015 ) 相変わらず
「うわ〜! これが、あの伝説になった『勇者マサヒロ』様が考案したと言われる『オムライス』ですか?」
「多分だけどね?」
「あら? 何故『多分』なのですか? え〜っと『マメちゃん様?』・・・ ウン! 無理よ〜!」
「ん、どうしたの?」
「聞いてよマメちゃん、私の元乳母で、今はこの後宮の総メイド長のマーマがね!」
「うん」
「私が湯浴みしている最中に、お風呂場まで来てね、私に『イリスティーナ様、マーマは日頃からイリスティーナ様に、お姫様らしい御振る舞いと、御言葉使いをと言って来ましたが、この後、メタリアーナ国のマーク・フォン・メタリアーナ様と一緒にお食事をされるのですよね? イリスティーナ様が幼い頃からこのマーマが、イリスティーナ様が社交界に出られても恥ずかしい思いをしなくても良い様にと、一生懸命に礼儀作法と御言葉使いの御指導をさせて頂きました。
本日は、これ迄イリスティーナ様が学ばれて来た事を実践する良い機会です。
マーマは期待していますねイリスティーナ様、』なんて言うのよ!
そりゃあ私だって猫を被って、お淑やかなお姫様を演じる自信はあるけど、無理、マメちゃんに対しては何故か無理! 私! マメちゃんとは対等なお友達になりたいの!」とマメ達の食事の給仕をする為に、ドアの前に並んで立つ、それぞれ違ったタイプのエプロンを着けている2人のメイドさんの内、柔らかい笑顔でマメ達を見ていた金髪の御婦人の方を見て言う。
同じ様にマメ達の給仕の補助役としてドアの前に立っていた、もう一人のメイドさんは、長い黒髪を三つ編みにして、その先を真っ赤な丸い大きな装具で留めているメイドさんだった。
マメは着席していたテーブルから席を立つと、
「初めましてマーマさん、私はマーク・フォン・メタリアーナです。
先ほどイリスティーナ様が言っておられましたが、私、いえ僕もイリスとは、礼儀作法も言葉使いも気にしないで自由に付き合える様な、お友達になりたいと思っています。
どうか、私達だけの時には『礼儀作法』などに関しては、少々お目溢しして頂けると嬉しいです。」とニッコリと笑う。
「マーク様からその様に頼まれてしまっては・・・
そうですね、マーマは今から『休息時間』に入ります。
そして、この方とご一緒にソコのテーブルでお茶でもしていますので、イリスちゃんはお友達とご一緒に『お食事』をしてて下さいな、」と、横に立っていたアンナの手を引いて、王家の家族がプライベートで過ごす際に使うリビングダイニングに備え付けられたソファーセットの所に行き、本当に『お茶』を飲む支度を始めてしまう。
そして、その様子を嬉しそうにして見ていたメマとイリスは、先程の『勇者マサヒロ様のオムライス』の話を楽しそうに話しながら、マメが作った『オムライス』を食べ始めた。
それを見ていたアンナが、マーマに向かって小さな声で、
「策士ですね〜」と言うとマーマが、
「あら!バレてましたの? でも貴方も反対していませんでたわよね?」と小さく笑う。
「私も、マーク様には気の置けないお友達は必要だと思っていたのです。
ですので反対はしませんでした。」とアンナも微笑み返した。
このアンナ、実はバルバドスが弟のギプスから『兄貴の曾孫らしき子供が現れた!』と、知らせを受けた約3年ほど前から、バルバドスの密命を受けて、マメの『影護衛』として陰日向に見守って来たのだった。
そしてアンナはこの日以降、バルバドス大王に願い出て正式にマメの『専属メイド』となったのであった。
