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「もう一人のワタシ、チカラを貸して!」~悪役令嬢のチカラとわたしの知恵で、最強ヒロインが爆誕です。~  作者: サアロフィア
第01章 40,472文字

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第04話 石田紗菜の恵まれた環境(シャルロットの自尊心)




※このエピソードは、第01話から遡ること約7ヶ月前の「二人が初めて出会った時」の物語(シャルロット視点)です。


※第03話 シャルロットとの出会い(石田紗菜の自信)と同じ時間です。



光元国歴 2013年5月1日(水) ゴールデンウイーク


異世界の豪華な屋敷の大きな部屋で、自尊心が高そうな金髪の美しい令嬢が不満な様子で、機嫌が悪そうだった。


なにを考えているのか知りたいと思ったら、こころの声が聞こえてきた。


『わたしは、シャルロット・ホワイトウィング。 公爵令嬢ですわ。 

そして、オソラゼル王太子の婚約者です。


そして、ゆくゆくは王太子妃になって、王妃になって、と女性の第一位であるファーストレディになる予定でした。 


過去形なのは、田舎から出てきたスィーティという女の子に、オソラゼル王太子がお熱を上げてしまったからです。 

なんとかして、スィーティを引き離して、オソラゼル王太子をわたしのもとに帰らせたいと頑張ったのですが、わたしが悪者にされる始末です』


シャルロットはふてくされて、ベッドに寝転がりながら、天井を眺めていた。

そして、いろいろと考え込んで、悩んでいる様子です、


『まだ、わたしには美しい容姿と若さと公爵令嬢の地位があるから、絶対にスィーティに負けることはないと思っていましたが、勝者を決めるオソラゼル王太子がスィーティに夢中だから、八百長試合も真っ青ね。 


試合する前から負けが決まっているじゃない。 

ワタシの取り巻きも応援してくれているけれど、空振りというか裏目に出ているとしか思えない』


シャルロットは、天井に向かって、ぐちを言うことしかできなかった。


「あーあ、この才色兼備、容姿端麗、頭脳明晰、性格温厚、不撓不屈(ふとうふくつ)、刻苦勉励(こっくべんれい)、精励恪勤(せいれいかっきん)なシャルロット様でも、お手上げな状況を覆せるひとは存在しないわね。 


負けよ負け! 


詰みからの逆転はありえませーん」


不撓不屈(ふとうふくつ)

どんな困難にもくじけず、強い意志で努力し続ける姿を表します。


刻苦勉励(こっくべんれい)

困難に耐えながら、一生懸命に努力する様子を示します。


精励恪勤(せいれいかっきん)

誠実に努力を重ね、仕事や学問に励むことを意味します。


どこから、ともなく可愛い女性の声が聞こえてきた。


「くすくす、こんな難しい四文字熟語は、わたしでも知りませんでしたわ。」


シャルロットは部屋の中を見渡したが誰もいなかった。


「誰なの? 姿を現して、名乗りなさい。」


可愛い女性の声から返事が返って来た。


「まあ、そんな物言いをするから、手に入るものもつかめないのよ。 

と言っても、今の貴方には分からないわよね。


わたしは、第8神 願望実現の女神 グローリア と申します。


あなたを逆転させてくれる知恵者を紹介してあげましょうか?」


シャルロットは、公爵令嬢らしい気位が高い言い方で返事をした。


「そんな者がいるなら、目通りを許すわ。 

ここに連れてきなさい。


い、いひゃい。 痛い。


な、なにするのよ。 ひとのほっぺたを両手でひっぱるなんて。」


グローリアは、子どものような意地悪をしたことを、悪いと思っていないようだ。


「どこまで伸びるか確かめてあげたわ。 

あなたでは確かに行き止まりね。」


シャルロットは、自分を過小評価された気がしたので、気を悪くした。


「なにを言うの? 

