29話『血と怪物と』
危うく落下死しかけたパリスだったが、落下地点には治療の専門家であるオイノーネとカサンドラが待機していたのでどうにか命は繋いだ。
「なあ首とか手足にめちゃくちゃ厳重に包帯巻かれてるの、すげえ不安なんだけどオレって墜落してどうなってたの?」
「……できるだけ暫く動かないでね」
「……ペンテシレイアはショックで気絶しましたものね」
『お前も念の為に今のうちマグネットコーティングしておくか?』
「しないよ! 怖い!」
包帯の下には複数の薬が接着剤のようにべったり塗られていて、手足の感覚が酷く鈍いので恐ろしくなりながらもパリスは安静に木の寝台へ寝転がっていた。
それでもメカロスに非難の声を上げるのは止めない。
「っていうか落ちたじゃん! あの翼! 大丈夫って言っただろ!?」
『失敗は成功のホニャララ』
「ホニャララ!? 目を逸らすな!」
危うく死ぬところだった。あれだけ自信満々に送り出したというのに、まったくの未完成品でダイブさせられてしまったのだ。
『ええい! 科学というのは失敗と試行錯誤の繰り返しだ! 失敗して残念だったねで終わらせず、なぜ失敗したのかを考察、改善して先に繋げることがホニャララ』
「ホニャララ!?」
『とにかく続きは後日、改良後だ! 解散!』
そう一方的に言って手を振り回し、メカロスは壊れた翼を持ってそそくさと去っていった。
「あ! おいちょっと!」
「……とりあえず、今日の飛行実験はこれまでだね。本当に大丈夫かなあ」
「不安になる落ち方でしたね」
「そんなに? ねえ落ちる寸前の記憶飛んでるけど、オレ大丈夫なの?」
「とにかくキミは一晩ぐらい、その場から一歩も動かないでね……」
「お兄様、わたし達も抱きつかないように我慢しますから……」
「怖い!」
そう真剣な顔で言われて、パリスは身じろぎすら出来ずにその場に座ったまま過ごすことになってしまった。
他の者らは撤収して、食材や水の確保に船の点検など仕事を続ける。翼が完成しようがしまいが、脱出するには船と食料が必要だ。
パリスは丘の上からぼーっと眺めていて、夕食時間になったら素焼きのコップに入れた飲み物をオイノーネが持ってきてくれた。
「はい。固形物食べると崩れるかもしれないから、飲み物で滋養を取ってね」
「崩れるの? ねえ何が崩れるの?」
「た、体調とかだよ。はい! これ」
「ああ……ありがとう」
オイノーネが持ってきたのは水に一晩漬け込んだアーモンドを細かくすり潰して水と混ぜた飲み物で、白濁した牛乳に似ていた。軽く塩味がついていてミルク系のスープといった味わいだ。
「アーモンドミルクって見た目は真っ白になるから余計にアレっぽいよね」
「人が動けない上に飲まされてるときそういうこと言わないでくれる!?」
「ゴメンゴメン。それにしても、メカロスの翼はどうなるんだろうね?」
「わからんけど、うーん……まあ確かに、一回や二回の失敗で無理って判断するのも早いかもな。あいつだって必死なんだろうから」
自ら墜落して命を落としかけた翼を完成させるために、死にかけて体を改造してでも生き延びて努力しているのだ。
たった一人、小さな島で限りある材料を集めて、誰からも助言も得られず、理解もされずに孤独に戦っていた。
これまで何度も失敗し続けて、それでも自分に賭け続けるメカロス。
「……オレも似たようなものだからなあ」
それは予言の未来を変えようと、悲惨な死を回避しようとあがく自分の姿にわずかに被って見えた。
だから酷い失敗をしたメカロスも、まだ信じてみようと思えたのだろう。
感慨に浸っているとオイノーネはやや半眼になりながら言う。
「似てるっていうけどキミ、危うく治療目的でメカに改造されかけたんだから怪我に気をつけなよ。本当に似てる姿にされるよ」
「改造されかけたの!? そんなに重傷だった!?」
「『改造して翼を骨格に植え付ければ適性が上がるやもしれぬ』とかそんなことも言ってたから拉致されて強制改造手術とかにも注意が必要かも」
「あいつ! ちょっと認めかけてたのに!」
危うくメカパリスに改造されるところだった。危なかった。
長時間オイノーネやカサンドラが近くにいると傷口が開いて火傷のように腫れ上がり膿み出すような痛みがあるため、オイノーネもやむを得ずパリスにゼウスミルクと回復の水を飲ませたら船の方へと戻っていった。
少なくとも一晩は座ったまま傷を癒やさなければいけないらしい。パリスは自分の傷具合にやたら不安を募らせるのであった。
*****
迂闊に眠れば寝返りでバラバラになるのでは?という恐怖からパリスは寝ることもできずに夜を過ごしていた。
船の近くでキャンプをしている皆はもう眠ったのだろう。そちらから音は聞こえてこない。逆に炉を設置した場所はメカロスが作業をしているのか、轟々と燃える炎の音と火花が時折飛び散るのが夜闇でよく目立っていた。
