023 ) またあれが
最初は、エルの怒涛な攻撃に唖然としていたパーティー肉屋の面々とマメだったが、そのエルの挙動が可笑しくて、吹き出してしまったのは、エルには内緒にしておこうと思う。
皆んながエルの猛攻に唖然としている隙に、アールもアスタさんから借りている人形を操ってゾンビが大勢いる大広間に入って行く、アールはエルとは違ってその重厚で力強い鎧と、大きな大剣を使っての攻撃ではなく、アイス叔父さんに打ってもらった細身の長剣を使って、ゾンビ達を細切れにしていく。
その優美な剣捌きは、一流の剣士の如く、やはりアールも優秀な騎士だったんだなとマメはアールを見直す。
そんなアールとエルの猛進撃に出遅れまいと、パーティー肉屋の面々もその戦いに突入していくのだが、いかんせんゾンビの数が一向に減らない気がする。
それもそうだろう。
大広間の奥にある鏡から、次から次へとゾンビたちが出てくるのだ。
一度、アウグストさんがその鏡を壊そうと離れた場所からナイフを投げてみたが、当然届く訳もない。
ゾンビ達が鏡からワラワラと出て来ているのでナイフが鏡に届く前に、途中でゾンビに当たってしまうので、どう頑張っても鏡に届く事はないだろう。
また、例え弓があったとしても、このゾンビ相手の超接近戦状態の状態では、多分、弓を引く事も儘ならない事だろうとマメは思う。
マメも周りのゾンビ達にヒールを掛けは、ボロボロの灰のようにはしているが、いかんせん数が多すぎる。
「ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール〜〜〜!」と周りにヒールを掛け続けているが、とうとうマメも肩で息をするような状態になってきたが、ただ幸いな事に、アールとエルがマメの周囲をしっかりとガードしているおかげで、マメの安全は辛うじて保たれていた。
「どうするリーダー、このままじゃジリ貧だぜ。」
「おお判っているさ! まあ心配するな。今打開策を考えてるんだ。」
だが、その打開策もなかなかには実行出来なかった。
何せ部屋の奥にある鏡からは絶え間なくゾンビが出てきているので、一向に鏡に向かって進むことができないのであった。
『さぁ、がんばれ』
と、またあの声が聞こえた気がした。
マメが所有する亜空間の中がヒール魔法で満たされるのをイメージして、この大広間の上でその空間を解放すると、大広間の上部に真っ黒な亜空間の口がポッカリと空いたと思ったら、周囲が明るくなってヒール魔法の光が降り注いできた。
その光を浴びたゾンビたちは、次々と灰になってさらさらと消えていく。
それまで身の回りに集まって来るゾンビに悪戦していたアウグストが、ここぞとばかりに手に持った大剣を、大広間の壁に設置された鏡に向かって投げつけた。
パリン !とガラスが砕け散る音がして、鏡は粉々に砕け散った後は、もうゾンビが這い出して来る様子も無い。
後は鏡が砕き散った場所に金の宝箱がポツンと残るだけだった。
「金の宝箱だ〜」とシュリ大騒ぎ。
アウグストさんも、ダンさんも『金の宝箱を目にするのは久しぶりだ。』という。
しかし、改変が起きたと言う事は、このダンジョンのランクがBランクに上がったと解釈して良いのだろうか?まぁそうでなくては、金の宝箱なんぞ出てくることもないだろうが?・・・
「さて、今回の立役者であるマーク君、金の宝箱の蓋を開けてみるかい?」
「僕が来て良いんですか?」
「ああ、宝箱を開けるだけなら問題はないさ。
後は宝箱の中に入っている物が何か?と言う事たな、それに宝箱に入ってる物が出て来ても、それが全てマーク君の物となるとは限らないんだ、この中の誰かに合う物は必ず出て来るが、それが私かもしれないし、ダンかもしれない、シュリかもしれない、マーク君、それはダンジョンの神のみぞ知るっていうことだな。」
「ダンジョンの神様ですか?」
