035 ) またふえた
サテラが言う『小国が買える程の魔石』とは大袈裟だとは思うが、サテラが言うには、このAランクダンジョンのスケルトン騎士達の魔石はかなり高額で取引されているらしく、以前、サテラの所まで辿り着く事が出来た冒険者達一行の偉そうな奴が、
『俺達は付いてるぞ! スケルトン騎士の魔石だけで無く、バンパイアの魔石をも手に入れる事が出来るなんてな!
スケルトン騎士の魔石だけでも売れば小国の貴族も夢じゃないぜ!
この弱そうなバンパイアの小娘なんて簡単に魔石を頂けるだろうし、広大な土地でも手に入れて王様気分でも味合うか?』
などなと言いながら、サテラに襲いか掛かって来た事があったらしい。
サテラ曰く、
「妾がそんな馬鹿達を真面に相手にすると思うか? スケルトン騎士を大量に呼んでも良かったが、面倒じゃったから、ソウルドレインで一瞬でミイラにして『ポイ!』じゃったよ!」と言っていた。
でも、このAクラスダンジョンの魔物達が落とす魔石は、純度の高いエネルギーを秘めた魔石である事は事実な様で、エルに持たせた魔石の量なら小国規模の土地が買えると言う事は間違いない様で、その魔石を鎧の首の辺りまで目一杯詰め込んだエルが、その魔石の力を最大限に引き出して使っているのだ、ゾンビやスケルトン達の様な悪霊系、死霊系の魔物達相手なら、無双状態で邁進しているのも納得であるとは思ったが、
やはりそう簡単には進む事は出来ない様で、取り敢えずサテラの勧めで、亜空間魔法を使いマイルームを呼び出すと、一旦マイルームに引き篭もる事にした。
その訳は・・・
「相変わらず、不思議な事に目の前に犇くゾンビやスケルトン達は、この階段に侵入して来ようとはしないね?」
「オヌシ、間違っても面白がってゾンビ達にちょっかいを出すでないぞ。
彼奴らにちょっかいを出せば、連中が一斉に大挙してココに押し掛けて来て、妾達は一気に押し潰されてしまうぞ、そして上の階層も全てゾンビやスケルトン達に埋め尽くされてしまうぞ、やるなよ!?
コレは『振り』では無いからな!
ヤレと言う前振りでは無いからな!」と言うサテラの念押しに負けて、マメはサテラとアカネを引き連れてマイルームに篭る事にしたのだ、
マイルームに入ってしまうと、相手からはマメ達が一切見えないからね!
マイルームのソファーセットのテーブルの上に、サテラが好きだと言ったクッキーと紅茶を出して、マメ達は第20階層の状態を見守っていたが、エルはやっと目的の場所まで3分の1を進んだ所だろうか?
サイクプロスでさえもエルを止められ無い事が分かったのか?土魔法が発動して城壁の様な壁が出現したが、アールがエルに付いて行って正解だった様で、アールも遠慮無くエルの鎧の中に大量に詰め込まれた魔石を使い、火炎系爆裂魔法で壁を破壊している。
破壊すると言っても全部を破壊する必要は無い、エルが通れる程度の大きさの穴で良いのだ。
ただまあ相手の数が数だ、流石はダンジョンの無限の魔力とでも言って良いのだろうか?次から次へと湧いて出るスケルトンやゾンビ達に悪戦苦闘しながらも、半日が過ぎた頃には、目的地まであと少しと言う所まで来ていた。
マイルームの中から第20階層の様子を見ていて思ったが、いかに物凄い数のゾンビやスケルトン達の数だったとしても、エル達が実際に戦っているのは、目の前や周りに犇くゾンビやスケルトン達だけの様だった。
この第20階層には、昼夜の境が無いのでは無いだろうか? どんよりとした曇り空がずっと続くなか、マメがサテラに2度目の食事を進めた頃、大きな変化があった。
エル達の目的地付近の場所から大きな雷鳴が何度も響き渡り、空からは稲妻が地上に向かって突き刺さるのも何度か見たが、やがてそれも段々と収束に向かい、空も雲も晴れ、空模様も朝日が上がる前の薄暗い、紫色をした空に変わった。
それと同時に、辺りを埋め尽くしていたゾンビやスケルトン達がもぞもぞと地面の中に潜り込んで行く。
「うん、彼奴も正気に戻ったみたいじゃぞ。」
「そうなの?」
「ああそうじゃ、この空模様の変化と、ゾンビやスケルトン達が土の中に潜っておるじゃろ? これが何よりの証拠じゃん、さて彼奴のところまで行こうかの」とサテラはマイルームを出てサッサと歩いて行く、
マメもサテラの後を追う様に付いて歩くが、周りの風景が一変した事に驚きを隠せないでいた。
それもそうだろう。
先程までゾンビやスケルトン達が隙間なく蠢いていたのに、確認出来る範囲で動いてる影はスケルトン騎士たちが乗っていた馬達が集団で固まってたむろしているぐらいだ、
「何であの馬達は土の中に潜らないの?」
