表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

5,匠先生、好きです!私と付き合ってください!②

 匠先生と土曜に水族館、これはデートだよね。

 これがデートじゃなければ、なにがデートなの?


 サプリとプロテインを朝食にして、コールドは無理だから……温めのシャワーを浴びる。

 来週更新したいコンテンツをまとめて、To Doリストをスマホカレンダーで登録&管理。


「よし!」


 匠先生に認められたい。

 ちゃんとやってるってところを褒めてもらいたい。


 今日、告白しよう。

 だってずっと好きだったし。

 匠先生に好きになってもらえる努力はしてきたつもり。




 △△△




 それにしても、ちょっと、いやかなり、見た目が良すぎるんだよね。

 ずっと周囲の視線を集めてて、気にならないのかな。

 私、一緒に居るの気後れするんだけど。


「あの、匠くんの写真も撮っていい?」


 思い切って言ってみた。


「いいけど……俺、一人で?」

「うん。友達に匠先生の正体だよって言いたい」


 嘘、一人で見る。


「あー!俺、ほら顔出ししてないから身バレ厳禁でお願い」

「そうだよね。ダメかぁ……」


 失敗。ドンマイ。


 凹んでたら、匠先生から一緒に写真撮ろうって言ってくれた!

 キャーッ!

 う、腕が、首にあたって、か、肩も、ぶぶぶぶつかってる、よ!


「あ、背景、水槽、ばっちり。送るね」


 今しかない。ガンバレ、私!


「たくみ……匠先生、好きです!私と付き合ってください!」

「……」


 駄目かな。玉砕したかな。

 大丈夫。失恋はばねになる。


「いいよ」

「……!」


 やった!やった!やった!やった!


 嬉しくなって、ずっとしゃべってしまった。

 正直、何言ったかはあんまり覚えてないんだけど、匠先生にどう思われたかな……




「今日はありがと」

「こちらこそ。これからもよろしく」

「うん!よろしく」


 水族館の後、カフェで遅めのランチ食べて、最寄り駅まで送ってもらった。

 匠先生は動画の準備があるって言うし、私も夜のルーティンやらなきゃね。




 △△△





 次の日、匠先生から電話がかかってきた。


「今から行っていい?」

「え?家に?」

「ダメ?」

「駄目じゃないけど」


 明日からお世話になる、インターン先の資料が広がっている。


「片付けるから、1時間後でいい?」

「やった」


 やった、だって、かわいい。


 駅まで迎えに行くと、匠先生は目立ってた。

 だから、顔出ししてないのか、と妙に納得。

 あんまり人気が出過ぎると、コンテンツに支障が出るんだろうな。


「お待たせ」

「ホントに行っていい?」

「いいよ」


 手を繋いで来た道を戻る。

 私に歩調を合わせてくれてるのが分かる。


「10分くらいだよ」

「らじゃ」

「飲み物ないんだ、コンビニ寄ろ?」


 私はブラックコーヒー、匠先生はコーラ。


「コーラ飲むと、なんかいい事あるの?」

「スッキリする」

「あはは。私、匠先生は合理的を追及する機械みたいな人かと思ってた」

「先生、は、いらない」

「あ、だね」


 いけな。プライベートと分けたいタイプだったのか。

 メリハリつけるところも、流石、匠先生!


「ここ」


 鍵を開ける。

 匠先生が少し頭を傾げて入った。

 玄関ってこんな小さかったっけ?


