026 ) まほうしよ
マメの頭には腹案が有った。
万が一、エリアヒールの効果が薄かったりして時間が足りなかった場合、アウグストさん達が転移門で地上に転移出来たら、マメはスキル『マイルーム』を使い、亜空間にある自分のセフティゾーンへと逃げ様と思っていた。
ただ、他の人達に『マイルーム』のスキルを持っている事を知られるのは、余り好ましくない事なのだそうなので黙っていただけで、マメ1人なら『マイルームに逃げ込めば何も問題は無いよね?』とマメがそう考えていると、ダンさんがエルを見ながら、
「羨ましいな! 俺もこんな鎧が欲しいぜ!」と言う。
皆がエルを見ると、エルは相変わらず転移門のある部屋の中でポツンと立って全く身動きをしていない。
そこにただ立っているだけのエルにスケルトン達が群がっていたが、全く歯が立たってない様だ、それでも延々とスケルトン達はエルに襲いかかっていく。
まあそれはアスタに借りている人形もそうなのだが、ちなみに今アールはこの『聖者の盃』の中に避難してきている。
モコモコのぬいぐるみボディーのアールは、スケルトンの攻撃は通用するし、もみくちゃにされてボロボロになると、またマメが後でせっせとアールのモコモコボディーを治してやらないといけないで、アスタさんに借りている人形もポツっと立っているだけだが、やはりこの人形もスケルトンが犇めくこの部屋の中で、涼しげなといっても、表情はわからないが、微動だにせず立っている。
不思議なことにアスタさんから借りている人形には、スケルトン達は攻撃をして来ない。
もしかして仲間だとでも思って居るのだろうか? それとも人形からは生命力が感じられないからだろうか? まあ森で出会う凶暴な魔物達も、森に生えている木や大きな岩なんかに対しては無闇に襲って行か無いし、逆に気にも止めて無いだろうし、スケルトン達も『部屋に置いてあるオブジェ』的な感じで無視しているのかもしれない。
マメがエルの胸部装甲を開けさせて中に入ると、パーティー肉屋の面々が転移門に向かって走る準備を始めた。
段取り的には、マメがエアハイヒールを掛けてスケルトン達が灰になった瞬間、全員が『聖者の盃』の効果範囲から飛び出して転移門に全力で走る。
次に、スキル『ウサギ跳び』を使って一足先に転移門に辿り着き、転移門を操作して起動させ、後は全員が転移門が起動を完了する前迄に『転移サークル』の中に飛び込むだけである。
「さて、そろそろ頼む!」とアウグストの合図と共に、マメが部屋いっぱいにエリアヒールを掛けた。
マメが部屋全体にエリアヒールを掛けると、先程と同じ様に癒しの力を持った光の粒子が部屋に降り注ぎ、次々とスケルトン達が灰になって崩れ落ちて行く、それを確認してアウグストが鋭く『行くぞ!』と声を掛けた瞬間、全員が一斉に転移門に向かって走り始めた。
そして、全員が8カウント以内に転移門に到着して、転移門が発するサークル内に辿り着けたと思った瞬間、案の定、ダンさんがサークル内に辿り着く手前で、地面に大量に散らばる魔石に足を取られてひっくり返ってしまった。
「お父さん!」とシュリの悲鳴が響く中、マメが中に入っているエルが駆け寄り、うつ伏せに倒れたダンの襟首を掴むと、強引にダンを転移門のサークルの光の中に放り込んだ、その瞬間、パーティーメンバー肉屋の皆んなは、地上に向かって転送されて消えていった。
ポツンとスケルトンが犇めく部屋の中に取り残されたマメ達、しかしマメは呑気な声で、
「さて、どうしようか? とりあえずマイルームに入ってゆっくりと作戦を立てよう、流石に僕も魔力をかなり消費したし、とりあえずマイルームで一休みしよう。」と言って、スケルトンをマイルームに一緒に入れない為にも、念の為にエリアヒールをもう一度掛けて、エルの中に入ったマメが右手を正面に翳すと、一緒に持ち上がったエルの右手の正面にマイルームの入り口がぽっかりと開いた。
マイルームにマメ達が入ると続いてアールも入って来たが、『もしかしたらスケルトンも入って来れるの?』と興味が有ったので、マメはマイルームの入口を閉じるのを少し待って見たが、再び魔法陣から這い出て来たスケルトンがマイルームに侵入して来る様子も無かった。
