011 ) 最初に教えてよ
「なぁマメ、ちょっと相談があるんだが?」
「何ですかギプス父さん?」
「いや、この子を家まで送ってあげたいのだが、マメもちょっと協力してくれるかい?」
「うん、イリスが家に帰る手伝いならなら何だって協力するよ。」
「あぁ男に二言は無しだぞマメ」とギプスがニヤリと笑うと、ギプス達3人は頷き合い何か覚悟を決めた様な表情をした様だった。
「ではエレナ、イリス嬢ちゃんが家に帰る段取りを頼む。」
「ええ仕方ないわね、まずはそうね。 マメちゃんは後で着替えてもらうとして、イリスは浄化魔法で汚れを落としてもらうだけでOKかしら? 何処でそんなに傷だらけになって来たのかは、今は野暮な事は聞かないけど・・・ 」とそれ以上は聞かない素振りは見せたが、エレナは心の中で、
『多分、ロープで毛足を縛られて出来た傷よね? そんな傷だらけになってたイリスをマメちゃんが見付けて、持ってた回復薬で傷を癒してくれたのよね?
この酷く殴られた感じのするイリスの頬っぺたも傷になってたみたいだけど・・・
あいつら! 女の子の顔に一生モノの傷が残ったら一体どう責任を取る積もりよ〜!
例えどんな最上級回復薬でも『神秘の回復薬エリクサー』以外は、丸一日以上時間が経過したら傷を治す事なんて出来ないんだからね!
まあその傷もマメちゃんが回復薬で治してくれた様だから良かったけど・・・
でも、ちょっとまだ不十分な感じよね』と思い、エレナはイリスにコッソリとハイヒール回復魔法を掛けてあげようとしたが、
「どうしたんだエレナ?」とギプスに声を掛けられて魔法の行使を中断する。
何に対してか?は言わないが『証拠』は必要なのだ・・・
エレナ母さんがクリーン魔法でイリスに着いた汚れを一瞬で落としてしまうと、それを見ていたマメは思う。
『今回の初心者ダンジョンを攻略した報酬として僕に生えてた回復魔法やギルド所属の魔法使いさんから教わったクリーン魔法なんかを覚えられた事を喜んでいたけど、やはりエレナ母さんみたいな上級魔法使いって呼ばれている人達って凄いよな〜 いやいや、エレナ母さんって、この全大陸中でも5本の指に入る大魔法使いだって聞いた事もあるし・・・
やはり上には上の人達が沢山いるんだな〜』と今回マメに生えたスキル『魔力感知』で肌に感じる事が出来た『エレナ母さんの魔力』に対して他人事のように思っていたが、
「さて、今度はマメちゃんの番ね!」と物凄い笑顔でエレナに言われるのに対して、マメはちょこんと首を傾げてエレナを見る。
そんなマメを見たエレナは、笑顔でマメを別室に連れて行く、
別室にマメが連れて行かれる後姿を見送ったギプスとハイドワーフの男性、そしてイリスの3人が、何故かマメに同情する様な顔になる。
その後、何故か?大きな声で『そんな服は着たく無いよ!』とか、『エレナ母さん辞めてよ〜』とか、『何でマリエさんまで〜!』とか、いつしかマメが連れ行かれた別室には、エレナ以外の女性達も集まっていた様だ、実はこの女性達、エレナの『女子会』のメンバーで、エレナの密か野暮である『マメちゃんを着せ替え人形にして楽しみたい!』と言う願望が叶う機会を逃さない為に助っ人として急遽呼び出したのである。
まあマメも最初は抵抗したが、後半はほぼ無抵抗だった・・・
今でこそマメが王都の公衆浴場を利用する機会は減ったが、マメがまだ見習い冒険者だった頃に良く受けていた『公衆浴場の清掃』クエストで、公衆浴場を掃除した後のご褒美に、公衆浴場の広い浴槽を堪能させて貰っていたのだが、何故か?マメが公衆浴場の掃除を受けると、彼女達が集まって来て来てマメを女性用の浴室に連行して行くのだ、一度、マメも彼女達が女性用浴室にマメを連れ込もうとした際に、公衆浴場の管理者担当者でこのコノ公衆浴場のヌシでもある通称『湯ババ』と呼ばれる老婆に対して、
「男性用と、女性用とで浴室が別れているのに、僕が女性用の浴室に連れ込まれるのはおかしいよね?」と助けを求めた事もあったが、彼女達が湯ババが陣取って座っている番台の上にマメを持ち上げて、マメが履いてるズボンと下着を一気に湯ババの目の前で引き下げると、湯ババは・・・
「まだ毛も生えてない様な子は、黙ってお姉さん達に全身を洗って貰いな!」と言って、マメが女性用浴室に入る許可を出してしまった。