せめて明日には治ってくれと祈っていると、温かい風と共に星屑を散りばめたような光の粒子がパリスに吹き付けてきた。
『パリス。私の勇者よ、助けに来たぞ。ケイローンから薬を貰ってきたからこれを付ければたちまち癒えるはずだ』
「アテナ! ケイローンの薬だって? それは助かる!」
夜空が透けるような、半透明の姿でほのかに輝きながら現れたのは女神アテナだった。今日はカサンドラを経由していないので、厳しい兜をかぶった切れ長の目つきの美女が、槍と薬壺を持ってパリスに近づく。
賢者ケイローンの薬。ギリシャでも有名な霊験あらたかな薬の一つである。あらゆる傷や病にほぼ万能の効果を見せるのだが、ケイローン自身がヒュドラ毒を受けた際にはさすがに毒が勝っていたのか効果がなかった。
トロイア戦争にもアスクレピオスの息子たちであるマカオーンとポダレイリオスが持ち込んでいたのだが、やはりヒュドラ毒にやられたピロクテーテスは見捨てられたので効かないに違いない。(後にピロクテーテスを呼び戻したときに治療したともされるが、つまりは最初に離脱するときには治療できなかったのだろう)
それはともかく、パリスもトロイア戦争の場でその薬の効果をよく知っていた。
なにせ矢で撃ち抜いたはずの敵将があっという間にケイローンの薬で傷を癒やして戻ってくるのだから頭を悩ませるものだった。アスクレピオスの息子コンビは、何故か父親の薬ではなくケイローンの薬を多用しまくっていた。
ともあれ、効果は確かな傷薬である。アテナは白く輝く指先に、蜂蜜色にとろける膏薬を浸けてパリスの首、腕、腰から太ももの付け根を塗った。神の手ずから傷を癒やされる感覚に、体中の皮膚が引き締まって活力が漲る感触をパリスは得た。
「おおっ! 力がもりもり湧いてくる!」
立ち上がって力こぶを作りながらパリスは治ったことを喜んだ。
『ああ! すぐに動くな! 体がバラバラになるぞ!』
「神から見てもそんなに酷かったのオレ!?」
『待っていろ。包帯を換えてやる』
アテナが手を翳すとパリスの傷口を覆っていた包帯はハラハラと解けて落ちた。
そして空に現れたのはタイニアと呼ばれる神聖な帯紐である。女神が髪の毛を飾ることによく使われる他、祭儀服の装飾や聖像・神木・生贄などとにかく霊的なものに利用されるものだ。
それは宙に浮かびながら蛇めいて自在に動き、パリスの手足へと強く巻き付いた。ヘラクレス結びという簡単には解けない結び方である。
『これでいい。動いてみろ』
「きつく結ばれてるけど、動かすのに支障はない。不思議だ」
『私は戦争の知恵を司る神だからな。アレスならば兵士の治療など考えないが、効果的に兵を癒やして戦争に勝利するというのも私のやり方だ』
パリスは近くに置いていた弓を手に取ると、軽く引いて矢を放ってみた。
狙い通りに木の幹へ矢は吸い込まれ、小気味いい音を立てた鏃が深々と食い込み貫通した。
「おお! なんか強くなった気がする! まさかこのタイニアにいい感じの加護が……!」
『いや……単にテーピング技術による筋力の補強作用だな』
「なんでそんなところ現実的なの!?」
『知恵の女神だからな』
テーピングは怪我の予防や再発防止に動きを制限することが大きな目的であるが、特定の筋力を補強することも結び方次第では可能だ。
アテナを祀る最大の儀式、パナテイア祭でも競技会が行われるようにアテナもスポーツ競技を好み、そのための知恵も与えるとされる。
「ともあれ、ありがとう! ……ところで怪我もそうだけれど、割と今困ってて……」
『わかっている。だが、イカロスを信頼しろ。お前達ならば自らの力で乗り越えられるはずだ』
アテナはそう言って、頼ろうとしてきたパリスを制止する。
彼女としてもこのままでは英雄としての活動が続行できないぐらいの問題ならば、他の英雄たちのようにヘルメスの靴を貸したり、神木から船を作り出させたりといった支援を与えるのであるが、ここにはメカロスがいる。
『イカロスは言ってみれば、私とヘパイストスの系譜だ。知恵と技術の神の子孫ならば、きっと私が手を貸さなくとも解決できるはずだ』
「そうなのか……アテナがそう言うならオレも信じるけど」
イカロスの血筋は大本を辿ればアテネ王エリクトニオスに当たる。
エリクトニオスは以前に登場した鍛冶神ヘパイストスが、妻に嫌われモテない男故の勘違いから厳しいが公平に接してくれるアテナに欲情してしまい、子供の素的な液体を彼女の足にぶっかけたところ生まれた。
ヘパイストスとしては大変バツの悪い思いをしたのだが、アテナの方は生まれたエリクトニオスを養育して、後にアテネの王になった。エリクトニオスの孫の孫の孫がイカロスに当たる。
