036 ) おまえもか
《我が王よ、馬の準備が整いました。》
「ヒューイで良かったかな、出来れば『我が王』って呼ぶのは辞めて貰えるかな?」
《では王を何と呼べば良いでしょうか?》
「その前に、本当に僕に仕える気なの?」
《ハイ、我が魂に誓って!》とのヒューイの宣言に困惑したマメは、サテラをチラッと見たが、サテラはただ一言、
「妾は良いと思うぞ、オヌシが今後、何をしたいかは妾には判らぬが、強い騎士が一人でも多くオヌシの側に仕えるのは、オヌシがやりたい事を自由に選べる『力』の基にもなるしのう。」
「サテラが言う『力』って何?」
「判らぬか?・・・
まあ、今わ判らぬでも良い、早い話し、このヒューイとやらは、今後のオヌシの大きな力となるやも知れんと妾は思ったまでじゃ」
「サテラが言うなら・・・
まあ良いか、ヒューイ宜しくね♪
それと僕の事はマークって呼んでね!」
《それではこれより、王の事をマーク様と呼ばせて頂きます。》
「それでヒューイ、立派な馬を用意してくれたのは良いけど、僕は馬に乗った事が無いんだよ」
《では私の側近の者に馬を・・・》
「待て待て、妾は馬には乗れるぞ、妾とオヌシが一緒に乗れば良いと思うぞ?」とサテラが話しに割って入って来たので、結局マメはサテラと二人で一頭の馬に乗る事になった。
《ご主人様、私も馬に乗れませんが・・・》とアカネが寂しそうに言っていたが、
「アカネはヒューイの後ろにでも乗せて貰えば良いんじゃないかな?」とのマメの一言で、ヒューイの後ろに乗せて貰う事が決まった。
と言う事で、全員が馬に乗ったマメ達一行は、目的の場所へと進む事になったのだが、まあマメ達が目的地に向かって進む道の両サイドを、ヒューイ配下のリビングアーマー達が整然と整列しているのだ。
馬上にいるマメの所からでも、その整然と並んだ列の端が一向に見える気配がない。
「ねえヒューイ、ヒューイの配下って一体どのくらい居るの?」
《ハイ、マーク様、我がこのダンジョンを攻略しに来た時は、約25,000の軍勢を率いてこのダンジョンを攻略しに来たかと思います。》
「思いますって?」
《我の記憶がいささか曖昧でして、ハッキリと我に残っている記憶としてでは有りますが、当時は約25,000の兵を率いる将軍だったと記憶しております。
そして今の我に残った強い記憶と言うか?我を突き動かす使命感が『強い主人に仕える』と言うただ一言だけです。》
「じゃあ僕は当て嵌まらないんじゃ無い? 見た目もこんなだし」とマメは自分を指差して苦笑する。
《マーク様、人の『強さ』とは、見た目だけの話しでは有りませぬ、『強さ』とは人の目に見えぬ強さも有ります。
我に言える事は『マーク様はお強い』と、ただそれだけです。
それは、今後マーク様が成長された時に理解なさる事だと、我は思います。》
「じゃあヒューイは以前にはどんな生活をしていたとか思い出さないの?」
《何となくですが、戦に明け暮れていた日々を過ごしていた気がしますが、詳しい事は全く・・・
ただ、戦い方などの戦略方法などはしっかりと記憶に残っております。》
「ヒューイがこのダンジョンを攻略しようとして攻め入った時に居たダンジョンボスは、やはり今から僕達が向かう先に居るダンジョンボスと一緒なのかな?」
《申し訳ありませんマーク様、その辺の記憶が全く残っていません。
正直な話、我自身がヒューイと言う名の人であったと言う事と、将軍として戦に明け暮れて居た記憶は有るのですが、それ意外は・・・》
「そうなんだ、やはりダンジョンに囚われてるから思い出せないのかな?余計な事は思い出せない様になっているのかな?それともヒューイと言う名前の生前の記憶を持った鎧ってことなのかな?」
《それは私にはわかりません。
ただ我に判る事は、ダンジョン攻略に失敗した我が、長い間ダンジョン主の為に働かされていた事だけです。
そして、そんな我が判る事は、我が王、いえマーク様がダンジョンに囚われて長い我らを解放してくれたと言う事だけです。》
「まあ実際に戦ったのはエルだけとね!」
《いえ、全ての切っ掛けはマーク様の行動から始まり、その行動の結果としての現在が有るのです。
我が良い例でしょう・・・
25,000もの軍勢を指揮してこのダンジョンに挑み、結果としてこのダンジョン攻略に失敗した挙句、全員がダンジョンに囚われてしまいました。》
ヒューイが指揮していた人員は約25,000と言っていたが、実際に戦った兵士は20,000人にも届かなかったそうだ、まぁそうだろう。
戦争と言うのは、実際に戦う人間以外にも、食料や武器などを調達運搬する人員もいるはずだろうし・・・
そんな話をしながら、サテラと一緒に馬に乗って移動をしていたが、どうも後ろのサテラの様子が少しおかしい。
妙にベタベタというか2人で馬に乗っていいから仕方のないことだと思うのだが、必要以上に密着してきているような気もする。
後ろに乗るサテラはマメの頭の上に顎を乗せて、後ろからぎゅっとマメ抱き付いてた。
「ねえサテラ、そんなに抱き付かれたら苦しいよ。」
「馬に落とされない様にしてるんじゃから、仕方がなかろう?」と言って再びサテラは後ろからマメをぎゅっと抱きしめる。
まあそんなに実害がないから良いのかな?と放置してはいるが、後のサテラは上機嫌で、マメにやれクッキーを出せ♪やれ喉が渇いたから紅茶を出せ♪などと注文つけては、マメがサテラの要望通りにクッキーや紅茶を出すと、
「オヌシは本当に良い子じゃの♪」とマメの頭を撫でる。
挙句の果てには、
「妾の事はサテラと呼ばずに『姉上』でも良いぞ♪どうもオヌシは妾の一族の血を引き取るみたいじゃしのう♪」
「サテラそんな事が判るの?」
「いやいや、普通に考えて2000年前の妾が男と交わっていたと思うか?多分だが、遠い遠いお前の祖先は、妾の一族の関係者やったかもしれん、でないと妾のこの衝動が説明がつかん!オヌシが可愛くて、可愛くて仕方がのうてのう。
妾自身が一番困惑しておるのに、オヌシは全く呑気なもんじゃ・・・
《吸血鬼の妾が、こんな小僧に 魅了を掛けれる訳も無いしのう。本当に不思議じゃ》」
「サテラ、今何か言った?」
「いらん事は聞かんでいい。」
などと話をしながら、やっと目的地に着いた。