次に、目の前に居たスケルトンに向かって『入っておいでよ!』と言ってみると、呼ばれたスケルトンはそこで初めてマイルームの入口に気付いたのか?ゆっくりとした動作でマイルームに入って来る。
しかも、マイルームに入って来たスケルトンには凶暴性を一切感じる事も無く、ただ静かにマイルームの中で立ち尽くしているだけだった。
しかもエルの鎧の中から出てたマメが、スケルトンの前に立っても、スケルトンは一切マメを襲う素振りも見せず、ただ静かに立ち尽くすだけだった。
「ありがとう。 もう出て行って良いよ」とマメが言うと、スケルトンは首をカクンと縦に頷かせると、そのまま素直にマメのマイルームから出て行った。
その頃、地上に出たパーティー肉屋のメンバーは、大慌てで冒険者ギルドに向かって走っていた。
勿論、1人残して来たマメの救出を依頼するのと、マメの父親であるギプスに事と次第の顛末を知らせる為である。
そしてマメの方はと言うと、取り敢えずはゆっくり出来る時間が出来たと、マイルームに設置したソファーセットのテーブルの上に紅茶とクッキーを置き、先程は読む事が出来なかった回復魔法の魔法書を開くと、
「エリアヒーを使ったのもこれで3回目、でも1回目はエリアヒールと言うよりも空間にヒールを満たして解放しただけなんだが、この方法も1種のエリアヒールで間違いは無いのかな? ただ、この魔法の書によると、マメが今回覚えたエリアヒールと、新たに毒や病気を癒すキュア魔法も覚えた様だ、しかも回復魔法『極み』の方に書いてあるハイヒールは、怪我も病気も関係なく、完全なる回復再生魔法ということらしい。
まあそれ相応に魔力の消費も激しいらしいが、この回復魔法書『真』には、魔力量を増加させる訓練方法と、魔力の効率的な活用方法、そして魔力の回復を自然回復や、もの凄く美味しくない魔力回復薬に頼らずに、外部から上手く体内に取り入れる方法なども書いてあったので、取り敢えずマメは回復魔法書『真』に記載されていた『ダンジョン内での瞑想』を試して見ようと思ったが、開けたままにしていたマイルームの入口から見える光景を見て、
「瞑想する場所も選ばないとな〜 そうだアールとエル、このダンジョンから出たら、また初心者向けダンジョンに行きたいんだけど付き合ってね♪ でも、もしかしたら初心者向けダンジョンも『改変』が起きてたりするのかな?」
『だいしょうぶだから またあそびにおいでよ』と、またダンジョンの神様らしき人の声が聞こえたので、
「ありがとうございますダンジョンの神様、帰ったら遊びに行きますね♪」と答えておいた。
ダンジョンの第15階層に在る転移門が設置されている大きな部屋に、マイルームへの入口を開けて、その中に入って休んでいたマメは、ソファーに寝転び回復魔法書を読んでいる間に寝落ちしてしまっていた様で、マメの体の上で飛び跳ねてたアールに起こされた。
マメは知らないうちに、かなりの時間爆睡していた様で、眠っている間に魔力は自然回復で完全に回復している様だし、体調の方も問題無い様だ、
マメは、自分のお腹から『グゥ〜!』と鳴る音を聞いて、
「お腹が空いた・・・」と言って、ソファーセットのテーブルの上に、空間収納から大きなお肉がゴロリと入ったシチューと、黒パンを取り出して食べ始めた。
その間、アールはマメに何かを伝えたい様子ではあったが、マメが食事している間は大人しく待っていたが、マメが食事を終えて、食器を空間収納に仕舞うと、早く出掛けようとマメの体を押し始めた。
「待ってよアール、一体何処に行こうとしてるの?」とマメが問い掛けると、珍しくエルまでがマメに出掛けようと催促して来る。
少し迷いはしたが、マメには先に確認しないといけない事がある。
第15階層の転移門が設置してある大きな部屋の地面に落ちている大量の赤い魔石を、出来れば回収したいと思っていたのだ、
「アールにエル、出掛けるのは良いけど、あの部屋の地面に落ちている沢山の魔石を回収してから出掛けようよ! でもどうやって魔石を回収しようか?」と頭を悩ませていると、アールが身振り手振りで良い案が浮かんだと言って来たが、それ以前にアスタから借りている人形が、アールの意思で遠隔操作されて動いている事の方に驚いてしまい、アールが一生懸命に伝えようとしている事が全く判ら無かったが、時間を掛けて如何にか理解する事が出来た。
アールが閃いた魔石の回収方法とは、