『敢えて助言するならば、必要なものは既に揃っていると伝えておけ。後はお前達次第だ。私がいつでも見守っている……』
「わかった!」
『じゃあ私はイオルコスでアルゴー船作りを手助けしてやらねばならないからもう行くぞ。イカロスの使った設計図というのは便利そうだな……広めておくか……ではさらばだ』
「本当にこっちを見守ってるのか!?」
ギリシャ神話の神々の推し英雄というのは決して一人だけではないので、同時代に活躍するならばあちこちに目を向けないといけないのだ。
アテナの気配が去っていき、パリスは一息ついて体を伸ばしたりして確かめる。
オイノーネとカサンドラの治療に、ケイローンの薬、アテナのテーピングとおおよそギリシャでもトップクラスの看護を受けたため、すっかり傷は良くなっている。
「次に飛行実験するときはちゃんと着地を考えておこう……」
とはいえ、何度もこんな重傷を負ってはいつ天に召されるかわからない。ギリシャ英雄なら、ちゃんと心構えさえできていれば高所から落ちても多少は無事だ。
ペガサスに乗って天を目指し飛んでいたベレロポンだって、遥か上空から墜落したのに腰の骨を脱臼したぐらいでなんとかセーフだったという。そんなノリで。
しかしながら、次に実験で飛ばされる翼のことも気になる。パリスは皆が寝静まっている海岸ではなく、メカロスが夜通しで作業をしている炉の方へと足を向けた。
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焚き火によって明るく照らされている炉の近くでは、木の板を立て札のようにしてなにやらそれに描かれた設計図を前に、メカロスが唸っていた。
『うーむ……改造プラン【メカパリス1号ゼウス形態】は空を飛ぶ……武器は斧。【2号ハデス形態】は地面を潜る……武器はドリル。【3号ポセイドン形態】は海を進む……武器は大雪山おろし。どれでいくか。やはり変形で全部盛り込むか……』
「盛り込むな!! なんでオレ改造するプラン練ってるんだ!?」
明らかにサイボーグ手術の準備であった。設計図には機械化したパリスが描かれていたが、控えめに見てメカロスの後継機みたいなドラム缶型である。
『むっ! 貴様、怪我は治ったのか!?』
「アテナが治してくれたよ! っていうか人間型じゃないと模造的にダメって結論出してただろーが!」
『むう……いや待て。これはだな、飛行ユニットが割といい感じに性能上がりそうだから遊び心としてだな』
「成功してないのに遊び心を……うん? 修理上手くいったのか?」
どうやらメカロスは既に翼を直しているようで、それの出来栄えが良かったため機能を盛り込もうとしたようだ。パリスの改造込みで。
『正確に言うと更に性能を上げる方法を見出した、だな。これは偶然の発見でもある』
「というと?」
『吾輩はひとまず飛行ユニットを元の形に復元してみたのだ。そうすると、何故か実験前よりも動きが良くなっている。僅かにだがな。設計自体は変わっていないのに、なにが違うのか……それは墜落したことで、パリスの血が混じったことだ!』
「血ぃ?」
『思わずウワッグロッと言うぐらいの血だ!』
「皆が皆、オレの怪我をヤバい案件だって言うんだけどマジでどうなってたの!?」
本当に次は怪我しないように気をつけよう。パリスは改めてそう念じた。
『それはともかく、血だ。血を混ぜるのが良かった。思えば恐らく父ダイダロスが作った蝋の翼も、内部に自らの血を入れていたに違いない』
「血って……なんでそんなものを入れるんだ?」
『神血の効果だ。神々の血には不思議な効果があるものが多い。特にクレタ島を守護している青銅魔人タロスには、ヘパイストスの神血が入れられていたことで無限に動くことができたのだ。ダイダロスの翼も、共に工芸の神であるアテナとヘパイストスの血が混じったダイダロスの血によって性能はアップしていた!』
またそれ以外でも、リムノス島の迷宮にいたような自動人形の動力は冥界の炎であり、あれはプロメテウスの血から生み出された植物を加工して発生させているので彼の神血によるものだ。これはコルキスにある青銅の猛牛にも使われている。
ギリシャ世界では生物に模した物体に宿る特別な力の源として神の血が分け与えられていると考えられていた。
「うーん、うちは何代も前にゼウスの血が入ってるぐらいか? よく知らんけど……人間の血で効果あるのか?」
『多少減ずるだろうが実際動きが良くなっているのだ。ひとまず明日は、全員から血を採取して適合力の高いものを探すとしよう。血にも相性があるだろうからな』
「ああ、ディオニュソスの神血とかだと酔っ払いそうだしな」
『工芸神か天空神、或いはヘルメスあたりの神血が手に入ればよかったのだが……』
「ヘルメスとアテナなら島に来てたな。もう帰ったけど」
『なんだと!? どうして血を貰わなかった!』
