第9話「にゃんバスのリリにゃんにゃ〜ん❤︎」
「お、おお…………」
どうやら、音々さんの曲、しいては俺の作詞した曲、と言ってもいいんだろうか……『たわわな☆パンケ〜キッス❤︎』を、どこぞのネットアイドルが、生配信で”歌ってみた”らしく、そのせいで原曲の方もおかしな再生数になっている、らしい。
というのも、肝心の配信動画のアーカイブが残ってないんだよな。
「……すーげえ。『NENE』の順位、ドリコンで123位って、音々さん582位から爆上がりじゃん」
やっぱボキュート全盛の時代とはいえ、生声で歌える歌手やアイドルの拡散力は強力らしい。そこに付いてるファンのクチコミってのはすげえんだなあ……と俺はオタクの力に改めて感心した。
「しかし、誰が歌ってたんだろうなあ……」
俺もネットアイドルにはそこそこハマっていた時期があったので、気になるところだ。ドリコンの『NENE』のページを見てみると、『歌ってみたからきますた』等のコメントは散見しているのだが……お、よく見たらミラー動画のリンクが貼ってあるじゃんか。
「……有能有能、っと……おっ?」
机の上でブブブと震えるスマホを見ると、メッセージアプリの通知がポンと光っているのに気づく。俺はマウスから手を離してアプリを開いた。
【差出人:音々さん】
『 でんわして
050-XXXX-XXXX 』
メッセージには携帯の番号が記載されている。こりゃあ思わずして音々さんの番号ゲットだぜwwwなどと喜んでる場合じゃないか。
「──あ。もしもし邪念場ですけd」
「どどどーすんのよっ!! バズってるじゃない!!」
「いや、それを望んでたんじゃないんすか」
「そ、そうなんだけど……でも私はアニメを!」
「いいじゃないすか。話題になった方が、個人アニメーターからも打診来やすいんじゃないすか?」
知名度を上げてアニメーターからのお声がけを待つなら、願ったり叶ったりじゃないか、と俺は思う。
「それは、そうなんだけど! な、なんか全然違うとこから来ちゃったから困ってんのよ!」
「えっ、なんかオファー来たんすか?」
音々さんは、取り乱して荒くなった呼吸を整えてから、一呼吸おいて続ける。
「なんか、その歌ってくれたアイドルの事務所の人からDMが来て」
「あ、そうそう。ちょうどその動画、見ようとしてたんすよね」
俺は思い出したように、先程のリンクアドレスをマウスでクリックする。
「その子の楽曲を作ってくれないかって──」
「へえ〜、誰です? ──ん?」
すると、目の前のディスプレイには、あざとい猫耳の被り物をつけた、ゴスロリ衣装の銀髪少女が映り、俺は自分の目を疑った。
「私、よく知らないんだけど、『にゃんころバスターズ』ってグループの──」
そこには、俺がかつて、まだ『カリジョ妄想❤︎マル秘手帳』を書き始める前に、追っかけていたネットアイドル──
「──にゃ、にゃ、にゃ」
『どうも〜! にゃんバスのリリにゃんにゃ〜ん❤︎』
にゃんバスのリリにゃ(俺の推しメン)、が映っていたのである。
「にゃんバスですとおおおおおおおおおおお!?」
あろうことか、俺の書いたクソみたいな詞を口ずさんで──。
「──音々さん」
「ん?」
「その話、受けましょう」
「……はい?」
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