乗馬デート?
フィリップの了承が取れたあたしは、すぐにサバトへの手紙を書いた。そしてその手紙に魔法をかけると、それは空中に浮かんで消える。
「よし、届いたわ」
「今ので届いたんすか?」
怪訝な顔を向けてくるアールだったかカールだったかに対し、「届いたわよ」と答えた。
「多分明日には返事があるんじゃないかしら。ということで、あたしは帰る……、あ、家のドア壊れてるんだった」
材料をウルのところに避難させて……、ついでにウルに宿屋を紹介してもらおうか。そう考えていると、フィリップが声をかけてきた。
「ヴァイス、行くところある?」
「ウルに宿屋を紹介してもらおうと思って。材料を避難させないとだし」
「今の時期、宿屋はどこもいっぱいだよ。ヴァイスがもしよかったらなんだけど、僕のとこに泊まっていく?」
「あんたのとこに?」
聞き返したあたしに対し、彼は「うん」と返事した。
「僕の住んでる離宮になるけど、どうかな? 日光が入ってきにくい部屋も用意するし、美味しいお菓子も準備させるよ。もちろん薬の材料を置いててもいいよ」
美味しいお菓子か……。思わずそう呟くあたしに対し、「自慢じゃないけど、うちの料理人の作るお菓子はとても美味しいんだ」と答える。
「迷惑じゃなければ、お願いしてもいい?」
「分かった。すぐに準備させるね」
あたしがお願いすると、彼はそう返事をして、近くにいた侍従に何かを告げる。それに対しあたしは「ゆっくりでいいわよ。どうせ一度家に帰って、材料を取ってこないとだし」と答えた。
「あのさ、それなんだけど……、送っていこうか?」
「送る?」
フィリップの言葉に首をかしげる。すると彼は「うん。ここからヴァイスの家ってそこそこ離れてるだろ? 馬車……は森の中だから無理としても、馬を使えば早いはずだよ。家にある材料を取りに行くんでしょ? 荷物持ちは任せて」
「病み上がりだけど大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。むしろ体は軽いし」
「そう、ならお願いするわ」
了承すると、彼は「やった!」とうれしそうな表情をする。そしてベッドから立ち上がると、彼はあたしの手を引いて「こっちだよ」と厩まで案内してくれた。
「紹介するね、僕の愛馬のメテオールだ」
彼はそう言いながら白馬の背をなでる。すると白馬は、きもちがよさそうにいなないた。
「よろしくね」
挨拶すると、その子は返事をするようにいなないた。そしてフィリップに対し頭をすりつけるように甘える。信頼関係があるんだなぁ、と考えていると彼はその子に「頼んだぞ」と声をかけてから、その背にまたがった。まるで絵本に出てくる白馬の王子様だ。あたしはおもわずぼぉっと見惚れる。
「ほら」
彼は笑顔であたしに手を差し伸べてくる。その手を取ろうと近づいた時、彼はあたしの腰を抱き上げて前に乗せた。あまりに近い距離にドキドキしていると、「じゃあ、行こうか」とフィリップが言った。それを合図に、メテオールは歩きはじめる。普通より高い目線に、いつもより早く流れる景色。あたしはすっかり夢中になっていた。「おぉ……」と感嘆の声をあげるあたしに対し、彼は「落ち着いたら、景色がいいところにでも遠乗りに行こうか」と言ってくれた。
馬に乗ったためか、いつもより早く家についた。フィリップは壊されたドアを見て、「すぐに修理を手配するよ、もちろんヴァイスは払わなくていい。カールに弁償させる」と言ってくれた。
「今月ちょっと厳しかったからありがたいわ」
あたしはそう答えて薬棚から材料を取ってきた。その後家にあった貴重品を確認する。良かった。盗られてない。しばらくは家に帰れなさそうだから、庭の畑に行って薬草を収穫する。それに乾燥魔法をかけて保存性を高めた後、フィリップの方に向き直った。
「りきゅう……だっけ? そこに行く前に寄り道していい? 作った薬が想像以上にあったから、ウルのところで売りたいの」
「うん、いいよ。確か、ブラウン商店だよね?」
フィリップの確認に頷く。「材料とかは回収できたわ」というと、「じゃあ、そろそろ行こうか」という答えが返ってきた。彼は材料とか薬とかが入った袋を「メテオールに乗せるから」と言って受け取る。それを彼が馬に乗せるのを見届けた後、再度フィリップの手を借りて馬に乗った。
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