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第02話 仲間を集めるために(シャルロットの威光)

つづきは、本日の19時30分に公開予約しました。


楽しんでくだされば幸いです。

 わたしは、石田 紗菜(さな)と申します。 サナと呼んでください。 わたしは今、窮地に立たされています。 簡単に言うとですね。 ものすごく困っているのです。 ワタシと入れ替わっていた悪役令嬢が頑張りすぎてくれやがったおかげでですね。 学年主任の後藤先生を始めとする先生方から集団で生徒会長に立候補させられてしまったのですよ。


「ちょっと待ってください。 ワタシには無理です。もっとふさわしいひとがいるはずです。」

「何を言っているんだ。石田よりもふさわしい人物は他にいるはずがなかろうが、なあ、先生方。」

「後藤先生のおっしゃる通りです。」


 という訳で、無理やり、生徒会長に立候補させられてしまったのです。


「偉いぞ、石田、自分から進んで立候補するなんて。全校生徒の鑑だ。」


 そうですか? この学校では、大勢の先生でひとりの生徒を取り囲んで無理やり立候補させることを、自発的に立候補すると表現するのですか? 将来、教育委員会に圧力を掛けられるような権力を手に入れてやると誓いました。


 しかし、ワタシは今、とても困っています。 クラスメートはもちろんのこと、ワタシの親友であるアユミからも断られてしまいましたからね。


 ワタシは、空を見上げていた。

『シャルロットなら、カリスマがあるから、直ぐにメンバーを集めるんだろうなあ。』


 空に四角い窓が見えて、シャルロットの姿を見つけた。すると、向こうもワタシに気付いてくれた。ワタシは、右手を伸ばした。シャルロットも左手を伸ばしてくれた。ワタシたちの手のひらが時空を超えて重なり合った。

「もう一人のワタシ、チカラを貸して! ソーシャライズ シャルロット!」


「socialize」(別表記:ソーシャライズ)とは、社会的な交流を持つ、人間関係を築く、または他人と親しくなることを意味する英単語である。

https://www.weblio.jp/content/ソーシャライズ



 この光景はサナの学校の屋上よね。 ということは、アイスクリームやチョコレートを好きなだけ食べることが出来る上に、冷房が効いた涼しい部屋で好きなだけ勉強ができる天国のような暮らしができるのね。 それと久しぶりに身体を動かしたいわ。 剣の修行も続きがしたいし・・・それから、それから。


 あっ、思い出した。 ワタシが前回やりすぎたせいで、サナが困っているのだったわ。 ワタシがまいた種だから解決しておかないと。 借り3つのうち2つ分くらいにはなるはずよね。


