ばけもの子供の物語:心
あるところに、ばけものと呼ばれる子供がいました。
なぜならば、その子供は、他の子供達と違って、嬉しさや悲しさを感じなかったからです。
気味が悪いと思った子供達は、そのばけものと関わらないようにしていました。
すると、ばけものはますます、普通から離れていきました。
驚いたり、怒ったりすることもなくなっていったのです。
喜怒哀楽をなくしてしまったばけものは、もっとばけものになっていく可能性もあったでしょう。
しかし、ばけものはある時に、ただの人間の子供に戻ります。
一人の少年が、そのばけものを気にかけて、手を差し伸べたからです。
一緒に遊んだり、お話をしたり。
何気ない時間をつみかさねていきます。
けれど、そんな当たり前の事が効果的でした。
ばけものは、感情を表すようになりました。
よく笑ったり、よく泣いたり、怒ったり、驚いたり。
感情を表に出すようになって数日たてば、遠巻きにしていた子供達は、次第にそのばけものと関わるようになっていきます。
もう誰もばけものをばけものと呼ぶものはいません。
今は、もともとあった心という名前で呼ばれるようになりました。