メマとイリスが楽しい食事の時間を過ごし、その後は4人で一緒にお茶を飲みながら、イリスのお城での不満話しから始まり、逆にマーマがイリスの日常生活に関する失敗談を暴露したり、マメが冒険者見習い期間中に体験した体験談を、手振り身振りを加えながら面白可笑しく、冗談を交えながら話し、そこにアンナは『自分がマメの影護衛』として、この3年近くマメを見て来た事を暴露したが、イリスもマーマも、
「そうなの?アンナはマメちゃんの影護衛だったのね、でも王族なら影護衛が1人2人は付いてて当然よね?」ってな感じで別段に気にしている様子も無く、アンナが見守って来た3年で知った『マメの見習い冒険者期間中の本当に恥ずかしい話し』の方に興味深々の様で、アンナが話すマメの話しに聞き入っていた。
王族が利用するプライベートな場所の、更に奥まった場所にある『とある密室の中』では、夜も遅い時間になって来ても未だに大人達の話し合いは終わる様子も無く、マメもイリスの口からも度々欠伸が出て来る様になり、それを見兼ねたマーマが、
「イリス様、今日は色々と有りましたので、さぞお疲れになった事でしよう。
そろそろお休みになられた方がよろしいかと存じます。
マーマ様も、お客様がお越しになられた際にご利用して頂いています貴賓室へと、御案内させて頂きますので、是非今夜はそちらの方でごゆっくりとお休み下さいませ。」とお仕事モードでイリスを寝室へと案内した後、イリスの寝る前の身支度は他のメイド達に任せて、マメをマーマ自身が貴賓室へと案内してくれた。
貴賓室の中まで当然の様に付いて来たアンナは、当然の様に色々とマメの世話を細々と焼き始める。
マメがマーマに貴賓室へと案内された際にも、
「マーク様、此方に控える2名のメイド達は、今宵、この貴賓室にお泊りになられるマーク様の専属メイドとなります。
御用向きの件が御座いますれば・・・」
「お気遣いありがとうございますマーマ様、しかしこのお心遣いに関しましては、このアンナひとりで充分ですので・・・」と丁寧にお断りしていた。
そしてアンナが、
「マーク様、お休み前に是非、お風呂に入ってからお休み下さい。
その間にアンナは、マーク様がグッスリとお休み頂ける様に色々と準備を整えておきますので・・・」と貴賓室に備え付けられている浴室へと、アンナはマメを連れて行く、
そのままアンナは、マメを貴賓室の広い浴室の中に設置された脱衣場に連れて行き、マメの服を全部脱がすと、先ずは洗い場でマメを頭の先から足の爪先まで全身を隅々まで洗い始める。
先程まで、アンナは確かにエプロンを付けたメイド姿そのままだったのだが、今、マメの頭を背後から抱き抱えたまま洗っているアンナは、一糸纏わぬ全裸姿なのだ、そしてマメにはいつの間にアンナがメイド服を脱いだのか?すら全く分からなかった。
アンナに石鹸で全身を隈なく洗われて泡まみれになったマメを、やはりアンナは最後まで背後からマメを抱き抱えたまま離さない。
マメを洗い終わったアンナは、やはりマメを抱き抱えたまま一緒に広く深い浴槽に身を沈めた。
「ねえアンナさん・・・」と、アンナの大きなその胸の谷間に後頭部を預けたまま、アンナの顔を見上げて声を掛けた。
「私の事はアンナとお呼び下さいマーク様、」
「アンナさ・・・」
「マーク様・・・ 『アンナ』です。」
「アンナ、本当に今まで影から僕を見てたの?」
「ハイ、マーク様」
「何もかも?」
「何もかも全てです。」
「僕が起きて寝るまでを全部?」
「いえ、違います。」
「えっ?」
「マーク様が起きて寝る迄もですが、更に寝てから起きる迄もです!」
「え〜っ!??? アンナはいつ寝てるの?いつ食事したり、いつお風呂に入ったりしてるの?」
「乙女の秘密です!」と湯船の中で自分の膝の上にマメを座らせたまま『エッヘン!』と胸を張る。
「・・・・・」