「そんな事情知らないからだよ! っていうかアテナが言ってたぞ! 『必要なものは既に揃っている』って、お前の発明に関してだろ」
『ムムム……とにかく、実験データを取らなくては!』
メカロスは勇み足で進めようとしていたパリス改造プランを一旦諦め、血液採取用の注射器を作成する。
注射器、というと近代になってからの発明に思われる。確かに歴史として明確に登場するのは17世紀以降なのだが、こういった医療がこの時代先進的なのはエジプトだ。
パピルスに記されている記録としてエジプトでは注射器状の中空構造をした筒によって、ミイラ作りの際に血液を取り除いたり、或いはミイラの体内に薬を注入したりしていたとされている。
メカロスも技術者でありつつ自分をサイボーグ化するぐらい医療知識があるため注射器も知っていたのである。
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翌日。小型の翼模型と共に血液適合実験を行うことにした。
漂着者一行から血を採取して模型に入れて、翼の精度向上をチェックするのだ。怪しげな注射器で血を抜かれる、というので皆はやや嫌そうな顔をしたのだがハルピュイアを倒すにはやむを得なかった。
川の女神オイノーネの神血の場合。
『……女神の血ならいけるかと思ったら全然性能上がらん……むしろ翼がグチョグチョに湿気りだした……』
「仕方ないだろ。ボクも空なんて飛んだことないんだし」
神としての属性が違いすぎるため適合無し。
トラキア人奴隷たちは神の血が薄いので、多くを採って火で炙り純度を高めてみたのだが、
『……ほのかに酒臭く、羽がフニョフニョしてきた……』
「確かトラキアはディオニュソス信仰が多いから、その血が混じってるんじゃないかな?」
こちらも属性違い。おまけにほぼ一般人である彼らでは濃度が足りない。
ディオニュソス信仰では神も人も妖精も、大宴会で本能のまま混じったりするので血自体は薄く広まっているのであったが。
アマゾーンとペンテシレイアも調べた。彼女らはアレスの血を引いている。中でもペンテシレイアはアレスの娘でありその血は神の色が濃い。
神とのハーフとなれば、ヘラクレスやアスクレピオスが死後に神々の席へ至ったり、アキレウスが不死化させられかけたりしたようにほぼ神に近しい存在でもある。
なので期待されていたのだが、
『羽が暴れて制御不能だ!』
「アレスは荒々しいのが売りでちからね~」
羽の模型が猫に咥えられた鳩のようにバサバサと激しく動き回り、とてもじゃないがマトモに空を飛べるとは思えないほどであった。
更にはゼウスの子孫であるパリスとカサンドラを改めて調べると、
『……妹より兄の方が適合しているが、それでも弱いな……』
「同じ両親のはずなんだが、何が違うんだろうな?」
「はっ!! ……これはまさかお兄様は、義兄様……!? 実は血の繋がらない兄妹フラグでは!? 結婚セーフティ解除!」
「解除停止!」
「解除!」
「せっ!」
暴走して抱きついてくるカサンドラを杖で突っついて眠らせた。
適合性的にはパリスの血が一番マシなのだが、如何せんそれでも思ったより効果が低い。
『くっ! ここにアテナかヘパイストスの血筋がいれば!』
「それお前だろ……メカロスの血はダメなのか?」
『吾輩の残った血を抜いたら死ぬぞ! こんなボディから!』
神血で動く青銅人形の話が出たが、まさにメカロスはそれに近い存在である。
飛行ユニットの発明に命を掛けているとはいっても、血を抜いた瞬間に動かぬドラム缶へと変わってしまう可能性もあるので下手なことはできない。
「だけどアテナは材料揃ってるって言ってたしなあ」
『うーむ……ステュムパリデスの鳥から採取してみるか?』
「蝋が腐りそう……」
試した。腐った。
『どうすればいいんだ!』
「あのー」
頭を抱えるメカロスと皆が悩んでいる中で、控えめにカサンドラが挙手をして言う。
「わたし、分かっちゃったかもです。ズバリ、飛行属性を持っている神の血の在り処」
「なんだ? ハルピュイアを狩ってくるとかじゃないよな」
「惜しい。怪物は怪物なんですが……それです」
カサンドラが指差したのはパリスである。彼女は近づいて、改めて彼が肩当てにしているアイギスの盾に触れた。
「このアイギスについているメデューサの首──これから血を絞るんです!」
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メデューサ。醜悪なるゴルゴン三姉妹の末妹であるこの怪物は、もともと土着の女神であったとされる。
都市コリントスに住まう『女王』を意味する名を持つ女神メデューサを、アテナが追い出して怪物に凋落させるというストーリーは何やら神々の勢力争いを感じるのだが、元来女神であったメデューサの血もまた神血と言えよう。
