027 ) えほんに
アールと、アスタさんから借りている人形が、頑張って身振り手振りで伝えて来た魔石の回収方法とは、転移門の在る部屋の地面にマイルームの入口を作って、魔石だけをマイルームの入口から入れると言う方法だった。
「う〜ん・・・ どうなんだろう? マイルームの入口って、横にも出来るのかな? 何々? 空間収納は横からでも縦からでも出し入れが出来るって? うん、確かにそうだね! 空間収納も、僕のマイルームも同じ空間魔法だし、特にマイルームは空間魔法の上位魔法の『亜空間魔法』の系統だし、出来ないって決め付けてはダメだよね!」とアールがマメに説明する為に、自分の空間収納に色々な角度で剣を出し入れしている姿を見ながら考える。
「うん分かったよアール、考えるよりやって見ろ! だよね♪」とマメがマイルームの入口を転移門が在る部屋の地面に展開して、
「魔石だけ入っておいでよ!」と言った瞬間、マメのマイルームの中に大量の魔石が落ちて来た。
「い、痛たたた・・・ あ〜 びっくりした〜!」
マメ以外は、鎧姿のエルにモフモフなぬいぐるみのアール、多分だけど全身魔鋼製のアスタさんから借りている人形で、ハッキリ言って少々硬い小石が降って来ても、さして影響は無かったが、マメには大ダメージだったが、偶然?いや、今回は迂闊な事をしたマメの自業自得だけど、とある事に気付いた。
「コレって使えるかも?」と思ったが『先ずは試してから』と自分に言い聞かせて、
「ねえ皆んな、悪いけどこの魔石を一緒にこの麻袋に詰めてくれるかな?」とエル達に麻袋を配って魔石を袋詰めにしていく、
「そうだ、ねえエル、エルは最近魔石を吸収してないけど、魔石は吸収しなくても大丈夫なの? えっ魔石は吸収出来れば吸収したいの? 吸収出来れば吸収しただけ強くなるの? 本当に? 」
マメの問いに、アールとエルだけでは無く、アスタさんから借りている人形までもが、首をカタカタと縦に頷かせている。
「折角だから、この魔石を全部吸収しちゃう?」と言った瞬間、物凄い勢いでマイルームの中に落ちて来た魔石が消えて行く、
取り敢えずマイルームに落ちて来た魔石を全てアール達が吸収したが、アール達は未だ満足出来て無い様なので、転移門の在る部屋を彷徨いてるスケルトン達を、エリアヒールで灰にする事3回、マメのマイルームに追加で魔石を御案内したが、その間マメも遊んでいた訳では無く、ある事を試していた。
「で、君達は一体どうしてこうなっちゃったの?」
マメの悪い癖と言うか?ドワーフの種族的特性なのか?何かに集中すると、その事以外の事を忘れてしまい、話し掛けられても気付かなかったり、周りの状況の変化に気付かなかったりする。
結果、マメ自身はスケルトンを3回だけエリアヒールで魔石にして、魔石をマイルームに招待してたと思っていたが、実際はかなりの回数でスケルトン達を魔石に変えてマイルームに取り込んでいた。
「で、何が有ったらそんな事になるの?」
マメが無意識でスケルトンを魔石に変えてマイルームに御案内、その魔石を延々とアール達が吸収、結果、マメでも肌で解る程にアールとエルのランクがランクアップしていた。
しかも、アスタさんから借りていた人形は、黒かったボディーが『茜色』の赤黒いボディーへと変わり、何と無くだがマメと意思疎通が出来る様になった上に、人形のボディーの体型が女性の様な体型に変化していた。
「あ〜あ、アスタさんに人形を返す時になんて言って返そうか? まあその事は後で考えるとして、アール達は何処か行きたい所が有ったんだよね?」
《主人よ、そんな事より、主人には休息が必要だと我は思うぞ、》
「うん、そう言えば・・・ って! えっ?今のはアール?」