「あかねえ、っぽい!」


 鼻息荒い。うける。


「そう?部屋で撮影してるから、ぽいって言うか、そのままでしょ?」

「おぉ!これ見てた。何が映りこんでんのか、気になってたんだ」


 片思いしてた頃を思い出して、胸がチクってした。


「高校の部活でね、書道部だったの」

「へぇ」


 毛に癖が付かないように、ぶら下げてた筆が数本。


「映りこんでた?」

「たまに、ちらっとね。何かなって思ってた」

「よく見てるね、ありがと」


 恥ずかしそうに笑ってる匠先生、かわいいかも。


「これは?」


 山積みにした資料。


「インターンシップ制度使ってね、明日からその会社に行くの」

「働くの?」

「うん。戦力にはならないだろうけど、ね」

「何系?」

「IT?」

「知らないのかよ」

「だから、今、見てたの」

「茜、おもろー」


 買ってきた飲み物を開けて座る。

 家にはテレビはない。


「動画でも見る?」

「おう、いつもどんなの見てるの?」


 どんなのって、ほぼ匠先生だよ。

 もうオールコンテンツ3周はしてると思う。


「今日の配信も良かったね」

「え?」

「腸内細菌って悪玉菌も必要なんだね、善玉菌だけあればいいのかと思って……」


 キスされた。

 匠先生が、急に私の頭押さえて、背中丸めて……

 大人のキス、初めて。

 やっぱり口ちょっと開けるんだね。

 舌で舌、触った。なんか気持ちいね。


「ごめ」

「謝ることはないけど……ちょっとビックリした……へへ」


 もっと気持ち悪いものかと思ってた。

 とっても優しくて、腕とか胸とか背中とか、そわそわしてくすぐったい。


「今日は、動画の話はいいや」

「うん。うち何もないし、どっか行く?」

「そだな。勇太のこと冷やかしにでも行くか」




 △△△




「この中に勇太君がいるの?」


 デパートの1Fの大きな催事場は、人だかりができていて、その間を子どもたちが走り回っている。


「警察か、消防のマスコットキャラっつてたけど……」

「たくさんいて、分かんないね」


 制服を着た人たち、着ぐるみの人形、のぼり、ブース


「あ、あれ。明日から行く会社だ」


 自然と足が向く。


「あ、お姉さん、興味ありますか?サイバーセキュリティって聞いたことあります?目に見えないけど、これも立派な防犯ですよ」


 そう言って、会社のパンフレットを前に出された。


「持ってますので、大丈夫です」


 お辞儀をする。


「秋田茜と言います。明日からインターンでお世話になります」


 もっとちゃんとした格好して来ればよかったな。


「そう?!わざわざ見学に来てくれたの?うちの若い子なんて、『休日出勤は致しません』なんて、ちっとも協力してくれないんだよ。あ、悪い子じゃないからね。合理的なだけだから。おじさんとは考え方が違うよね、世代かな?」


 汗を拭き拭きしながら、一生懸命に話しかけてくれてるんだなって分かって嬉しかった。


「明日から、よろしくお願いします」


 もう一度、深く頭を下げた。

 いい会社っぽい。良かった。


 匠先生を置いてけぼりにしてしまった。

 キョロキョロと探す。


 何だか知らないマスコットキャラに肩をポンポンされた。

 振り返ると、人差指で入り口付近をツンツン指してる。

 見たら、匠先生が女の子に囲まれてた。


「勇太君?」


 こくこく頷いてる。


「大変だね」


 中に入ってる姿を想像して、笑ってしまった。

 勇太君にバイバイして、匠先生の近くまで行く。


 すごい人気だな。

 同じ大学の子かな?

 軽く手を振ってみる。

 気付いてぇ~って思いながら。


「悪いっ!」


 そう言い残して、匠先生はこっちに走ってきてくれた。


「知り合い?」

「そんなとこ」

「あのパンフレットの会社だろ?」

「え?うちで見たやつ、よく覚えてるね」


 匠先生は私の手を引っ張って、どんどんイベント会場から離れていく。


「挨拶できたの?」

「わざわざ見に来てくれたのかって、誤解されちゃった」

「別にいーんじゃね?」

「私も、つい、そんなフリしちゃって。なんか騙して、いい格好しちゃって、卑怯者っぽいよね……」


 突然、立ち止まった匠先生に抱きしめられた。

 そして、また頭を捕まれて、さっきよりちょっと強めのキス。


 人生二度目のキスが路チューとは……ハレンチ?






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