英雄ペルセウスがメデューサの首を切り落とした際に溢れた血は特別だったのだ。
一つは恐るべき猛毒であり壺に集めてアテナに献上されたこと。
一つは海に滴り落ちた血がサンゴとなったこと。
一つは砂に染み込んだ血がサソリになったこと。
そしてもう一つが、血から巨人クリュサオルと天馬ペガサスが生まれたことだ。
言うまでもなくペガサスはギリシャを代表とする飛行生物であり、メデューサも伝承によればその背に黄金の翼を持っていたという。
即ちメデューサの血液はまさに、飛行ユニットを動かすために最適な素材といえよう。
『よし……準備はできたな』
メデューサの血液採取のためには問題点があった。
それはオイノーネたちの作る霊薬によって、メデューサの首を一時的に復活させる必要があったのだ。
ゴルゴン姉妹は不死身の怪物である。首だけになってもその眼光によって石化光線を放つことから、本質的にはまだ生きているのだ。乾ききった傷口を癒やしてやれば、血が再び滴るだろう。
姉妹の中でメデューサだけ不死身ではなかった、と言われるのだがそれは結果論としてペルセウスが退治出来てしまったからであり、よりにもよってアテナから直接化け物にされた怪物が、とばっちりで怪物にされた姉妹に劣るわけがない。
ペルセウスは退治の際に、不死身の神でも切断できるヘパイストス製の鎌をヘルメスから借りていたので首を切り落として再生不能に陥らせることができた。そもそも使ったのが不死殺しの武器だったのだから、恐らく他のゴルゴン姉妹が相手でも退治できたのだろう。
首だけになったメデューサを完全に蘇生することは不可能だが、首に活力を多少戻す程度ならば可能だ。
「……なんか対策に対策を重ねても微妙に怖いよね」
「怪物の代表格みたいな相手だからなあ」
もちろん、癒やしたメデューサが首だけになっても暴れだすのを警戒して準備もしている。
アイギスの盾を岩に何重にもロープで縛り付けて、メデューサの目元はガッチリと山羊皮の覆いで隠している。万が一の際に石化光線が拡散しないように葉っぱを編んで作った壁で囲み、殆どの人員は避難していた。
薬剤塗布と血液採取の係としてメカロスが近づき、バックアップとしてパリスたちが離れた岩陰から覗いている。予想以上にメデューサが活性化した場合、遠距離からモルヒネの矢を打ち込んで鎮圧する予定である。ただ首だけになっても不死身の怪物にどこまで効果があるかは不明だったが。
『では行くぞ!』
ポムポムとした妙な足音と共にメカロスが片手に薬を浸けた刷毛、もう片方の手に翼を持って進んだ。
メデューサから湧き出る血の量が不明であるために、僅かな量でもダイレクトに試作品へと注入するためだ。更に血は猛毒であるため、メカである彼が適任なのだ。
白銀色をした円盾。その中央に、レリーフ彫刻のようにほぼ平面となったメデューサの首が埋め込まれている。メデューサの首に色は無くそれ自体が石色をしていた。とても生きているようには見えないのだがその力を開放すればルビー色の眼球が爛々と光だす。
メデューサ、即ち恐るべき怪物ゴルゴンの名はペルセウスが退治する以前より、ギリシャで有名な怪物であった。
曰く、猪の如き牙で人を噛み殺す。
曰く、馬よりも早く地を掛ける。
曰く、黄金の翼で人を攫う。
曰く、数千万の毛髪がすべて毒蛇である。
曰く、その目を見た者は恐ろしさのあまり石になる。
曰く、一体ではなく三体もいる。
曰く、不死身である。
多種多様な評判が盛り込まれてもはやキメラのような怪物が混ざりに混ざった姿であるとまで言われたのがゴルゴンである。
なぜ世界の果てにある孤島に住まう怪物が、ここまで詳細に恐怖を語られていたのか。
目を合わせただけで死んでしまう化け物だというのに、翼だの牙だの蛇だのといった特徴まで詳細にわかるのか。
それはゴルゴンという名自体が、『恐ろしい者』という意味を持つことから推察される。
つまり多くの噂を持つゴルゴンは怪物に対する恐怖の化身であるのだ。誰かが語る、恐ろしい怪物の話はゴルゴンに集約され、信仰されていった。
それはもはや女神や、生物としての怪物というよりも風聞から生まれた怪異に近い。
だがそれ故に、人々から生まれる純度の高い恐怖そのものを放つゴルゴンの恐ろしさ、石化の力は神々に等しい巨人にすら通用するのだろう。知恵ある者ならばこの世に恐れを知らぬ者は居ないからだ。ゼウスすらテュポーンを恐れるのだから。
メカロスが慎重に、メデューサの首へと治療薬を塗りつける。
『うーむ、どれぐらいで効果が……』
ほぼ平面になっているメデューサには一見、変化が無いように見えた──次の瞬間。
メデューサの頭部、髪となっている無数の蛇の彫刻が緑色に染まり、そして盾から浮き出て激しく蠢き出した!