わたしは、公爵令嬢よ。 

無礼者」


グローリアは、やれやれ、「もう手遅れね」という口調で言い返してきた。


「そんな役に立たない自尊心はプライドとは呼ばないわ。 

ブタイドよ。 豚かイドに食わせてしまいなさい。」


シャルロットは、ますます真っ赤になって怒り出した。


「あなたのような無礼者は見たことが無いわ」


と言うシャルロットのくちを、女神グローリアはふさいで、睨みつけて黙らせた。


グローリア

「だまりなさい。

助けが必要なら、あなたの願望を実現したいと思うなら、あの窓を見なさい」


わたしが窓を見ると、そこには黒髪で、黒い眼鏡の、身だしなみをさぼっているとしか言えない無気力な同い年くらいの女の子が不機嫌そうな目をして、わたしを見ていた。 


なぜ、そんな目で私を見るのか理解できなくて、私は何度も瞬きをしてしまった。


グローリアは、シャルロットの様子を確認してから、話を続けた。


「落ち着いたようね。

彼女の名前は、石田 紗菜(さな)。

あなたを今のピンチから助け出してくれるひとよ。 


どうしますか? 彼女を頼ってみますか? 


それとも、そのまま破滅の時まで、ぶつぶつ言って時間を無駄にしますか?」


シャルロットは、そんな風に言われては、我慢がならなかった。


「努力の代名詞と言っていい私が、そんな無駄な時間を過ごすわけが無いでしょう」


グローリアの声は、ようやく本題に入れたと、うれしそうな口調だった。


「では、石田 紗菜(さな)との人間関係を構築してあげましょう。 

彼女に右手を伸ばして、お願いしなさい。


『もう一人のワタシ! チカラを貸して! ソーシャライズ サナ!』


と言いなさい」


シャルロットは、事態が好転するならと、素直に言うことを聞くことにした。


「わ、わかったわ。」


わたしは、女神グローリアの言う通りに、窓の中にいる黒髪の少女に右手を伸ばした。 


わたしたちの手のひらが重なった。


シャルロット・ホワイトウィングは、女神グローリアから教わったセリフを言い放った。


「もう一人のワタシ! チカラを貸して! ソーシャライズ サナ!」


「socialize」(別表記:ソーシャライズ)とは、社会的な交流を持つ、人間関係を築く、または他人と親しくなることを意味する英単語である。(出典:weblio.jp)