マメはアンナの膝の上でモゾモゾと体の向きを、お互いが向き合う様に体勢を入れ替えると、アンナの目を下から『ジィ〜〜〜〜』っと、上目遣いで見つめる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ハァ〜〜〜 仕方のない方ですねぇ、ご主人様は・・・・」
暫し、お互いに無言で見つめ合っていたが、どうやらマメに軍配があがった様で、しかも最初はマーク様と呼んでいたアンナが、マメの事をこの時『ご主人様』と呼んだのだ、
「マーク様、良く見ていて下さいね!」とアンナが言うと、マメのお尻の下に感じていたアンナの太腿の感触が消えて、目の前に先程までマメと一緒に裸になって浴槽のお湯に浸かっていた筈のアンナが、メイド服をキチンと着こなし、しかも濡れていたアンナの黒髪も、完全に乾かされた状態で綺麗に三つ編みに編まれてた姿で、湯船の外に立っていた。
「え〜〜〜!?・・・」と驚くマメに、アンナが『エヘッ』と可愛く笑って小首を傾げた。
マメがそんなに驚いた事が嬉しかったのだろう。
しかも今のアンナは、マメのお風呂の世話をする為に、愛用の縁無しの丸メガネを掛けていないので、お堅いイメージが無くなり『柔らかい優しいお姉さん』的な雰囲気になってているアンナの笑顔は、かなり破壊力がある笑顔だった。
そして今度はマメの背後からアンナの、
「マーク様、かなり驚かれていた御様子ですね、」と言う声がしたかと思ったら、また背後から全裸になったアンナに抱き抱えられて、一緒に湯船の中に浸かる。
「ねぇアンナ、どうなってるの?」
「マーク様、アンナは何も難しい事はしておりません、マーク様は空間魔法を習得されていますよね?」
「うん、この前の初心者ダンジョンを攻略した時の『金の宝箱』で出て来た。」
「それも『極み』でしたわよねマーク様、」
マメは一瞬『何で知っているの?』と思ったが、アンナは『この3年間マーク様を見てました!』と言っていたのを思い出した。
「うん、僕が習得したのは『極み』だね、」
「はい、私も空間魔法の『極み』を習得しています。
では、マーク様はスキル『プライベート空間』はご存知ですか?」
「スキル『プライベート空間』?」
「はい、多くの上級冒険者達が欲しがるスキルですが、このスキルには派生したスキルがあり、それはスキル『マイルーム』から始まり、スキル『キッチン』、スキル『バスルーム』、そして多くの女性冒険者が羨むスキル『トイレット』、まあ一度ダンジョンを経験したマーク様にはお分かりかとは思いますが、冒険者に出て一番困るのは、やはりおトイレ事情ですよね?」
「うん、僕もダンジョンは始めての経験だったけど、確かにダンジョンの中ではトイレが一番困るよね?」
「でも、それらのスキルは『空間魔法系の宝具』を手に入れる事で補う事が出来ますので、お金持ちな上位冒険者になって来ると、わざわざ出現確率の低い『金の宝箱』を求めて、危険なダンジョンの中を探して回る必要も無くなります。」
「うん、そのスキルがどうしてアンナが消えた瞬間に、別の場所に出て来る事が出来る話しに繋がるの?」
「ええマーク様、このスキルはその場で別の空間に出入り出来るだけのスキルです。
しかし、このスキルと別のスキルを組み合わせる事で、別の効果が出て来るのですよマーク様、アンナは空間魔法『極み』と、スキル『マイルーム』の亜種であるスキル『マイハウス』を使って、無理なくマーク様から一瞬たりとも目を離さずに見ておりました。
だからアンナは、こうしてマーク様を直に感じて、直にお話し出来る事が嬉しくて、幸せなのです。」とマメをその大きな胸の谷間に抱き締めた。
マメはアンナの柔らかい感触に抱き締められながら、相変わらず『何で突然消えたと思ったら、今度は別の場所に出て来れるのたろう?』と悩んでいた。