この時はギルド所属の魔法使いのお父さんからも
「ああマメ君、今日は妻が来て無いから娘の面倒も一緒に頼むね〜」と『何故?何?どうして?』と色々な事を知りたいお年頃な娘、現在5才のマーサちゃんを押し付けられた事もある。
そして、約1時間後・・・
ギプスとハイドワーフの男性、そしてイリスはエレナに連れられてギルドマスターの執務室へと入って来たマメを見て驚いた。
執務室を出る前のマメは、何処からどう見ても『普通の駆け出し冒険者の少年』に見えたが、執務室に戻ったマメは、普段マメがクエストの際には必ず装着している駆け出し冒険者が良く使う胸当てが、素朴な作りの上着が上質な白いシャツと変わり、足元も大きなポケットがついたズボンに、膝下まで保護出来る編み込みのブーツから上品な白いスラックスに代わり、ズボンのベルトと、アイス叔父さんに作って貰った剣を吊り下げる為に装着していた装具も、上質で上品な装飾を施されたベルトと装具に交換され、足元の革靴も上質な物に変えられていた。
そして皆が一番驚いたのが、エレナの好みなのか?髪を少し短く切り添え切り揃えられて、日頃から外を走り回って少し日焼けした肌も相まって、あか抜けた貴族の少年か?金持ち商人の子息の様な装いとなっていた。
まあギプスやエレナの役職や地位から考えると、その両親の養子となったマメは『良家のご子息様』と言っても過言ではないのだが、
「マメ、見違えたな〜」とマメを褒めるギプスにハイドワーフの男性も同意する様に『ウンウン』と頷き、イリスはと言うと、何故か顔を『ポッ』と真っ赤に染めてマメを見ていた。
「さて兄さん、さっき相談した段取り通りに頼むよ。」
「ああ、今回は『お忍び』で来たんだが、そうも言っていられない様子、仕方あるまいよ!」と言い指をパチンと指を鳴らすと、いつの間にかハイドワーフの男性の後ろにメイドさんがすっと立っていた。
「さてアンナ、話しは聞いていた通りだ、万事予定通りに手配を頼む!」
「委細承知ました。」と言ってアンナと呼ばれたメイドさんが再び姿を消す。
それを見ていたマメはひどく驚いていた。
マメが取得した『気配感知』にも彼女は感知する事が出来なかったのだ、どうも『スキル』と呼ばれる類いの物は、練習した上で色々と活用して行かないと、ただスキルが生えただけでは『いざと言う時』には全く役に立たない事を身を持って実感する事が出来る出来事だった。
因みにだが、このメイドさん、黒髪にアイスブルーの瞳を持った物凄い美人さんで、フレームの無い丸メガネを掛けており、お尻に届きそうな長い黒髪は、綺麗に三つ編みに編み込まれており、その先は重そうな『真っ赤な丸い髪留め』で留められていた。
後で知った話しだが、その丸い髪留めは『不埒者達の赤い血が着いて汚れても分からない様に、真っ赤な髪留めを使っているのだ』と噂を聞いた事があったが、マメがアンナに対して『別件でのお礼』と称して髪留めを送った事があるのだが、アンナは酷く喜んで愛用してくれたが『坊ちゃん、次にアンナに髪留めを用意して下さるなら、次はもう少し重い髪留めをお願いします。』とお願いされてしまった。
やはりアンナさんの髪留めが真っ赤なのは、不埒者達を・・・ 何故か?この事を考えるのが怖くなるマメ・・・
さて、話しを戻そう。
先程からチラチラとマメを見ては頬を染めているイリスも、突然姿を現したアンナと呼ばれたメイドを見ても、別段に驚いた様子も見せない。
きっとイリスも『この様な人物』いや『存在』を見た経験が有るのか?貴族と呼ばれる人達には『当然の存在』なのだろうか?マメにはその辺は理解出来ない事である。
「さて、マーク君に協力を頼んだ儂らだが、儂から見るともう少しチョットした小物が欲しいかのう?」とハイドワーフの男性が何やら空間収納からいくつかの小物を取り出すと、執務室に置いてある重厚なテーブルの上に並べた。
「あ兄貴、コレは・・・」
「これはこの子の正当な持ち物だ。この子に持たせるのが当然じゃ。」
「いや兄貴、その前に色々と話す事も有るじゃないのかよ?」
「それは後でゆっくりと儂と、ギプスとエレナと、目の前に居るマークと家族4人で話そうと思う。
まずはイリスティーナ王女殿・・・
いや、先ずはコノお嬢さんのことが先決だよな?」