一瞬だけ、ふたりの手のひらが光り輝いた。



◇


光元国にある石田 紗菜(さな)の部屋…


サナは、目を瞬きさせて驚いている。

先ほどとは、サナの雰囲気が変わっていた。


サナの身体に宿る魂は、シャルロットの魂に入れ替わっていた。


シャルロットのこころの声が聞こえてきた。


『なんということでしょう。 

わたし=シャルロット・ホワイトウィングは、石田 紗菜の世界に来ました。 


鏡の中には、先ほど窓の中にいた冴えない黒髪の女の子がいました。 

わたしが手を振ると、鏡の中の私も手をふった。 

ふたりの身体が入れ替わったことが分かった』


第8神 願望実現の女神 グローリアは、入れ替わったことを見届けて、満足そうな口調で、サナ(中身はシャルロット)に告げた。


「では、石田紗菜(さな)が、シャルロット・ホワイトウィングの願望である「ヒロインとの戦いに勝利」を目指す間に、あなたも頑張ってくださいね。 


頭のいい紗菜(さな)でも、6カ月は掛かるでしょう。


努力の代名詞と呼ばれるシャルロットが、この世界でどれくらいの成果を出せるかを楽しみにしているわ。 


もしも、なんの努力もせずに、自堕落な生活を送っていたら、大笑いしてあげるわ。


 まったねー。」


女神グローリアの姿は、サナの目の前から消えてしまった。



◇


サナに背を向けて、神の世界に戻ったグローリアは、自分に酔いしれていた。


「二人の少女の魂を入れ替えることで、二人の少女の願望を実現させる。

これぞ、【一石二鳥】、いいえ、1回の奇跡(きせき)で、二人の少女が幸せになれるのだから、

【一跡二幸(いっせき にこう)】かしらね。


二人の少女の需要と供給が一致した幸運に感謝しましょう!」


シャルロットが置かれた状況に対するぐちは、

【助けを必要としている需要】

として、女神グローリアに解釈されたのでした。



◇


サナの中にいるシャルロットは、グローリアの声が聞こえた方角に向かって、文句を言っていた。


「ちょっと待って、これはダメでしょ!」


部屋の外から、バタバタと走ってくる音が聞こえる。 

ドアがバンと大きな音をたてて開き、見知らぬ少女が入ってきました。


「どうしたの? 紗菜(さな)。 

まさか、バッドエンドになっちゃったの?」


シャルロットの紗菜(さな)は、意味が分からなかったので聞き返した。


「バッドエンドって?」


サナの友人と思われる少女は、説明してくれた。


「アユミが薦めたWEBゲームに、はまってくれたんでしょ? 

わたしなら、悪役令嬢シャルロットのような凡ミスはしないって、言っていたじゃない」


シャルロットの紗菜(さな)は、状況を悪化させないために、こころの中でだけ言い返した。


『悪役令嬢? わたしが? 凡ミスって? 

はっ? いけない、いけない。 


わたしは、サナと入れ替わったんだったわね。 


第三者の振りして、冷静にならないと。 

サナの記憶によると・・・』


シャルロットのサナは、冷静を保とうと努めながら、アユミに返事をした。


「そうなのよ。 

今度こそ、悪役令嬢が勝てるかもと思ったのに、またしても、無様に自滅しているのよ」


アユミは、こころの底から同意して、話を続けた。


「そうよね。 

光元国の人間だから、悪とは言え弱い者の味方をしたくなるわよね。 


でも、シャルロットがサナの言う通りに、行動したら勝てるかもしれないわね。 

サナは御代官様も真っ青なところがあるからね」


シャルロットのサナは、弱い者と呼ばれて、納得が行かなかった。


「シャルロットは、公爵令嬢なのよ。 

弱い訳ないじゃない」


アユミは、冷静に言い返してきた。


「どんなにすごい武器でも正しい使い方を知らなかったら、持っていない方がマシだわ。 自分が怪我するだけよ」


シャルロットのサナは、怒ることは簡単だけれど、少しでも多くの情報、解決策を聴き出すべきと考えた。


「アユミは、本当に詳しいわね。 

じゃあ、どうしたら、シャルロットに勝ち目があると思うの? 

せめて、オソラゼル王太子との婚約が無くなるだけで済む方法って、あると思う?」


アユミは、少し考えてから説明をしてくれた。


「そうねえ、わたしだったら・・・」


1時間くらい、攻略対象ごとの正しい対処方法について、熱く熱く語ってくれた。


シャルロットのサナは、アユミの回答を聞きながら考えていた。


『そんな考え方もあるのね。 

たしかに、公爵令嬢の視点ではなく、平民の視点でも考えると取りうる選択肢が広がるわね。 


女神グローリア様は、どうして、このアユミではなくて、サナを指名したのかしら? 


まあ、上手く行かなかったら、やり直しを要求しましょう。』


アユミは、時計を見て立ち上がって帰る準備をしていた。


「じゃあ、明日、学校でね」


シャルロットのサナは、笑顔でアユミを見送った。


「ええ、また明日」



◇


わたしはお風呂に入って、サナの家族と晩御飯を食べて、歯をみがいて、自分の部屋に戻った。


ベッドに入って、サナの記憶を同期することにした。 

そのまま寝入ってしまって、目が覚めたら朝だった。


起きて、トイレに行くために食堂に行くと、サナの母親が驚いていた。


「どうしたの? ワタシが起こす前に起きてくるなんて? 

どうしましょう? 今日は雨が降るのかしら?」


シャルロットのサナは、母親の言い様に気を悪くした。


「失礼な? 朝に起きることは当たり前でしょうに」


サナの父親は、ふたりがケンカにならないように、話に入って来た。


「うむ、朝に目が覚めるということは、ようやく体調が回復したということだな。 

夜遅くまで、勉強するのはいいが、ほどほどにしろ。 

無理して身体を壊したら、元も子もないからな。」


シャルロットのサナは、笑顔で礼を言った。


「ありがとうございます。 おとうさん。 

では、身支度を整えてきます。」


わたしは、トイレを済ませて、顔を洗って、髪をブラシで丁寧に解きほぐした。


シャルロットのサナは、身だしなみについて考えていた。


『本当は、お化粧をしたいけれど、周りの様子を確認してからの方が良いわね。 

サナは、他人の容姿に関心がないのか? 

