021 ) かいへんがおきた
広間に居た最後のミノタリウスに止めを刺したマメを、再び目眩が襲う。
「えっ? 間違えて無かったら、この広間で2度目のレベルアップだよね?」と首を傾げる。
そんなマメの様子を見て、『何も問題は無い!』と言う様にマメの肩を叩くアールが操る人形、その人形の肩にちょこんと座るアールをガシっと掴むと、広間の壁に向かって力一杯に投げ付けるエル、エルは未だにマメが死に掛けた事が許せない様で、アールのその大雑把な行動が気に入らないのか? アールが何かをする度に、アールを壁に向かって投げ付けていた。
しかし、この広間で2度の目眩が勘違いで無いとしたら、マメはレベル25までレベルアップした事になる。
マメが聞いていたレベルアップの速度と少し違う気がするのだ、大体の冒険者達はこのEランクダンジョンを攻略した後のレベルが20前後だと聞いている。
本来なら、このEランクダンジョンは、Eランクの冒険者達がパーティーを組んで探索するのが当たり前の場所、しかもこのEランクダンジョンは通称『肉ダンジョン』と呼ばれているダンジョンで、ソロでは無くパーティーで効率良くオークやミノタリウスを狩って回り、特にオークやミノタリウスが出て来る10階層から15階層を周回して回っているパーティーもいると聞いている。
そんなダンジョンだから、レベルアップに必要な経験値は余り得られないだろうと思っていたが、どうもそれはマメの勘違いだったのかも知れない。
今回、マメがこの『肉ダンジョン』と呼ばれているダンジョンを攻略しようと思ったのは、勿論『肉』も目的の一つではあったが、他のダンジョンとは違い、このダンジョンは低階層ではゴブリン、中階層はオークとミノタリウス、そして更に下の階層に降るとゾンビにスケルトンなどの人型の魔物達が多く出没するダンジョンだからだ、まあ多くの冒険者達はゾンビやスケルトンには興味は無い者が多いので、15階層の転移門で地上に出てそのまま帰るか?再び15階層までオークとミノタリウスの肉を求めて降って来るか?なのだが、
マメは、今回のダンジョン攻略に関しては『対人戦』を仮定したダンジョン攻略の積もりで来ていたのだ、それに、マメにとっては『自分の戦闘スタイル』を模索するにはもってこいのダンジョンだと思っていたが、初っ端から空間収納から取り出した魔鋼杭を魔物の頭上に落として、しかも重力魔法で威力を底上げする様な楽な戦い方を覚えてしまった・・・
まあ今回のミノタリウス達との戦いでは、マメが安易に考えた戦い方は通用しなかったし、良い教訓にもなった。
この空間収納から重たい物を取り出して魔物の頭上に落とす戦い方なんて、多くの冒険者達が思い付く戦い方なんだろうし、まだまだマメ程度の魔力量しかない魔法使いには荷が勝ち過ぎるのだろ・・・ あれ〜?
『僕は魔法使いになろうとしてるの?』とマメは自分の思考の中で、自分自身に対する疑問を見付けてしまう。
『僕に合った戦い方って何だろう?』
まあこの答えの糸口を見付ける事が、このダンジョンを攻略して行ってる最中のマメの課題でもあるのだろう。
『悩めよ しょうねん』
と、耳元で誰かに言われた気がして、マメは思考の泉から顔をだした。
そんな色々と考え込んでいたマメに、アールとエルが、ミノタリウスからのドロップした品を差し出して来た。
今回のミノタリウスのドロップ品は、
ミノタリウスの角 X 1
ミノタリウスの肉 X 1
ミノタリウスの魔石 X 1
ミノタリウスの剣鉈 X 1 ・・・剣鉈?