「あの馬達か?どちらかと言うと彼奴らはアンデッド系と言うよりも、リビングアーマーに近い存在かの? まあオヌシの従者のエルと一緒じゃ」と説明してくれるのを興味深く聞いていたが、
「あの馬達に乗って行けたら楽なのにね。」
「そうじゃのう。
まああの馬に乗ろうと思えば乗れぬ事は無いのう。
ほれ、オヌシはティムスキルを持っておろう。」と言っていたが、確かに教会で鑑定して貰った時に、自分のスキル欄の中にテムスキルが有ったとは思うが、今までに馬に乗った事も無ければ、馬に触れた事さえ無い。
マメはふと思い出して、先ほど第19階層で手に入れた手綱みたいな物をサテラに見せた。
「ねえサテラ、さっきの19階層で宝箱からコレが出て来たんだけど、コレが何だか判る?」
「オヌシ、妾を都合の良い鑑定士か何かと勘違いして居らぬか?」
「いや何となくサテラが『鑑定スキル』を持ってるなら、サテラに聞いた方が早いかなって思ったから、ダメかな?」
「ふむ、これは『真珠の綱』と言う物らしいな。
この綱を装着された魔物は、綱の持ち主の意思通りに動くらしいな」
「それで第19階層の首無しスケルトン騎士さんは、自分の愛馬をあんなにも自由に操れたんだ。」
「まあその綱を使ったとしても、やはり相性と言う物が有るからな、地面の上に座り込んで寝ている馬達は多分スケルトンじゃ、その辺をウロチョロと徘徊してる様な奴らがエル達と同じ様なリビングアーマー系の馬だろうな。」
「へ〜そうなんだ、サテラには判るんだ?」
「ああ、スケルトンやゾンビは日が昇ると皆眠るのじゃ。」
「流石、死霊達の王様だね♪」と、そんな話をサテラと話しながら歩いていると、アカネが『ご主人様』と言って左の方を指差す。
そこには白銀の鎧を纏った大きな馬と、その馬に乗り同じ様に白銀の鎧を纏った一際立派なリビングアーマーが佇んでた。
ただ白銀の鎧を纏ったリビングアーマーの様子が少しおかしい様に見えた。
そのリビングアーマーからは全く敵意が感じられ無かったのだ、まるで夢でも見て居るかの様な感じで、そのリビングアーマーがじっとマメの方を見ているのだ、気になったマメは、そのリビングアーマーの方にトコトコと歩いて行き、マメがそのリビングアーマーを下から見上げると、確かにコレまでに見て来た他のリビングアーマー達や、スケルトン騎士達よりも一回り以上も大きい気がした。
マメがそのリビングアーマーに辿り着いたと同時に、辺りからワラワラと白銀のリビングアーマーと同じ様な鎧を着たリビングアーマー達が集まって来る。
すると、黙ってマメを見つめていた白銀の鎧を着たリビングアーマーが、
《名は何と言う?》
「僕の名前はマーク・メタリアーナって言います。」とマメは満面の笑みで丁寧に答える。
《我はヒューイ、ヒューイ・バスクバード、これより世話になる。
『我が王』よ!》と言う突然の宣言に、マメは目を点にしながら馬上の白銀のリビングアーマーを見た後、サテラ達の方に視線を移すと、サテラは溜息を吐きながら苦虫を噛み潰した様な笑みを溢し、アカネはウンウンと頷いてる。
「オヌシの魔力も大概じゃから魔物達が自然とオヌシに惹かれるのは判るが、オヌシ、妾の一族の血を引いて居らぬか?
無意識に魔物に対して魅了の魔法を掛けて居らぬか?
妾から見ると魅了の魔法を周囲に振り撒いている様な気がしてならんぞ?」
「そんな事、僕知らないよ!」
「まあ多分じゃが、オヌシが今手に持っているその真珠の綱の影響かもしれんの?」
「どう言う事?」
「多分じゃが、その真珠の綱がオヌシの魔力で変質したのかも知れんのう?」
「もしかして魔物達を無差別にティムするかも知れないって事?」
「まあ早い話、オヌシがダンジョンの劣化版状態みたいなもんで、相性の良い魔物のを惹きつけたと言う事じゃ」
「いやいや、そんな事は望んで無いから」
「オヌシのステータスを見ると判るが、妾は何となくそれに近い気はするがのう?」
「はっ? 僕、自分で自分のステータスなんか見れないよ?」と言っている間に、結構な数のリビングアーマー達が集まって来ていた。
《姫様。》とヒューイと名乗った白銀の鎧を来たリビングアーマーが、馬上から降りてサテラの前で片膝を着いて頭を下げる。
「確かに妾は過去には『姫』と呼ばれておった事も有るが・・・
して何用じゃ?」
《我の意識が覚醒する直前の事ですが、姫様方が『馬にでも乗って行けたら』と話しておられた様子、馬が入り用なれば配下の者に馬を用意させますが、如何致しましょう》
「馬が用意出来るの?」
《御意に、我が王よ!》と再びヒューイがマメに向かって頭を下げる。