ほとんど記憶に残っていないのよね。』


食堂に戻ると、朝食が並べられていた。


サナの母親は、またしても驚いていた。


「おや、めずらしい。 

今日は言われる前に、髪を梳(と)いたのね。 

ようやく目覚めてくれて良かったわ。 


さあ、ご飯を食べなさい。 

今日は時間に余裕が有るから、ゆっくりと食べられるわね。 

パンを咥えて走っても素敵な男の子との出会いなんて怒らないって、分かってくれて良かったわ。」


わたしは、ただただ愛想笑いをするしか無かった。

『サナって、そんなにだらしない生活態度で生きているの?

そんなひとに、ワタシがあきらめた危機を解決できるとは思えない。

ものすごく不安になってきたわ』



◇


家を出て、学校に向かうと、後ろから声を掛けられた。


アユミが駆け寄ってきた。


「サナ、おはよう。 めずらしいわね。 

今日は雨が降りそうね。」


シャルロットのサナは、二度目だったので、冷静に受け流した。


「こんなに晴れているのに、雨が降るとは思えないわ。」


アユミから、少しあきれた様子で返事をされた。


「マジレスありがとう。 

これで、遅刻ギリギリ生活からも脱出できそうで、おめでとう。」


シャルロットのサナは、サナの普段の生活を理解したので、言い返すことは止めることにした。


「あ、ありがとう」


学校に着くと、同じ年齢の男女が大勢いた。 

サナの記憶で知っていたが、聞くと見るでは大違いだ。


きれいに着飾っている子は多いが全員が同じ衣装を着ていた。 

これが制服というものか? 


化粧や髪型についてはどうだろう?と見渡していると濃い化粧をすると教師に見つかって、指導されるようだ。 

教師に分からないギリギリの化粧をする必要があるようだ。 


これも、縛りゲーの一種だろうか?


アユミは、ワタシの様子を見て、疑問を感じたらしい。


「どうしたの? きょろきょろして?」


シャルロットのサナは、アユミに理由を説明した。


「ワタシのような黒い枠の眼鏡をしている女の子は見ないわね。 

細い枠の眼鏡をしている子さえ少ないわね」


アユミは、サナ(中身はシャルロット)の行動に納得したようだ。


「だったら、サナもコンタクトレンズにすればいいじゃない」


アユミは、アユミの目を指さしてコンタクトレンズを見せてくれた。


シャルロットのサナは、アユミの目の上に載っている薄いレンズを見て、驚いた。


「目玉に直接つけるレンズがあるのね。すごいわ。」


アユミ

「見栄えが大事だからね。ルッキズムとか言うそうよ。 


あと、サナも髪を切ったら? 半年くらい手入れしていないでしょ。 

めんどくさいとか言ってるよね。」


シャルロットのサナは、サナのだらしなさに驚くことを止めることにした。


「そうね、アユミのように容姿に気をつかうようにするわ。」


シャルロットのサナは、サナの考え方が分からず、理解に苦しんだ。


『サナって娘はバカなの? 

美しい方が得だと言うことになぜ気付かないの?』



◇


中学2年生の授業が始まった教室。


大勢の若い男女を集めて、授業をするなんて、画期的なアイデアね。 

この方法なら、お金がない平民の子でも学問が学べるわ。 


居眠りや私語をするなんて、もったいないことを。 

平民が学べることのありがたみが分からないのかしら?


数学の小テストがあった。 半分くらいしかできなかった。 

サナの記憶を隅から隅まで見ても、答えに結びつく情報は無かった。


栄語の小テストがあった。 半分くらいしかできなかった。 

have, had, have been, had been 何の違いが有るの?

 

栄語が外国の言葉だと分かるけれど、haveは暗号なの?


という感じで、小テストの点数は平均点以下だった。 


『はあ? 女神グローリア様、本当にサナが私の問題を解決できるのか? 