 入れ替わったワタシは、状況をすべて理解しましたので、サナは安心してね。


「今までの友人は尻込みするでしょうけれど、ワタシと競い合った者たちなら可能性が有りましてよ!」



 ワタシは真っ先に剣道場に向かった。 千晴が面を脱いでいた。長い黒髪が美しい長身の美しい女性だ。 ワタシは、千晴に手を振った。


「めずらしいわね、サナ。 わたしに呼ばれる前に来るなんて。 どう久しぶりに1本勝負しない。」

「いいわね。ぜひお願いするわ。」

「そうこなくちゃね。あなたの防具一式は部室のロッカーに残っているから着替えてきてよ。」

「ええ、すぐに着替えるわ。」


 ワタシは、千晴と打ち合った。 10試合くらいした後で、思った。 ワタシは弱くない。 彼がイタールが強すぎただけだ。


「ワタシと打ち合える人は、インターハイ出場選手とサナだけよ。」

「えっ? そうなの? 千晴と打ち合える剣士が他にもいるなんて、信じられないわ。」

「ワタシは強いつもりだけれど、ワタシの先祖は、妖刀を破壊する旅を終わらせるくらい強かったそうよ。ワタシもまだまだ強くなる伸びしろがあるはずだわ。」

「そうなのね。 でも、剣氣を使えるひとは少ないでしょ。」

「少ないけれど、剣道の試合では少ししか使わないようにと言われているからね。」

「どうして? そんな手加減が必要なの?」

「試合では剣氣を使わないという縛りがあるのよ。 もちろん、体力が衰えたご老人は堂々と使っているけどね。 剣氣を使えない相手に使って勝っても、むなしいだけだわ。」

「そういう考え方もあるのね。」


 しばらくして、千晴がワタシをじーっと見つめてきた。


「どうしたの? ワタシの顔になにか付いていますか?」

「わたしに頼みたいことがあるのでしょう?」

「話が早いわね。 生徒会長に立候補させられて困っているのよ。 メンバーになってくれるひとがいないのよ。」

「それで、ワタシのところに来たのか? 正解ね。

 副会長をやってあげるわ。」

「ありがとう。 助かるわ。」


 中路千晴は、1人目(副会長)になってくれた。



 次にワタシは、バスケ部に向かった。


 加護琴がレイアップシュートを決めていた。

 接戦の末、1点差で勝ったようだ。


 琴と目が合ったので、ワタシは笑顔で手を振った。


「サナ、来てくれたのね。」


 琴は笑顔で手を振りながら駆け寄ってくれた。

 琴を抱きしめようと手を広げて待っていたら、体当たりで吹っ飛ばされた。


「琴、いまのは元気よすぎるんじゃない?」

「まさか、分かっていないなんて言わないわよね。

 この点差を見てよ。」

「接戦の良い試合よね。」

「ちがーう。サナがいてくれたら、10点差くらいの大差をつけて勝てたって、言っているのよ。 ポスト役が1人減ると戦力が大幅に減るのよ。 言ったわよね。」

「ええ、もちろん、覚えているわ。」

「だったら、次の試合は出てくれるのよね。」

「は、はい。」


 琴は満面の笑みを浮かべてくれた。


「約束だからね。 ところで、ワタシのところに来た理由はアレだよね。」

「コート全面を見渡す琴にはお見通しのようね。 そうよ、生徒会長に無理やり立候補させられて困っているのよ。 琴には、会計をお願いしたいわ。 たとえ、どんなに良い予算案を出しても文句は出るからね。 広く学校全体を見渡して、バランスを取れるひとに会計になって欲しいのよ。」

「素直でよろしい。 日光簿記1級の活動基準原価計算の腕前を見せてあげるわ。」

「むずかしい知識を持っているのね。 今度、ワタシにも教えてね。」

「もちろんよ。ワタシが分かりやすく教えてあげるわ。」


 加護琴は、2人目(会計)になってくれた。



 ワタシは文学部の部室に来た。 外が暗くなってきても電気という明かりがあるから快適に本が読める。 ワタシの世界に欲しいくらいだ。 クーラーと冷蔵庫の次に欲しいかな。


 部室では、高橋祐輝がスマホで小説を書いていた。 あんな小さな板で、文章が書けるなんて便利な世の中よね。 祐筆という身分が高いひとの代わりに文章を書く仕事の「祐」と、書いた文字が輝きますようにという願いを込めて、【祐輝 ゆうき】と名づけられたそうだ。 名前負けしないように、ペン習字を頑張ったそうで、彼女の書く文字は芸術作品のように美しい。 それだけでなく、彼女が書く文章はとても分かりやすく、ひとのこころを打つ内容だった。


「あなたがここに来た理由は、わたしにも分かるわ。」

「それなら、話が早くて助かる。」

「Gは本当に好き勝手やってくれるわね。」

「この部屋にも出るのか?」

「Gに困っている人は、教師生徒を問わず多いわよ。」

「じゃあ、助けると思って、生徒会に入ってくれないか?」

「ワタシは書記しか出来ないわよ。」

「書記を頼みたいんだ。」

「じゃあ、決まりね。 ワタシの強みを生かせる場をくれて、ありがとう。」

「御礼を言いたいのは、ワタシの方だ。」

「御礼のハグなら、歓迎するわ。」


 ワタシは、祐輝を抱きしめた。


 祐輝は3人目(書記)になった。



 ワタシは、市の体育センターの読書スペースに行った。


 そこには、ワタシの頼れる相棒の三条柚葉(ゆずは)と仲間たちが静かにマンガを読んでいた。 コンビニ前で集まると店に迷惑が掛るし、暑い。 ここなら冷房が効いて涼しく、静かにしている限り、どんな格好の者がいても、注意されない。 無駄なケンカもしなくて済むし、マンガを読むだけでも知識が増えるし、少しだけだが教養につながる本があるからだ。 最初は、柚葉の仲間も本なんて、と嫌がっていたそうだが、今では堂々とタダ読みが出来て涼しいココがお気に入りだ。


