仲直り(フィリップ視点)
フィリップ視点が続きます
塔には数人の使用人たちが残っていたが、彼らは中央騎士団の身分証を見せると投降した。彼らにヴィーの居場所を聞くと、魔力生成器という道具にいれられているかもしれない、と言う返事が返ってきた。
別の部屋でヴィーの杖を回収し、魔力生成器があるという部屋の扉を開ける。そこにあったのは、豪華な棺だった。これが魔力生成器か、とその棺に近づく。
「う……あ……」
棺から小さなうめき声が聞こえてきた。間違いない、ヴィーの声だ。
「ヴィー!!」
僕は急いで棺を開ける。棺の中に寝かされていたヴィーは、ぼんやりとした瞳で虚空を眺め、時折苦しそうにうめき声をあげていた。
「ヴィー、大丈夫か!?」
「だ……し……て……」
彼女は弱々しい声でそう告げる。僕は急いで彼女を抱き上げた。
「ヴィー、遅くなってごめんね。もう大丈夫」
「うぅ……」
虚空を見つめていた瞳に光が戻る。彼女は二、三度瞬きした後、「ふぃる……?」と呟いた。
「うん、僕だよ」
彼女の真っ赤な瞳を真っ直ぐ見つめて告げる。僕は彼女に持っていた杖と帽子を手渡した。ヴィーは「そう……」と返事をした後、「あそこの……、くさをとって」と塔に映えていた雑草を指さす。言われるままに手渡すと、彼女は何かを唱えた後、おもむろに草を口に含んだ。
「ヴィー!? 何してるの!?」
僕はその様子に驚いて、素っ頓狂な声をあげる。彼女は二、三回雑草をかむと、「ふぅ」と息を吐いた。
「……ありがと」
「どういたしまして。ところで、さっきのは?」
「……ああ、この草? 簡易的な痛み止め。魔力生成器って奴にいれられてたせいで、ずっと痛みが後を引いてたから」
そこらへんに生えてる草から作れるから便利なのよ、と笑う彼女に、「もう痛みはない?」と聞く。
「まだ体の節々は痛いけど、とりあえずは大丈夫」
彼女はそう言って立ち上がった。
「どこに行くの?」
「決まってるでしょ? 家に帰るのよ」
「じゃあ送っていくよ。痛み止めで無理に抑えてるんだろ? 無理はしないほうがいい」
「大丈夫よ。いくら簡易的とはいえ、家に帰るくらいの時間は持つわ」
「僕が大丈夫じゃないんだ」
「あんたもの好き通り越して酔狂ね。わざわざ縁を切った相手を家に送るの?」
ヴィーは僕にじっとりとした視線を向ける。僕は真っ直ぐ彼女の目を見て口を開いた。
「僕はヴィーに対して縁を切るとか、二度と会いたくないなんてこれっぽっちも思ってない。それどころか、愛してる」
「嘘よ」
「本当だよ」
「あんなドン引きするような尋問をしたのに?」
彼女は僕に試すような視線を向ける。僕はしっかりと頷いた。
「尋問するあたしを見て、固まってたじゃない」
「それは……、ヴィーが、とっても綺麗だったから」
「は?」
予想できない答えだったのだろう、彼女は目を丸くする。
「冷酷に口角を釣り上げるヴィーが、恐ろしいくらい美しかったから。目を奪われて、動けなかったんだ」
「頭おかしいんじゃない?」
「かもね。でも、ヴィーと一緒にいれるのなら何でもいいや」
からからと笑う僕に対し、彼女は「あんたがもの好きの変態っていうこと、すっかり忘れてたわ」と言う。
「ひどいなぁ……。まあ、否定はしないけど。ヴィーはこんな僕は嫌?」
「……別に。あんたなんだし」
ヴィーは照れ隠しなのか、少し視線をそらしながら答える。そんな彼女がいとおしくて、僕は彼女の体に響かないよう注意しながら、ヴィーをそっと抱きしめた。
読んでくださりありがとうございました。