いや、それは、あとで文句を言えばいい。 

それよりも、この点数をなんとかしなくては?』


授業が終わるとクラブ活動というものがあるそうだ。 


サナは関心がなくて、自宅に帰っていたが、どんなものか見たくて仕方が無かった。 

授業中は寝ていた男子が元気に頑張っていた。 

それよりも、目についたのが、女性がスポーツをしたり、武道をしていたことだ。 


最初は、女子みたいな男子がいるのかと思ったが、本物の女性だった。 

わたしもやってみたいと思ったが、まずは勉強をして良い点を取らないといけない。


このような平民でも学問を学べる環境が有るということは、学問ができない者は金を儲けることがむずかしいというルールを作った権力者がいるという証拠だ。 


わたしは、クラブ活動の見学を切り上げて、帰ることにした。 


帰り道で、【気軽にカット】という1,200円で髪を整えてもらえる店を見つけた。 

これなら、サナの財布に入っているお金で大丈夫。 

お店に入って、券売機で支払いを済ませたら、1時間後くらいに順番が回ってきた。


シャルロットのサナは、店員さんに髪型の希望を伝えた。


「長い髪が似合う女性になりたいから整えて欲しい。」


30分くらいで、ずいぶん見栄え良くしてくれた。


美容師さんは、

「また来てくださいね」

と笑顔で送り出してくれた。



◇


家に帰ると、サナの母親がワタシを見て驚いた。


「へえ、美容院に行くお金があったのね。 

いくらだった。 レシートを渡しなさい。」


ワタシが領収書を渡すとお金をくれた。


サナの母親は、わたしの髪型を満足そうに眺めながら、うれしそうだった。


「お金を渡すと、趣味の本に使っていたあなたがねえ。 

好きな男の子でもできたかな?」


シャルロットのサナは、母親とケンカしないように、いちいち腹を立てないことにした。


「まだですけれど。

ところで、お母さん。 

コンタクトレンズって、うちの家計でも買えますか?」


サナの母親は、家が貧乏だと思われたことに強く反発していた。


「はあ、わたしを誰だと思っているの? 

準備しなさい。 買いに行くわよ。」


というわけで、母はコンタクトレンズをすぐに買ってくれた。


サナの母親は、黒縁眼鏡をコンタクトレンズに変えた私を、しみじみと見つめていた。


「わたしの娘だから、これだけで美しくなったわね。 

お母さんのDNAに感謝しなさい。」


シャルロットのサナは、サナの母親が機嫌よくしているなら良いことだと考えたので、必要なことだけ言うことにした。


「お母さん、ありがとう。 

それから、校則、学校の規則に引っ掛からない程度のお化粧をしたいのだけれど、どうすれば良いか教えてくれますか?」


サナの母親は、理由は分からないが、これ以上ないくらい、驚いていた。


「ふっふっふっ、ついにこのときが来たわね。 

この才色兼備、容姿端麗、頭脳明晰、性格温厚、不撓不屈(ふとうふくつ)、刻苦勉励(こっくべんれい)、精励恪勤(せいれいかっきん)な母に聞いて大正解よ。 


さあ、次は、コスメショップよ!」


シャルロットのサナは、サナの母親の口から、自分と同じ四文字熟語が飛び出したことに驚くと同時に嬉しくなった。


『わたしと同じ信条で生きて、同じ言葉を気に入っている。

ここまで、考え方が近いひとに会うなんて初めてだわ!


あれ? このひとは、サナではなくて、わたしシャルロットの母親ではないだろうか?


そう思いたくなるくらい感性が近すぎるわ』


サナの母親の力強いバックアップのおかげで、サナの容姿は見違えるほどに美しくなった。



◇


容姿に満足したサナ(中身はシャルロット)は、次の弱点を克服することにした。


『さあ、次は、数学の小テストをなんとかしなくちゃ。 

学校の教科書を中学1年生から読み返したけれど、いまいち良く分からない。 

サナが、GoGoGO社のYour TV を見ていたので、中学数学というか高校入試の数学のチャンネルが無いかなあ?』

と検索したら、素晴らしいチャンネルに出会いました。


【高校入試数学『サアロフィア学習室』 @Surlofia-Study 】のショート動画を見れば、1分で多くのことを学ぶことが出来た。 

チャンネル登録者数 156人

731 本の動画って、お得すぎる。


『これを無料で公開しているの? 

