030 ) いやいやこわいよ
エルの後を歩くアカネの足音が、軽快な音を立てている。
余程、鎧を装備する事が出来たのが嬉しかったのだろう。
エルとの連携も上手くなり、通路に出て来る鎧を着込んでいるスケルトンならエルのフォロー無しでも難なく倒してる。
アカネが貰った鎧には戦闘補正でも掛かっているのか?と思わずにわいられない程に、アカネは順調にスケルトン達を狩っていた。
この第19階層を、ここ迄は順調に進んで来たマメ達だったが、先に進むに連れ、ダンジョンの中の雰囲気が少しづつ変わって来ており、通路の壁面が・・・
うん、何て説明すれば良いのだろうか?煉瓦造りの壁から、上質な石を切り出して作った壁?的な物に変わって来ている。
そう、この前行った王城の壁みたいな感じに変わっている。
ただ、王城の壁と違うのは『お化け屋敷』みたいな雰囲気が濃くなったと言う事、まあアールもエルも、そしてアカネもこの恐ろしげな雰囲気に関しては何も感じてはいない様だけど、マメは正直言ってちょっと怖かった。
此処に来るまでに、散々スケルトン達を相手にして来ているのに、今更何を言っているのだと思うかも知れないけど、
「うん、やっぱり怖いな〜」とマメが声を漏らしたからなのか?目の前に上質で高級感漂う『おどろおとろしげ』な大きな両開きの扉が現れた。
その扉の雰囲気にビビってしまったマメを他所に、アカネが元気に扉を『バン!』と元気に開け放ってしまう。
部屋の中は此れ程と違い、薄暗くてジメっとした湿気がある部屋で、ただそれだけ、スケルトンが待ち構えていたと言う事も無ければ、スケルトン達が湧いて出て来る気配も無い、余りの静けさに気を抜き掛けた時、突然、後ろの扉が『バタン!』と大きな音を立てて閉まった。
「アハハハハハ! 愚かな“ギャ〜〜〜!”」
「ビビった〜!」
「ビビったのは妾じゃ! “ギャ〜〜〜!” さっきから何じゃ!? 妾に“ギャ〜!” だから妾に喋らせえぇ〜〜〜!」
「あ〜怖かった〜 オバケが出たと思って、怖くて思わずエリアヒールを連発しちゃったよ〜」
「何じゃ何じゃ!何じゃ〜〜〜! 何じゃオヌシ達は! いい加減に妾に喋らせろッ!」
「あれ喋れるの? 突然出て来たからてっきり『喋ってる様に思えたのは、僕の幻聴』って思って・・・」
「はあ〜〜〜 疲れる・・・ で、何をしにココに来たのじゃ?」
「いや、普通にダンジョンの奥に行きたいってエルが、エルはコノ鎧で、あとアールとアカネ、そして僕はマメ」
「ううん? 良く分からんが、最近では鎧にも名前を付けるのが流行っておるのか?」
「えっ? エルはエルだけど?」
「話しが分からん奴じゃな! この鎧はオヌシが装備しとる鎧じゃろう?」
「ああ、そう言う事? 僕はエルの中な居るだけ、だから、今喋っている君の姿を見る事が出来ないから、君の声だけで判断してるけど、まだ若い女性の人だよね?」
「ああ妾はピチピチの2200才とチョットじゃ♪」
「いやいや『2200才とチョット』って、まあ良いや、で、君は誰?」
「妾か? 妾は誇り高き吸血鬼一族のサテラじゃ“ギャ〜〜〜〜!”って、さっきから話しが脱線しまくっておらんか?それと、そろそろエリアヒールを掛けるのは辞めぬか? さすがに妾でもちと応えるぞ?」
「いや君が突然高笑いしながら出て来て、僕達を驚かせるから、それに『吸血鬼』って聞こえたから、取り敢えずヒールを掛けて昇天させようか?と・・・」
「いや、妾を昇天させるなど要らん事を、それに驚いとったのは、オヌシだけだと思うぞ? この女の騎士の方は全く驚いた様な気配も無かったぞ?」
「ああ、アカネは自我を持ったばかりだから、まだ『恐怖心』ってのが良く分かって無いかも?」
「いや、また話しが脱線しとらぬか? 取り敢えず妾から襲う事はせんと約束するから、一度落ち着いて話しをせんか?」
「了解、エル僕を出して」
《主人殿よ、相手は吸血鬼、警戒せずに気軽に我から出るのは危険だと我は思うが?》
「大丈夫だよエル、僕の悪ふざけに付き合ってくれるぐらいにはお人好しみたいだし、いざって時は、全力で『メガハイヒール』を掛けるから」
「チョット待とうか? オヌシ、本当に『メガハイヒール』を使えるのか?」