「まぁ兄貴がそう言うなら、儂はそれに意を唱える気は無いが・・・」と、何やらマメの方を見て気にしている様子のギプス、
「それにトラブルが起きた時、そのトラブルを隠すか?他人から目を逸らしたい時には、起きたトラブルよりも更に大きなトラブルか?事件や出来事を用意してやるのが一番じゃ! それにな、事を相手側に主導権を握らせるのでは無く、事を更に大きくして主導権を握り返すのも解決策の1つじゃろ? せっかくマークも協力してくれると言っておるのじゃしのう?」
「まあ兄貴がそう言うなら良いけどさ!」とギプスは少々面白くもなさそうではあったが、マメがハイドワーフの男性に渡された物は、オリハルコン製の短剣と、同じくオリハルコンで作られた腕輪だった。
そしてその2つの品は、マメの本来の・・・
いやコノ話しは後にしよう。
ハイドワーフの男性がマメに渡した短剣と腕輪を見てビックリしながらも、やはりマメも男の子、短剣をマジマジと眺めいる。
ハイドワーフの男性に促されるままにマメが短剣を腰のベルトに挿すと、ハイドワーフの男性がマメに近寄ってお腹の前に短剣が来る様に位置を直してやり、腕輪をマメの左手首に装着してやる。
その時、ハイドワーフの男性は古いドワーフの言葉で何か囁いていたが、この意味を知るのはハイドワーフの男性とギプスだけだった。
短剣の位置を直して貰い、左手首に腕輪を装着して貰ったマメは、『ありがとう。』と無邪気な笑顔でハイドワーフの男性にお礼を言う。
この様子を見てイリスは流石に驚いたと共に、ある程度はマメの素性を理解した。
何故なら、マメが受け取った短剣にも腕輪にも『大槌と大剣に向かって火焔を吐く竜』が模られた『紋様』が描かれているのだ、この後、無事に父親に会えるのは間違い無いだろう。
父親に会えたならば、今、イリスが考えている『ある相談』を、絶対に父親に話してみようと心に決めた。
マメがハイドワーフの男性に向かって『ありがとう。』と笑うとハイドワーフの男性は、
「マーク、お前が腰に下げているその剣を私にチョットだけ見せてくれんか?」
「僕の剣をですか?」と小首を傾げながらもアイス叔父さんに作ってもらった細身の剣を差し出す。
暫しマメから手渡された細身の剣を眺めていたハイドワーフの男性だったが、
「コレはアイスが打った剣か? アイスも中々良い剣を打つ様になったな! 見た目は質素な作りの鞘に収められておるが、A級冒険者いや、S級冒険者でもコノ剣を実際に手に取って見たら、譲って欲しいって言い出すかもな?」
それを聞いたマメは嬉しくなり、
「S級冒険者でさえ欲しがるなんて本当なの?」
「ああ本当さ、儂はこういう『物』を目だけは確かだからな!」とハイドワーフの男性は言う。
横で話しを聞いていたギプス父さんも『ウンウン』と頷いてる。
この話しを横で聞いていたイリスも『エッ! マメちゃんが腰に吊った質素な作りの剣って、あの王都でも最高の鍛治師だと言われるアイス氏が打った剣なの!? アイス氏が打った剣なら私も欲しいわ!』と心の中で思う。
暫しハイドワーフの男性はアイスが打った剣を見ながら、何やら悩んでいた様子だったが『ウム!』と頷くと、
「せっかくのコノ剣の作りを変えてしまうのは忍びない、じやから今回は剣の柄と鍔に少しだけ手を加えさせて貰って、鞘だけを作ろうと思う。」と言い、
ハイドワーフの男性は空間収納から真っ白な素材を取り出し、何やら形状を変形させて行く、流石にマメは驚いてハイドワーフの男性が、真っ白な金属らしき素材を変形させる様子を凝視している。
マメの錬金術の師であるバイス師匠よりも、遥かに洗練された魔力操作で剣を収める鞘を錬成して見せたのだ、そして出来上がった鞘に改めてアイスが作った剣を収めると、剣をそのままテーブルの上に置き、再び空間収納から別の少し銀色に鈍く光るインゴットを取り出して、作ったばかりの鞘の鍔元に近い場所に余り目立たないが優美な装飾を施した。
勿論、マメが左手首に装着して貰った腕輪と同じ、大槌と大剣と竜が描かれた紋様をである。
マメの支度が大体整うと、ハイドワーフの男性は、ギルドマスターの執務室でマメに寄り添う様に後ろに立つエルを見定める様にして見る。
誤字脱字、読みづらい箇所等があればご指摘下さい。
八葉門希