家のポストに投げ込まれている塾の授業料を払ってでも見るべき価値があるはずなのに、無料なんて。


サナの世界はおかしいわ。 

でも、たった156人しか、このチャンネルの価値に気付いていないなんて、驚きだわ。


ひと通り、見終わったときには、数学の小テストで苦しんでいた私は、なんだったんだろう?』

と不思議に思えてきた。



◇



『さあ、次は、栄語の小テストをなんとかしないと・・・ 

でも、have って「持つ」以外の意味は無いでしょ? 訳わかんない。 


これも、サアロフィア学習室で学べないかな』


と思ったら、

【英語おぼえかた by サアロフィア】 @Surlofia-English•

チャンネル登録者数 50人•

45本の動画を見れば、あっさりと理解できた。 



『学校の先生は、どうして分かりにくい説明をするのだろう? 

嫌がらせかな? 』

と思った。


特に、【子ども言葉と関係代名詞 わかりやすく解説 簡単な覚え方【音量改善版】】と、

【I have a pen で分かる「現在完了」と「過去完了」】

の2つの動画は


『神がお作りになったのか?』


とさえ思ってしまった。 

これ以上に、分かりやすい説明は無理だと素直に降参する気になった。


それなのに、チャンネル登録者数 50人なんて信じられない。 


『栄語を苦手とする人が多い訳だ』


と納得してしまった。 


これで、栄語の小テストも乗り切る自信が生まれた。



◇



それから、成績を上げるために、本屋でどんな問題集を買おうかと考えていたが不要だと分かって安心した。 


サアロフィア学習室さんが書かれたブログ記事

【保護者向け マウント社会で学力を上げる方法】

を読めば、教科書さえ勉強すれば良いと分かったからだ。


それでも、1冊だけ買うべき本が、ブログの

【家族で力を合わせましょう! お勧めの書籍】

という項目で書かれていた。 サナがまだ中学生で本当に良かった。 

これなら、みんなに追いつける。



◇



1ヵ月が過ぎたころ、

『勉強には余裕ができてきたので、クラブ活動をしたい』

と考えていた。


サナの部屋には、テレビゲーム機があったので、ときどき遊んでいたのだが、

【武士(もののふ)魂(だましい)】

というゲームをやりこんでいた。 


わたしと同じ名前のシャルロットという剣士がマイキャラだった。 


彼女の必殺技である

【はじける幽霊】や【剛力のキラメキ】

を実際にやってみたかったから、剣道部に体験入部した。


わたしが登場する乙女ゲームは、どうしたかって? 

すぐに飽きました。 

自分が悪役で不幸になるゲームなんて、プレイしても不満が溜まるだけだからね。


剣道部を出たら、バスケ部のひとに出待ちされていた。 

わたしの高い身長が必要だと言うから、体験入部することにした。 

そして、月曜日と木曜日は身体を動かす曜日になった。


火曜日は、身体を休めるために図書館で勉強することにした。 

そこで、小説を書く女の子と仲良くなった。


ゲームは、ワタシがいた元の世界に持っていけないけれど、小説を書くことならできそうだ。

だから、小説に興味を持つようになった。


金曜日は週末だからと、にぎやかな街に遊びに行ったら、数人の男性に迫られて戦うことになった。 

そうしたら、助けてくれたひとがいた。同じ中学校で何度か話したひとたちだった。 

サナとの出会いで、敵になるか味方になるか判定できるまでは色々なひとたちと交流することにした成果だった。 

昔の私だったら、ほとんどのひとを門前払いしていたから、広い世界が開いたと実感したのだった。



◇



そうこうして、6ヵ月も私が本気で努力した結果、冴えなかったサナも、


才色兼備、容姿端麗、頭脳明晰、性格温厚、不撓不屈(ふとうふくつ)、刻苦勉励(こっくべんれい)、精励恪勤(せいれいかっきん)