『む!?』
「メカロス! 危ないぞ!」
盾のレリーフとなっているときは小さく見えていた蛇の群れが厚みを帯びて現世に蘇ったとき、その蛇の一本一本の長さは2メートルを越えている上に数も数十から数百、更に増殖していくように見えた。
それが激しく暴れ始め、すぐ近くにいたメカロスにも緑色の濁流めいて襲いかかり、青銅の体に噛みつき始めた!
ヘパイストス製の青銅ならともかく、乏しい材料で作られたメカロスのボディは神に等しい怪物が持つ蛇の牙によってバリバリと音を立ててボール紙のように穴が空けられていく。
「一旦下がれ!!」
『待て! 首から血が滲んできて……ええい!』
体中を噛みつかれながらもメカロスはメデューサの首に翼の付け根をくっつけて直接中に血を取り込もうとした。
そうしている間にも盾に埋め込まれていたメデューサは徐々に厚みを増していき、顔が盾からせり出していく。真っ白だったメデューサの顔色が鉛色と青白さを混ぜた、怪物本来の血色へと変わっていく。
『オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛! !』
メデューサの叫び声が恐るべき激しさで響いた。葉っぱで作った防護壁は一瞬で散り散りに破れ、島にいた小鳥や虫は一斉に逃げ出していく危険な音だった。
恐怖そのものを喚起させる音だ。離れていたパリスやオイノーネたちですら、その叫びで背筋に氷柱を突き刺されたような恐ろしさを感じ、カサンドラなどは倒れてしまった。メデューサを倒したペルセウスですら、ハデスの兜で姿を隠して震えたという怪物なのだから当然である。
島の周囲にいた海の妖精たちは慌てて逃げ出しながら世界にメデューサの復活を伝え、アテナを始めとする神々はそちらに視線を送る。
あまりの振動波に、蛇に噛まれて穴だらけになっていたメカロスのボディが幾らか剥離した。自分の体が崩壊しながらも、メカロスは翼に血を注ぐためにしがみついた。
『もうちょっとだ! この化け物め、吾輩の発明の糧になれえええええ!!』
「あいつバカか!?」
意地でも離れずに首の断面に翼を押し付ける。メカロスは機械の手であっても、その持っている翼へと徐々に神血の力が宿っていくのを感じていた。
あと少しで完成するのだ。手が蛇によってもがれようと、胴体の内部を食い荒らされようと、メカロスは強い意志で目を輝かせて翼を押し付ける。
当然ながら最も近い位置にいる彼にも恐怖の叫びによる、それこそ石化せんばかりの波動が襲っているのだったが──機械の体のおかげか、生来の勇気からか耐えている。
「思ったより元気になりやがった! 一旦眠らせるぞ! オイノーネ、矢を頼む!」
「はいよ!」
オイノーネが小さな桶にいれた眠り薬に鏃を浸けていた矢をパリスに渡す。
パリスは身を乗り出して一瞬で状況を確認する。髪の蛇は大暴れして手当たりしだいに周囲へと噛みつき、盾を縛っているロープも噛みちぎられそうだった。
メデューサの目は塞がれているままなのは救いだろうか。メカロスは既にスクラップ寸前になっていて、一刻の猶予もない。
鋼鉄製の弓を力強く引き絞り、パリスは集中して狙いを定める。メカロスが射線に入っていて邪魔だが、それでも隙間を狙って睡眠の矢を一瞬で複数打ち込んだ。
だが────
「クソッ! 阻まれた!」
メデューサの頭から伸びた数十匹の蛇が壁のようになって、顔面を狙った矢を絡め取った。
何匹かは睡眠薬の塗られた鏃で傷ついたのか脱力しているが本体にまで影響は及ばないようだ。蛇の太さは手首ほどで、青銅めいた鱗とメカロスを砕く筋肉の塊である。数匹程度ならばパリスの矢で射抜けるのだが、それが何重にも壁になったときには鉄の盾よりも強力な防御となる。
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛! !』
再び心胆が麻痺しそうな叫びと同時に、青銅が砕け散る音が響いた。
メデューサ自身の口が自由に動かせるようになり、そこにある猪の牙にてメカロスを致命的にまで噛み砕いた。
穴だらけになっていた胴体が複数に散らばり、頭部パーツが砂浜に転がり落ちた。彼が保持していた翼だけはメデューサの首に付着したままで、バサバサと羽ばたいている。
「メカロス!」
不味い、とパリスは思った。このまま盾を縛っている縄を蛇が食いちぎれば、もしかしたらあの飛行ユニットを支配したメデューサが空を飛び始めるかもしれない。
生き返っても所詮は首だけ、移動もできなければどうとでもなる。最悪、放置していればまた行動不能になる。そういった前提条件があってのメデューサ復活作戦だったのだ。