「柚葉、少し話せるか?」

「サナか、あと少しでこの巻が読み終わるんだ。急ぎでなければ、10分ほど待っていてくれないか?」

「ああ、待つよ。そのくらい。」


 ワタシは柚葉を待つ間に、いっしょにいる仲間に話しかけた。


「優等生のサナさんだ。ワタシらのような者と話したら、内申点が下がるんじゃないか?」

「ワタシの内申点が下がった分だけ、あなたたちの内申点が上がるなら、うれしいな。」

「世の中というか、学校はそんなに甘くないんだよ。」


 最初に会ったころは、気合の入った目立つ格好をしていた彼女たちだが、最近は大人しい格好をしている目立つ装いは各自ワンポイントだけになった。


「待たせたな。サナ。話も盛り上がっていてな。」

「なんの本を読んでいたんだ?」

「理想の美女7人に愛される生活。」

「ハーレムものか? 好きになれないな?」

「ハーレムものとは少し違うかな? 気が向いたら読んでくれ。」

「気が向いたときに、読むわね。」

「読む気無いでしょ。まあいいわ、ワタシに会いに来たってことは・・・」

「お察しの通り、生徒会に入って欲しい。 私たちの学校には風紀委員会は無いけれど、生徒会に風紀という役職があるのは、知っているわね。」

「ああ、知っている。風紀のルールを1つだけ決めていいんだろう。よほど問題があるルール以外は学校側も文句を言えないらしいな。 本当だかどうか怪しいがな。」

「わたしが決めたいルールは、目立たない程度のナチュラルメイクを許可するというか推奨するルールね。」

「そんなルールが通ると思うか?」

「どうせ、就職するときには、女のくせにメイクもしないのか?と嫌味を言う男性と同じ職場で働くのよ。 だったら、今のうちから練習する時間が欲しいわ。 就職実績を上げるために必要と言えば、反対も出来ないでしょ。」

「サナさんの悪知恵には、かないませんわ。そういうことなら、生徒会の風紀を引き受けてもいいが、ワタシの仲間たちはどうなる?」

「もちろん、柚葉といっしょに活動してもらうわ。 チカラなき正義は無力だからね。」

「ワタシたちを良いように使おうってか? 賛成できないな。」

「風紀の仕事に協力的だったという実績が出来れば、学校側も内申書に悪いことが書けないわ。」

「その内申書って、なんなのか教えてくれや。」

「まあ、高校への密告書というか、チクリというか、悪口ね。」

「腹立つな。それは。」

「でもね、内申書さえ良ければ、高校入試の点数が悪くても高校に合格できる可能性というか確率が上がるわ。 逆を言えば、入試で満点を取っても内申点が悪ければ不合格にされるわ。」