《何を言ってるのだ主人?我の名前は主人が付けくれたのであろうが?》と、
マメの目の前にちょこんと立つアールが、小首を傾げる仕草をする。
「えっ、エル!」
《何用であろか主人殿よ?》
「うわ〜! エルも〜〜〜!? 一体何処? 何で急に喋り出したの〜?」
《何を言ってるのだ主人?我々は最初から喋っておったぞ?これまで我々は主人にも沢山話し掛けていたが、主人には聞こえて無かっただけだ、》
「でもいきなり過ぎない?」
《主人殿よ、我は思うのだが、》
「何だいエル?」
《大量に魔石を吸収した事で、我々の存在が上位種に進化したのでは?》
「う〜ん・・・ そんな事があるの?」
《人種と言う存在は、魔物を退治討伐する事でレベルが上がる》
「そうだね」
《では、我々『魔物』と呼ばれる存在はどうなのだろうか? それに我々は魔物の本能と言うべき思考と、人種として存在していた頃の朧げな記憶らしき物があり、その記憶のお陰で理性的な言動が取れているが、主人の様な『人種』も我々の様な『魔物』も根本的には同じなのではなかろうか?》
「エルが言いたい事は『魔石を吸収してレベルアップしたから、エルとアールが言いたい事を僕に伝える事が出来る様になった』って事で良いのかな?」
《うむ、概ねその様な感じだ主人殿よ》
「今のエルの話しを聞いて思ったんだけど、エル達が『人種として存在していた頃の朧げな記憶らしき物』を持っているのは、多分だけどエルとアールが『レイス』系、人種の死後の『魂』が魔物に変化した『者』だからじゃ無いかな? 良く死んだ人種を土葬すると、怨みや執念、それに心残りの念が大きいとレイスとして蘇って墓場を徘徊するから、ダンジョン以外の場所で人種が死んだら、必ず火葬しろって聞くし・・・」
《主人殿よ、その通りかもしれない、我とアールと呼ばれている存在は、大きな後悔と大きな怨み、そして小さなざ・・・ うん、主人殿の言う通りだな、しかし、我とこのアールには、もう怨む相手すら思い出せぬ様だ》
「エルもアールも『怨む相手』なんか思い出す必要無いよ、よっぽど長命な竜種か?ハイエルフじゃない限り、もう生きて無いと思うよ?」
《主人殿よ、何故その様に考える?》
「ああ、エルのボロボロになってしまっていた鎧を、アイス叔父さん達が見てね『この形式の鎧の関節部分の細工は、伝説の聖魔戦争に出て来る人種の国の騎士の鎧と似てる』って言ってて、もうその国の生き残りは誰一人生きて無いんだって、聖魔戦争が終わった数年後に『バカな王様』が国を食い潰したんだって言い伝えだよ」
《主人殿よ、してその『バカな王様』の名は?》
「確か『スカー』だったかな? 僕が小さい頃に好きだった絵本にも出で来る王様だよ?」とマメはその王様の名前を言った。
その名前を聞いたエルもアールまでもが、その『バカな王様』の名に心当たりでもあったのか?少しの間黙り込んだが、アールが話題を変える様にして、
《主人よ、我と友・・・ 主人がエルと名付けた者は、どうしてもこの先に進んで確かめてみたい事がある。 何者かが我々を呼んでいる気がするのだ》
「下の階層に行きたいって事? 危なく無い?」
《主人殿よ、主人殿は我の中に入って居れば何も危なく無いと思う。 今なら竜種でさえ討伐出来るやもしれぬ》
「竜種!? エルは竜種を討伐した事あるの?」
《主人殿、朧げながらの記憶だが、仲間と竜種を狩っていた様な記憶もある気がするが・・・ 思い出そうとすると消えてしまった・・・ 何と無く解ると言う感覚がある》
「まあ無理して記憶を思い出そうとしなくて良いよ じゃあ兎に角行って見ようか?」とマメがエル達と話しをしている間も、アスタさんから借りている人形はせっせと魔石を吸収し続けていた。