いや、ミノタリウスの剣鉈って・・・
本当は、剣鉈と言うよりも、エルが接近戦で使っているファルシオンに近い物なのかも知れなしが、マメがどう見てもさっきまで使っていた剣鉈と比べて、刀身は幾分か長くて、刃幅も広く、剣自体も肉厚にはなってはいるが、マメが約3年間愛用して来た剣鉈にそっくりだった。
マメは、空間収納からレア種のミノタリウスに折られてしまった剣鉈を取り出すと、暫く見比べていたが、それまで愛用していた剣鉈を仕舞うと、ミノタリウスの剣鉈を腰に差した。
その後、第12階層に下りたマメは、空間収納から取り出した魔鋼杭をミノタリウス達の頭上に落とす様な戦い方をするのでは無く、広い通路や広い空間では刃長の長い両手剣を、狭い場所や接近戦になれば刃長の短いミノタリウスの剣鉈をと、それぞれを使い分けて進み、第13階層にある『セーフティーゾーン』に来ていた。
マメは、第13階層では『マイルーム』を使わずに、セーフティーゾーンで休息を取っている他の冒険者達パーティーと同じ様にして休んでいた。
アンナにダンジョンでの注意点として、無闇に人前で『マイルーム』を使わない様にと言われていた。
そして、空間収納からも『温かい食事』は出さない様にとも言われていたので、アンナに持たせて貰ったシチューを取り出して、土魔法ては無く、その辺に落ちている石を積んでその場所で火を熾して鍋に入ったシチューを温めていた。
マメがシチューを食べ終わり、少しだけ仮眠を取ろうと横になると、セーフティーゾーンに1人の魔法使いらしき格好をした人物が入って来たが、その人物は少しの間セーフティーゾーンの中を誰かを探す様に徘徊していたが、何かを諦めた様にセーフティーゾーンを出て行った。
ただ、その後、このEクラスダンジョンでは考えられない出来事が起こってしまった。
ダンジョンの改変・・・ と言う出来事が、
本来なら、ダンジョンの改変など珍しい事では無い、但し、Bクラス以上のダンジョンならばの話しである。
先ず異変に気付いたのが、このダンジョンで『肉』の収集を目的としたパーティーで、パーティー名も『肉屋』のリーダーだった。
「ちょっと君、少し良いかな?」
「なんでしょうか?」
「君って、王都の冒険者ギルドのギルドマスターの息子さんだよね?」
「?・・・」
「ああ悪い、ダンジョン内でのルール違反なのは重々承知はしている。
しかし、今はそんな事を言っていられる状況では無い様なんだ、君は何らかの方法で地上に居る誰か?と連絡を取る方法を持って無いだろうか?」
「・・・・・?」
「ああ、突然こんな事を聞かれても、素性の判らない相手には答えられないよね? 私は、パーティー名『肉屋』のリーダーで、Bランク冒険者のアウグストと言う。」と、50才ぐらいに見える冒険者が声を掛けて来た。
回りを良く見ると、パーティー肉屋のメンバーが、他のパーティーに声を掛けに行っているのが見える。
「良いか、良く聞いてくれ、信じられない事だが、このダンジョンがどうも『改変』を起こした様なんだ、私もBランク冒険者だ、何度かBランクダンジョンに潜って『改変』は経験してはいるが、どうも様子がおかしい・・・ 私のスキル『直感』がそう告げているんだ、どうか地上と連絡を取る方法があるなら協力して欲しい。」と、アウグストと名乗った冒険者が言う。
実は、マメはこのアウグストと言う人物の事は面識は無いが知っている。
Bランク冒険者としてでは無く、美味しいステーキを格安で食べさせてくれる『レストランテ・アウグスト』のオーナーシェフとしてだけど、そしてマメが好きな店の一つで、見習い冒険者の頃は自分自身へのご褒美として、そして今でも月に数回は美味しいステーキを食べにこの店にギプス父さん、エレナ母さんと一緒に通っているので、アウグストさんもマメの事には気付いて声を掛けてくれたのだろう。
「アウグストさん、お声掛けありがとうございます。
しかし残念ながら僕はダンジョンの外と連絡を取れる様な手段は持っていません。」
「そうか・・・ てっきりギプスさんなら何かの連絡手段を持たせているかと期待していたが・・・ それでマーク君」
「僕の名前をご存知だったのですか?」
「私の娘が、君が作る人形のファンでね、それよりも出来れば君も我々と一緒に行動しないか? 私のパーティーメンバーが声を掛けに行ったパーティーは、早々にこのセーフティーゾーンを出て行った様だし、このセーフティーゾーンも『改変』が起こった以上、いつまでも安全な場所だとは言い辛いし、君は無謀にもソロでダンジョンに潜っている様だし、何より娘と同じ年頃の君を放置して行くのも忍び無いからね、」
そう言われたマメがセーフティーゾーンを見回すと、確かにマメと肉屋のパーティーメンバーしかこの場には残って居なかった。
「アール、エル、出て来て! それとエルはフル装備でお願い!」とマメが言うと、アールとエルがマメの亜空間魔法『マイルーム』から出て来て、更にエルは例の近衛騎士仕様のフル装備に装備を換装して立っていた。
「ああ、マーク君がソロでこのダンジョンに潜っていた理由が、何と無く分かった気がするよ」とアウグスト、
「わぁ〜、アールちゃんだ〜♪ あっ、私はシュリよ」とは、ソーセージ屋の店員兼看板娘のシュリさん、
「うむ、中々強そうな重騎士様だな! 私はアウグストの昔からの知り合いで、元Bランク冒険者のダンだ、」とは、ソーセージ屋の主人のダンさん、
「そうだね、オーナーが言う通りなら少しでも戦力が欲しい所だから、強そうな重騎士様の登場は嬉しいかな? 僕はカザンだよ宜しく、」とは、アウグストさんの所の従業員さんのカザンさんだった。
「マークです。 足手纏いになるかも知れませんが、宜しくお願いします。」とマメ、
「各自、自己紹介は済んだ様だし、そろそろココを出発しよう! 無事に王都に帰れたら、
俺の自慢のスペシャルなステーキを、腹がいっぱいになるまで食べさせてやるぜ! 」
「「「「お〜〜〜!」」」」
と、アウグストさんの掛け声で、マメと肉屋パーティーメンバーの一行はセーフティーゾーンから出たが、目の前には3体のゾンビが既にマメ達を待ち構えていた。
「やはり『改変が起こった。』と言う事で間違い無い様だ・・・」