パリスはとにかく攻撃を加えることにした。
「オリオンの加護あれ! そして願わくばその剛力、今だけ貸し与えてくれ!」
パリスは一際力を込めて弓を引く。ヘパイストスが作ったこの弓矢は地味であるのだが、速射をすればそれなりの力で引けて、力を込めて弦を引き絞れば恐ろしく強靭な張りへと変わる。短弓と長弓両方の威力を使い手次第で出せる代物であった。
狩りの王者にしてギリシャでも随一の弓の使い手であったオリオンに祈りを捧げながら強力な矢に力を込める。オリオンはナンパな優男に思われるような女好きであるのだが、その父神譲りの腕力で、あらゆる武器を寄せ付けないライオンを素手で殴り殺すほどの力を持っていた。彼の弓術の極意は恐るべき腕力に裏付けされている。
ギ、ギ、と音が鳴って軋む弓に番えられた矢の先端が薄ぼんやりと光った。そして大気が歪むような熱を感じる。
それを見てペンテシレイアが目を輝かせる。
「なんか凄いでち!? オリオンの力が来てるでちか!?」
「いや……テーピングによる筋力補強効果だな」
「なんでそこだけ現実的なんでち!?」
それはともかく、様々な加護の籠められた矢を限界まで引き絞り、
「────力の矢よ!」
発射。光の矢となった一撃は瞬時に着弾すると同時に、本体を庇った蛇の群れごと閃光と共に爆発をした。
凄まじい威力である。小さな城の門ぐらいなら吹き飛ばしていたかもしれない。メカロスのボディも粉々である。
だが誤算があった。盾に封じられていたメデューサは、怪物の頃に比べてその質量が非常に軽かったのだ。
直撃は避けて蛇の群れで受け止め、爆発の威力を受けてメデューサの首は盾ごと吹き飛ばされることで本体へのダメージが軽減された。
まずい、とパリスは追いかけようと前に出たが彼をペンテシレイアが追い越した。
「メデューサ退治なんて名誉の戦いでち!! 蛇を切り払うのは任せるでち!!」
「ペンテシレイア! 無理するなよ!」
「っていうかパリスの方こそあんな爆撃、下手したら目隠しが外れるから止めるでち!」
確かに。パリスはちょっと冷や汗を掻いた。この状況で石化魔眼まで使われるようになったらコトである。
「変身でち!!」
ペンテシレイアは駆けながら叫んだ。彼女の大斧が赤い火花に似た粒子に一部変換されながら形を換えて、ペンテシレイアの全身を包む。
一瞬輝いたかと思うと、ペンテシレイアは年の頃17ほどの大人(アマゾーン基準ではそうである)の女性に姿を換えていて、赤く光る鎧に篭手、槍を手にしている。ヘパイストス製の『祝福された戦斧』により、彼女は全身にアレスの加護が入った武具を身に纏って全盛期の姿へと変身するのだ。
燃えるようなルビー色の髪の毛をたなびかせ、尋常ならざる速度で地を掛けてメデューサを追いかける。その速度はパリスも到底追いつけないほどに早い。彼とて、並の英雄よりは素早く動けるというのに。
元よりアマゾーンの女王としての身体能力に加えて常時アレスの時間限定の強力な加護がその速さを向上させている。ペンテシレイアはまだ滞空しているメデューサの首(と、アイギスの盾)を見上げた。
メデューサは吹き飛ばされながらも空中で翼を動かし、どうにか飛行能力を制御しようとしているらしい。更に爆発で千切れた蛇もぼたぼたと地面に落ちて、新たな蛇が生まれている。
「させませんです!」
ペンテシレイアが大地を強く踏みしめて跳躍した。下手な城壁など飛び越えてしまいそうな高さまで一気に上昇してメデューサへと肉薄をする。
そんな追いかけてくる英雄に、メデューサの蛇たちが体を伸ばし、一斉に襲いかかった!
青銅の板すら噛み割る牙を持つ蛇の群れが殺意を持って襲いかかってくる。それを前に、ペンテシレイアは高揚していた。
あらゆる恐怖の擬人化であるゴルゴンの怪物。本能的な畏れと怖気を齎すもの。それは神の加護を得て神具を手にした英雄であろうと克服するのは困難だ。
ただ、戦いの狂気を司るアレスの加護以外では。アレスによって奮わされた闘争心は、相手が誰であろうとも怯むことなく、死の恐怖すら跳ね除けて戦士を進ませる。知恵の戦女神ではできない後先を考えない攻撃。それ故に、ゼウスはアレスのことを最も強いとは思っておらずとも戦いにおいては信頼しているのだ。
「逃がすかあああ!!」
ペンテシレイアが片手で振るった槍が、彼女を迎撃しようと近づいた蛇を十数本も同時に切断し、更に別の角度から回り込んできた蛇をもう片方の篭手で守った手で掴んだ。
「哀れな長虫は地に這いつくばるがいいです!」
そして空中でメデューサの本体ごと振り回して、自身の落下するに任せて引っ張ったまま地面に叩きつける!