という言葉が似合うようになった。 


母親は弁護士業をしていて忙しいが、わたしの進化を心から喜んでくれた。


それから、中学校では不良グループとして恐れられている男女も、ワタシの父の前だと借りてきた猫のようだった。

警備会社の社長で警察OBである父から見れば、虎ではなく猫だそうだ。 

彼らの先輩も多く就職した会社社長の娘ということで、わたしにちょっかいを出そうとする不良は減っていったし、逆に仲良くなってしまった。


将来の就職先として考えているひとが多いようだった。 

警察の方々も定年後の就職先に考えているようで、わたしと仲良くしている不良と呼ばれる少し気が短いひとたちを、色眼鏡で見る回数が減っていった。 


ある意味、警察よりもワタシの父親を怖がっているそうだ。 

父はわたしが剣道を始めたことを非常に喜んでくれた。 


ときどき、わたしの中学校の剣道部に招待されることもあって、剣道部員たちは喜んでくれた。


「ワタシたちより強いひとが会いに来てくれた」

と感激していた。


わたしは、日記帳に書き留めてきた努力の成果に満足していた。



◇


光元国歴 2013年11月1日(金)


異世界、シャルロットにとっては元の世界にあるシャルロットの部屋…


それから、しばらくして、サナの結果が知らされた。 

さあ、どんな文句を言ってやろうとかと思っていたら、予想外なうえに、パーフェクトゲームと言うしかなかった。


元の世界に戻された私の前で、わたしに微笑んでいるひとは、あの思い出のダイチゼル王太子だった。 

オソラゼル王太子が平民に落とされて、スィーティとともに幽閉された。


わたしの王太子妃の地位が復活しただけでなく、婚約者が進化していた。

いや、より高級な婚約者に入れ替わっていた。 

わたしは驚きすぎて、思考が停止していた。


しばらくして、自分の個室のベットで天井を眺めていると、6ヵ月ぶりに聞く声がした。


第8神 願望実現の女神 グローリア様の声だ。


「どうでしたか? シャルロットも努力しましたが、サナもたいしたものでしょう」


シャルロットは素直に返事をした。


「へへー、お見逸れしました。 

わたしがうぬぼれていました。」


第8神 願望実現の女神 グローリアは、わたしの態度の変化に心底おどろいたらしい。


「おやまあ、ずいぶんと謙虚になりましたね。 

いまなら、わたしの姿も見えるのでは有りませんか?」


顔を上げると、長く美しい金髪で背が高く、顔が良く、胸が大きく腰回りがキュッとくびれていて、足が長い女性が微笑んでいた。 

女神というだけあって、わたしと同じくらい、いいや、私より美しい女神が優しく微笑んでいた。


第8神 願望実現の女神 グローリアは、満足そうな笑顔で、ワタシに話しかけてくれた。

「シャルロット・ホワイトウィングの努力は目を見張るものでした。 

そして、精神修養度は以前とは比べ物にならないほどに高まりましたね。 

石田 紗菜(さな)とのソーシャライズは大正解でしたわ。


これからも、おふたりの頑張る姿を楽しみにしていますわ。」


グローリアという女神は去っていった。


これから”も” という言葉が引っ掛かったが、もしもまた、サナの住む世界に行けるなら嬉しいと思った。


まだまだ楽しみたいことが多くあるからだった。


ベッドで横になると、サナの6カ月についての記憶が私の頭の中に流れ込んできた。


そして、ワタシの日記帳にも、いろいろと書かれていた。


=======================

オソラゼル王太子との仲は無理だったわ。ごめんなさい。

でも、ワタシは、ダイチゼル王太子の方が良いと思うわ。


だから、あなたに言うわ。

「どんなもんだい。ワタシのことを見直したよね?」

=======================


ええ、もちろんよ。サナ。


ワタシが解決できないことでも、あなたなら解決できる!

そんな気がするわ。そのときは、よろしくね。



第04話 おわり


第01話に、続きます。


お読みいただき、ありがとうございます。 作者のサアロフィアです。


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