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163  作者: Nora_
10/10

10

「――という会話をした」

「よし、それなら見せてあげましょうか」

「え」

「私は別に構わないわよ? 水和先輩や伊佐先輩にしなければならないというわけではないもの」


 多分、彼女のいまの話を聞いたらきっと水和も変えてくれることだろう。

 あ、だけど彼女には言えなくてこちらが責められる可能性があるからなるべくそういうことはない方がいいのかもしれない。

 いや、間違いなくそうなるだろうから水和の前では少し抑えてほしかった。


「なんてね、当分の間は大人しくしておくわ」

「課題も終わったからゆっくりできる」

「そうね、さすがに外は暑くて移動したくないわ」


 それでも外にいる間は涼しそうな顔をしているからすごい話だ。

 ちょっと格好つけたがるお年頃なのかもしれない。

 私が暑さについてなにも言わずにいるからかもしれない。


「はぁ、それでもずっと夏休みならいいのに……」

「どうしたの? なんか翔子らしくない」

「部屋にいられているときが一番落ち着けるのよ」


 なんとなく分かる気がするが彼女らしくないから違和感がすごい。

 これまでの態度は装っていただけなのだろうか?

 結構面倒くさがりというか、委員長タイプというわけではないとか?


「それにここならあなたがいてくれるじゃない」

「あ、学年が違うことを気にしてる?」

「当たり前よ、それにあなたは来年三年生になってしまうし……」


 私としてはそこまで考えてくれているだけで十分だった。

 根拠はないが、そこまで続けられるという気がしてくる。

 実際はそこまで簡単な話というわけではないものの、敢えて悪く考えたところで気分が滅入るだけだから必要はないだろう。


「あなたを抱きながら寝たらもっと気持ちよく寝られると思うわ」

「今日はそうすればいい」

「それならこっちに来て」


 正面からではなく背後から抱きしめることが好きなようだった。

 こっちの背中に顔を埋めながらそうするから苦しくないのかと聞きたくなる。

 が、すぐにすーすー寝始めてしまうから聞いたところで意味はなかった。

 この時間はこっちも寝たり、考え事をしたりするのに使っている。

 というか、そうしないで壁を見つめているだけだとやばい存在になってしまいそうだから。

 意外とこちらを抱きしめている力が弱いから頑張って向きを変えてみた。

 そうすると胸辺りに彼女の顔がくるから抱きしめておく。

 こういうときだからこそなにも引っかからずにできることでもあるため、それはもう長い間そうしていた。


「私は側にいる」


 そういう風に伝わってくれていたら嬉しかった。

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