「このダンジョンの神は、事実を公平に見ている所があってな、仲間を落とし入れ去たり、ダンジョンの中で何か悪事を働いていると、必ずダンジョンの神様の祝福を受けるのさ。 まぁ祝福といっても、実際は『祝福』と書いて『呪い』と読むけどな。」
アウグストさんに促されてマメがそっと金の宝箱を開けてみると、小さなナイフ、スキルブック、メイスに、魔法書が入っていた。
まずアウグストさんがナイフを手に取ってみたが、持てなかった。
ナイフはアウグストさんの持ち物ということではなかったらしい。
次にスキルブック。これはマメにもスキルブックに書いてある文字が読めなかった。
そしてアウグストさんが全員の顔見回して、『誰かこの文字が読めるか?』と聞くと、意外にもアウグストさんの店の店員のカザンが、
「僕、読めます。これ『スキル・ウサギ跳び』って書いてありますけど、どういう事なんでしょうか?」
「俺も聞いた事が無いスキルだな〜?」とダンさん、
「取り敢えず、スキルブックを読んでスキルを確認してみろよ!」と言う事でカザンがスキルブックを開いて読み込んで、皆んなの前でスキルを使って見せた。
このスキルブック、跳躍力が数倍にもなるスキルで、その場でぴょんと軽く飛び上がっただけで、大広間の天井に頭を打ち付けて落ちてきて、頭を抑えながら転げまわっていた。
その様子を見て皆んなが大笑いしているが、この事さえ気を付けれ、ある意味では罠だらけの通路に入った時など、ぴょんと罠が在る区間を軽く飛び越えてしまえる様な物ではないかとマメは思う。
まあこれは、おとぎ話に聞く八艘飛びを得意としたとある冒険者の話ではあるが、それに近い物ではないのだろうか?と思う。
次にアウグストさんは、メイスを金の宝箱から持ち出して軽々とて振って見せると、次にダンさんに手渡すが、ダンさんは『何だよ誰がこんな重たいメイスを軽々と振り回せるかよ!コレはお前専用だな!』とか何とか文句を言っているダンさんからアウグストさんがメイスを受け取ると、またブンブンと物凄い風切り音を立てて振り回して見せていた。
やはりアウグストさんには軽かった様だ、シュリさんもガザンさんも、もちろん僕も重たいメイスなんか持つのは嫌なので、やはりこのメイスはアウグストさんにと言う事なんだろう。
次にナイフだが、これも順番に皆が持ってみた。
マメも手に持ってみたがしっくりとこない、最後にシュリさんが持つと『あら?これは手に馴染むわ。いろいろと使い勝手も良さそうだし』ということで、満場一致でシュリさんが貰う事になった。
さて、最後の魔法書だが、
「じゃあお前さんには悪いが、この魔法書は俺かな?」と言ってダンさんが手に取ったが、青い魔法書に書かれた黒文字で書かれた文字をダンさんには読む事が出来なかった様で『ムムム?』と唸っていた。
「おい、そんな意地悪をしないで、お前読めてないんだろ。さっさとマーク君に渡してやれよ!」とアウグストさんに言われたダンさん、渋々と青い魔法書をマメに渡していた。
マメが魔法書を受け取ると、回復魔法と書いてあった。
「ねえマーク君、これはなんて書いてあるの?」
「回復魔法って書いてあるよ。シュリさん」
「でもマーク君って回復魔法使えたよね?」
「うん、回復魔法が使えるのになんで回復魔法の魔法書なんでだろう?僕が教えてもらった回復魔法は初歩魔法だからかな?それもまだまだ初級の応用編らしいよ。」
「え〜!それであの威力は凄いわね〜、マーク君の魔力量ってかなり有るって言う事よね。」
「どうなんだろう? でもギルドに所属している魔法使いさんは、僕に魔法の勉強をするように一生懸命進めてたから、普通の人よりは多く持ってるんじゃないかな?とは思うけどね。」
今回、金の宝箱から出て来たスキルブックも魔法書も共に、本の表紙が青い表紙だった事も有ったのか?魔法書事態にそんなに価値のあるものではないと思っていたのか?パーティー肉屋の面々はマメが回復魔法の魔法書を貰っても何も言う人は居なかった。