「そんなに、えげつないことをやっているのか、教師どもは?」

「そうよ、だから、生徒会に協力的な生徒のグループと見てもらえれば、損どころか得になるはずよ。」

「大人は誰もそんなことを教えてくれなかった。」


 柚葉の仲間たちは、柚葉の返事を息をとめながら見守っていた。


「みんな、どうだろうか? ワタシは、サナと仲間のお前たちのために、生徒会に入りたい。今まで通り、力を貸してくれるか?」

「もちろんです。」

「ついて行きます。」

「なにをすれば良いですか?」

「みんな、ありがとう。」


 柚葉は、サナの方に向き直って言った。


「これからも助け合おうぜ。」

「ええ、よろしくね。 柚葉。」


 三条柚葉は、4人目(風紀)になった。



 ワタシは、サナとして、4人の仲間とともに、後藤先生たちがいる職員室に生徒会のメンバーとともにあいさつに行った。


「後藤先生、おかげさまで生徒会のメンバーが集まりましたので、ご報告に参りました。」

「おお、さすがは、石田くんだ。 わたしは君を信じていたよ。」


「副会長の中路千晴(ちはる)です。よろしくお願いします。」

「会計の加護(こと)です。よろしくお願いします。」

「書記の高橋祐輝(ゆうき)です。よろしくお願いします。」

「風紀の三条柚葉(ゆずは)です。よろしくお願いします。」


「ああ、よろしく。 がんばってくださいね。」


「はい、がんばります。」x5



 翌朝から、校門に2つのグループが現れた。


 表門を、風紀の三条柚葉と3人の仲間の計4人が整列して、「みんな、おはよう!」と、登校する生徒に声を掛けた。

 裏門を、生徒会長の石田 紗菜と3人の仲間の計4人が整列して、「みんな、おはよう!」と、登校する生徒に声を掛けた。


 最初は多くの生徒がビビっていたが、3日もすれば慣れていった。 今期の生徒会は、文武両道だというイメージが湧いたので、学校内のいじめが数多く発見された。 今まで隠し通されてきた学校の汚点が明るみに出されたのだ。 警備会社の社長で警察OBであるサナの父と、弁護士であるサナの母も手伝ってくれた。 イジメは犯罪だ。 石田 紗菜と生徒会が目を光らせている。 そう理解した生徒たちは、中学生は大人として扱われるということに気付いたのだった。


 そして、学校内の雰囲気が改善した理由は、学年主任の後藤先生が、石田 紗菜を生徒会長に立候補させたことが大きいと評判になった。 後藤先生が校長になる日も近いと誰もが思った。


 しかし、そうは成らなかった。 ある日、酔っぱらって、橋の転落防止の柵の上に登って演説をぶっていた姿を最後に、後藤先生は学校に来なくなった。 橋から落ちて、おぼれ死んだそうだ。


 後藤先生の死後に、後藤先生が学校内の教師や生徒たちにしていた、パワハラ、セクハラ、モラハラが明らかになった。 もう悩まされなくなると安心した被害者たちの精神が回復して、裁判で訴える気力が回復したのだ。 生徒会長のサナの母親が弁護士だと公表されたこともあり、弁護士に相談しやすい環境になったからだった。 もちろん、サナの母親は無料相談などしなかった。 30分5,000円を前払いすることを相談条件にしていたが、信頼できるサナの母親だから高くないと思う者がほとんどだった。

 後藤先生の遺族は、被害者たちから集団訴訟を起こされて、3親等までの親族が連帯で慰謝料というか賠償金を払うことになった。


 それとは対照的に、サナの生徒会は順調だった。


 部活で知り合った中路千晴と加護琴、勉強で知り合った高橋祐輝、ケンカで知り合ったスケバンの三条柚葉とその仲間たちが生徒会の助けになってくれた。 残念ながら、男子が一人もいないので、サナに素敵な彼氏を引き合わせることが出来ないことだけが、心残りだった。


 生徒会の決め台詞は、「あなたの実力を十分に理解している私ならば、あなたが活躍する最高の舞台を用意できるわ!」だった。 部費の獲得、実力の発揮、面子を保つなどの利害が満たされたので、悪く無い取引だった。


「政治は結局は利害調整なのよ。そして、シンボルとなるナンバーワンが強力なら、優秀な臣下たちも実力を発揮しやすくなるのよね。」



 シャルロットは、サナの問題が解決すれば、元の世界に帰ることになると理解していた。 だから、今回は、早めに手紙を書いて、サナへの引継ぎを進めていた。


 月曜日は、剣道部に行って、副会長の中路千晴と剣の修行に励むこと。

 火曜日は、文芸部に行って、書記の高橋祐輝が書いた小説を読んで、感想というか賞賛を述べること。

 水曜日は、今の成績を維持するために、家で勉強すること。

 木曜日は、バスケ部に行って、会計の加護琴たちと練習すること。

 金曜日は、風紀の三条柚葉たちと学校内の見回りをすること。

 土曜日は、三条柚葉たちの勉強を手伝ったり、楽しく遊ぶこと。

 日曜日は、剣道部とバスケ部を中心に、試合の助っ人をすること。


 ふう、我ながら、完璧な1週間のスケジュールだわ。 サナもきっと喜ぶわ。


 そうそう、大事なことを忘れていたわ。


 ゴキブリを10匹、やっつけました。 居住環境は清潔にしないとダメよ。


 これで、借り3つ分は、返せたわよね。


 では、次の入れ替わりを楽しみにしているわ。



 元に戻ったサナは、手紙を読んで、叫び出した。


「なんなのよ、これ? わたしの自由時間が無いじゃない。 あんまりだわ。

 それに、ゴキブリって書かなくても、Gでいいじゃない。 配慮が足りないわ。」


 サナが、ゴキブリを10匹の意味に気付くまで、1か月掛ったのだった。


 第02話 終わり


【読者様へ】


 あなたの30秒で、この作品にパワーをください。

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