そこでペンテシレイアの攻撃は止まらない。メデューサの首を足で踏みつけて抑えて更に両手で、頭から次々に伸びてくる蛇をまるで雑草でも毟るかのように、ブチブチと引き千切りまくった。
テンションが上がって高笑いをしながらメデューサの蛇髪をひたすら毟り続ける。
「アアアアラララララララアアアアイイ!! です!! ざまあみろ!!」
アマゾーンは遊牧民族であり、野宿をすることが多い。そんな中で蛇という生き物は自身や家畜の安全のため、積極的に狩り尽くす害虫のような存在だったのだ。恐れるよりも腹が立つ相手だ。何度も何度も蛇の群れが這えてくる頭を殴りつけ、蛇を片手で絞め殺す。
そんな中で当のメデューサは目隠しをしているため状況が完全に把握できないまま、様々な状況に暴れながらも混乱していたのだが、ようやく自分のすぐ近くで誰かが蛇髪を攻撃していることを積極的に排除せねば、と思った。
だが、牙のある己の口が上手く閉じないことでメデューサは戸惑っている。口の中にはメカロスの心臓部である歯車のような部品が挟まっていて閉じることもできないのだ。
もし青銅の爪を持つ腕があれば捕まえて切り裂けるというのに、首だけになった上に目も口も塞がれているメデューサは攻撃方法が限られていた。
こうなれば、とメデューサは一際太く千切れない蛇を頭から何本も伸ばし、それらは大きな口を開けて周囲に毒液を霧のように吐き出した。
至近距離で殴りつけながら叫んでいる彼女はすぐにも吸い込みそうになったが──
「頭アレスのちびっこ!! 口塞げー!」
オイノーネが真水を操り、バケツをひっくり返したようにペンテシレイアに水を頭上からぶっかけて毒の霧を洗い流す。
「一旦離れろ、ペンテシレイア!」
更に追いかけてきたパリスが矢を大蛇に次々に打ち込んだ。ペンテシレイアは咄嗟にそこから飛び退くと同時に、巨大な蛇の頭部へと次々に力の込められた矢が命中して小規模爆発と共に頭を消し飛ばしていった。
ペンテシレイアからむしられ、量よりも質とばかりに大きく出した蛇の髪を消されたメデューサは本体ががら空きになっている。
「それだけ蛇が減れば防げないだろ!」
そう確信しながら、ペンテシレイアに踏みつけられているメデューサへと強力な睡眠の矢を射ち込んだ。
いかなる不死身の怪物とはいえ、睡眠は取る。いや、決して眠らないと言われた竜ですら、魔女の秘薬に掛かれば眠りにつかされる。主神ゼウスであろうとも、気が緩めば眠らされてしまう。
ギリシャにおいて眠りとは避けられぬものであり、一時的に活性化させられていたメデューサの首は眠りによって、再び顔から生気を失い、頭髪の蛇も色が抜けて盾に埋め込まれた彫刻のように平面に沈んでいった。
怪物は再び、単なる英雄の証にして神々の道具へと戻っていく。
「やったか……だがメカロスが……」
パリスはオイノーネが持ってきた、メカロスの頭部パーツを残念そうに見る。
哀れにも飛ぶ機械を夢見て、孤独に長い間研究していた若者は今は半円形の桶みたいになってしまっている。
『ビガビガ。死ヌカト思ッタ』
「生きてるのかよ! 声が片言になってるけど!」
『コノパーツダケデハ発声器官ガ……ソレヨリ飛行ユニットハ?』
なんかまだ喋れるメカロスの指摘に、そういえばと思って飛行ユニットを確認してみると……
メデューサの首に付着していた翼は、メデューサがアイギスの一部に戻ると同時に──
アイギスの盾に二枚の翼の彫刻が加えられ、今にも飛び立ちそうな神々しさを見せていた。最硬の盾は石化能力に加え、飛行能力を持つ神具となったのである。
『不死殺しの鎌ハルペーは、ヘパイストスが作ってヘルメスが持っているというが……そもそもあれ、クソ親父の武器ではなかったか?』────関係者Z
『そういえばあのクロノスの鎌はどうしたんだ?』────解説者P
『ハデスが姿を消してクロノスから盗んだあと海に捨てたっきり見つかっておらん。神々を殺せるメイン武器を奪うという重要な役目なのだが、やはり地味だよなハデス』────関係者Z