「うん、使えるよ♪ 試しに使ってみようか?」
「いや、辞めよ! 本当にするで無いぞ! 妾にはまだやり残した事があるでのう。
そう簡単には昇天する訳にはいかんのじゃ、まだのう・・・」
「うん、襲われ無い限りはメガハイヒールは使わないと思う?」
「いやいや、『思う?』って何じゃ、思うって・・・ もう良い、こっちに来い、」と連れて来られたのは、この部屋の別室、と言ってもただ部屋の中央に棺がポツンと置かれた殺風景な場所だった。
「まあその辺に適当に座れ、と言っても何も無い部屋じゃがのう」とサテラが寂しそうに自笑する。
「じゃあ僕の部屋に行こうか?」
「僕の部屋じゃと?」
「まあ来れば分かるよ」と言って、マメがマイルームの入口を展開する。
マメはマイルームに入って行くが、サテラはチョット困惑して、
「この黒い膜?の様な物が、マイルームとやらの入口かえ?」
「まあ良いから、許可は出してるから遠慮なく入ってよ」
「ああ、しかし・・・」
「しかしも、カカシも無いよ、良いから入る! アカネ、彼女を入れて!」
「いや、チョット待とうか? うわ〜〜〜!」
いや、チョット焦れたもんだから、サテラが騒ぐのもお構いなしに、アカネにサテラの背中を押させて、強引にマイルームの中に招き入れた。
「凄い、凄い!妾の部屋よりも凄いじゃないか!」とテレサが騒ぐ、
「済まんかった。
余りにも妾の部屋とは違い過ぎてのう。
まあ良い、それはそうとして、オヌシそろそろ鎧を脱がんか?ココはオヌシの部屋じゃろ?その鎧を脱いでリラックスしてはどうだ?」
「そうだね、エル胸の装甲を開けてくれるかい?」と言ってマメが鎧の中から出てくると、
「本当にリビングアーマじゃったんじゃなぁ。
珍しいなぁ。」などとサテラが騒ぐ、
「さて鎧の中の者じゃったオヌシよ、そろそろ妾に挨拶せぬか?」
「あっ、ごめんね。
僕の名前はマーク・メタリアーナ、そして今僕が出て来た鎧はエル、そしてテーブルの上に座って居るのがアール、僕の横に立っているのがアカネだよ」
「うむ、妾は、サテラ・ハイエンドロードじゃ」
「もしかしてロードって付くって事は、やはりサテラは吸血鬼の王族の人って事かな?」
「察しが良いな、その通りじゃ、妾は吸血鬼一族の王の娘じゃった。
まぁ今更王族だと言っても、一族の生き残りはもう妾1人だけしか残っておらんかも知れんしの?なんせ妾がダンジョンに囚われて、早2000年以上経つしのう。」
「そんなに長く?」
「そうか?妾には時間の感覚という物が無いからして良く解らん、この通り不死じゃ、余程の事が無い限り、いや、このダンジョンにいる限りは命を失う事は無い様じゃし、それにこのダンジョンに訪れる馬鹿な冒険者達からも精気を得る事は出来るし、まあ妾の目の前で死んだ冒険者達からもある程度の物は手に入るしのう。」
「やっぱり性器を吸うんだ?」
「待て待て、誰が何日も風呂にも入っておらん様なばっちい冒険者達の性器を誰が吸うんじゃ? 『ソウルドレイン』と言ってな妾はこうやって手を翳すと、その者の性器を吸い取れるんじゃ〜♪」
「待って待って、僕の性器を吸おうとしないでよ。もしもちょっとでも僕に変な事をしようとしたら、本当に『メガハイヒール』だからね!」
「分かっておるわ!妾も久方ぶりにこうして目の前で話ができる相手の性器、イヤイヤ、精気を吸って干からびせようとは思わぬわ!第一、オヌシから振った話しぞ?何で妾が変態扱いを受けねばならぬ?」
「じゃあ良いけど?」
「良いのか?」
「所でサテラは物が食べれるの?」
「妾を何じゃと思おてそんな事を言っておるのじゃ?しかし思えば食べ物を口にすると言う事なんざ、このダンジョンに居ったら滅多に無いからのう。
冒険者が持っていた糞不味い硬くてパサパサしたパンか?糞不味い干し肉ぐらいしか、最近、いやこの2000年は食った事が無いのう・・・」とサテラが悲しそうな顔をするから、
「じゃあ良かったらこれをどうぞ♪」とマメがお気に入りのジャムが乗ったクッキーと、紅茶を空間収納から取り出してサテラの目の前に置いた。
「フゥォ〜〜♪ これは良い、これは美味いな〜♪」と言いながら、サテラは目の前に出されたクッキーをパクパクと平らげてしまい、紅茶も2杯おかわりして飲んだ




