いて来たサテラを帰り見ると、ものすごく寂しそうな顔をしていた。
マメの視線に気づいたサテラが、
「何じゃ、オヌシ達も此奴と縁があったのか?」
「僕では無く、アールとエルがどうも知り合いみたい。」
「妾が此奴と出会った時は、もう此奴はリッチになっておった頃だから、その鎧の騎士達と知り合いじゃったと言うのは、それ以前の話し、まだ此奴が人の姿を保っておった頃の話しじゃろうの?」
《いかにも、我等も記憶がハッキリとはせぬが、どうも此奴とは人の姿をしておった頃に知り合いだった様な気がする。》
「人の姿だった頃と今の姿は違うと思うけど、エルは良く判ったね?」
《主人殿、それは魂の色で判りました。》
「そういうものなの?」
「妾達はそういうものじゃ」とサテラが肯定する。
「で、この骸骨さん、何か話したい事でも有るのかな?」
マメの目の前にいる骸骨は、手足は砕けて既に無く、残っているのは胸から上の状態で、肋骨の中に有る魔石もヒビだらけで今にも砕けてしまいそうであった。
「ねぇ何か言いたい事があるの。」とマメが問い掛けても、ただ空洞の眼窩が静かにマメを見るだけだった。
「う〜ん・・・ 何か良い方向が無いかな?」とマメが無い知恵を絞っていると、
『そんなのはかんたんだよ』とまたダンジョンの神様らしき声が聞こえる。
「簡単なの?」
『このどくろのませきをくだくだけさ』
「魔石を砕いたら骸骨さん消えてしまうよ?」
『だいじょうぶ、だいじょぶだから くだいてごらん』
マメが突然、腰に刺していた剣鉈を抜いて骸骨の魔石を砕いたのをマメ以外の全員が驚きの様子で見ていた。
それもそうだろう。
マメとダンジョンの神様らしき声の会話は、誰にも聞こえては居ないのだから、周囲の者達はマメがブツブツと何やら独り言を言った後に、突然腰の剣鉈を抜いて骸骨の魔石を砕いた様にしか見えなかった。
マメは骸骨の魔石を砕いた瞬間に『ありがとう』と、骸骨の声を聞いた気がした。
マメが骸骨の魔石を砕いた瞬間、激しい目眩がマメを襲い、マメは思わず床に膝を着いてしまった。
《主人殿、大丈夫か?》とエルがマメを立ち上がらせてくれたが、マメが何故骸骨の魔石を砕いたのか知りたい様でも有ったので、
「あのねエル、さっきダンジョンの神様らしき声から『骸骨さんの魔石を砕きなさい』って言われてね、魔石を砕いたらお話しが出来るらしいよ?」
《主人殿、それは誠に?》
「どうもオヌシが言った事は誠だった様じゃ、何やら魔鋼らしき物で出来た髑髏がドロップしておるぞ、それと金の宝箱もな」
取り敢えず魔鋼で出来ていると思われる髑髏を手に取ってみたが、重さはさほど感じない。
髑髏を持ち上げて色々と観察してみたが、そこでとあることに気が付いた。
その髑髏が何かを訴え掛けて来ているような気がするのだ、そこでアール達にもしたように、髑髏の口に魔石を入れてみると、髑髏の口の中で魔石が消えていく。
そしてまた口を開けるので、取り敢えずエルに髑髏を持っててもらい、次から次へと魔石を口の中に放り込む。
結構な量の魔石を髑髏の口の中に放り込んだ時、
《お腹いっぱい♪》と髑髏が喋り出す。
「あれ?頭しか無いのに、お腹いっぱいって面白い事を言うんだね?」
《まあ言葉の比喩ってもんですよ♪取り敢えず今の私が消化出来るのはここまでみたいですね。》
「いやいや、喋れる様になったのは良いけど、ここまでって結構な量の魔石を吸収したよ君は?」
《ごちそうさまでした♪ これでかなり力を取り戻せたとは思いますが、まだまだですね。》
「まあ魔石はまだあるから大丈夫だけど、と言っても、僕が持ってた魔石もかなり目減りしたからな〜」
《マーク様、では私の配下の者達に、その辺に散らばっている魔石を回収させましょう。》
「ヒューイの部下達にそんな事を頼んでも大丈夫かな?」
《大丈夫です!》と言う事で、ヒューイの部下達に魔石を集めて貰ったのだが、マメ目の前には大小様々な魔石が、思わず見上げる程に山積みになった。
一体エル達はどれだけの魔物を退治したのだろうか?
「この髑髏さんは、エル達が探し求めてたというか、エル達が探してた『人?』で間違い無いのかな?」
《主人殿、此奴はどうも我らが人であった頃の知り合いのようです。》
「と言う事は、サテラがこの髑髏さんと出会った時にはもうリッチだったと言うことだよね?そしてダンジョンに囚われて2000年近くが経つと・・・
そうするとエルとアールは2000年以上昔の人って言う事は確定だよね?
でも2000年以上前に生きてたアールやエル達が、なんで今頃になって?・・・」
《主人殿、それが我等にも良く分からないんですが、ただ仲間に会えて嬉しいと言う気持ちは湧いて来ています。》
「アールはどうなの?」と聞いてみると大きくウンウンと頷いてる。
「取り敢えずギプス父さん達が僕を探しに来ると思うから、第13階層のセイフティーゾーンまで移動しようか? あっ!移動しようと言ってもヒューイ達はどうしよう?」と悩んでいると、
『しょうねん、そうだんなのだが』と、またダンジョンの神と思われる声が聞こえてきた。
「相談とは何でしょうか?」
『そのひゅーいというものたち ここではたらいてもらえないかな?』
「ヒューイ達って、ダンジョンに解放されたんじゃないんですか?」
『はんぶん かいほうされたようなもんだけど それとかれたちがいっせいにしょうねんについていったら きっとたいへんなことになるよ。』
「それもそうですね。ちょっとヒューイに聞いてみますね。
ヒューイ、ダンジョンの神様がこのままこの階層で働いて欲しいって言っているけど、どうする?」
《マーク様、それは構わぬが、ただマーク様の身辺に何か有った場合に、我が参上出来ないのは・・・》
「って本人が言ってるけど?」
『それはだいじょぶ そこのきんのたからばこに やくにたつものいれておいた それともうひとつは そこのどくろさんにわたしてね ながいあいだおつかれさま たいしよくきんの かわりだよっていっておいて』
「はいわかりました。」と言って金の宝箱を開けてみると、ゲート魔法に関する魔法書と銀の杖が入っていた。
多分、この銀の杖はこの髑髏さんのものだろう。
で、ゲート魔法の魔法書は黒の表彰に金文字という事は、ゲート魔法『極み』と言う事なんだろう。
このゲート魔法のおかげで、ヒューイ達はこの階層で働きながらも、僕の呼び出しには応じれる様になったということであろう。
そんな話をしていると、神殿の床の中央に設置されている棺の蓋がガタンと音を立てて落ちた。




