第12話「稀代の歌姫」
──やべえやべえ。あの、『リリにゃ』が俺の目の前で喋ってんるんだが! うわわわ、平静を保っていらんねえ。
「……アンタが『NENE』ね。せっかく来てもらって残念だけど、ここでお引き取り願うわ」
うわー、リリにゃの腕組みプンスカポーズ可愛いスギィ〜! しかも音々さんとリリにゃが喋ってるよ〜! うわー、どっちも可愛いけど、やっぱリリにゃには負けるよなあ〜! なんたって、俺のリリにゃだからなあ〜! でもリリにゃ、なんか雰囲気がいつもと違わないかにゃ……?
「……あの、ありがとうございます。私たちの曲を歌ってくださったみたいで……」
「ふんっ、あんなのネタで歌っただけよ! 本気にしてこんなとこまで来て、馬鹿みたい! って……あなた、私《《たち》》って言った?」
ぁ〜ん! リリにゃのしかめっ面も可愛いにゃ〜ん! って『にゃ〜ん』の語尾どこ行ったんだろう? リリにゃ、調子悪いのかにゃ〜ん?
「はい……。私が作曲をしている西園寺 音々と言います。それで、隣のこの小汚い男が作詞の、邪念場 詩朗──」
うっはー、リリにゃがなんかこっち見てるぅ〜! あ、こっち近づいてくるぅ〜! いやーんどうしようかにゃ〜ん!
「……『NENE』が二人組だったとはね……。それで、アンタが作詞なわけ?」
あは〜ん! なんか俺に話しかけてきてるぅ〜! リリにゃの甘い息がお顔に吹きかかるぅ〜!
「……アンタが、あのキモい作詞したやつかって聞いてんのよ!!」
「──キャいっ!」
……あれあれ、あれれ〜? なんか俺の知ってるリリにゃじゃないぞ〜?
「ちぃっ。二度とリリカの前に現れんなっ! この、ど腐れ変態ポエム野郎!!」
……あれれれれ〜? な〜んか、いつもの可愛い俺のリリにゃじゃないぞ〜!? 夢でも見てるのかにゃ〜ん?
「西園寺 音々……なるほど。どこかで見た顔だと思っていたが……」
社長──いや、リリにゃのお爺さまが、音々さんを見てブツブツ呟いていらっしゃる。
「──リリカ。やめなさい」
「お爺さまっ! でも、リリカはこんな変な曲じゃなくて、もっとちゃんとした曲で、ソロデビューを飾りたいのよ! じゃないとあの子に絶対笑われちゃうもん!!」
「ふむ……では、こう言うのはどうだろうか?」
うう〜ん、なんだが置いてけぼり食らってる気がするけど、リリにゃもお爺さまも、熱くなっちゃってどうしたんだろうにゃ〜。しかし必死そうなリリにゃも可愛いにゃ〜ん!
「君たちに、一つ条件を出そう」
「……条件、ですか?」
「リリカのソロデビュー楽曲が配信される予定日には、かのUKバンド『シェイミー』から同じくソロデビューが決まった、正真正銘、稀代の歌姫『シンシア・サリトーヴァ』の楽曲が、同日に日本で配信される」
「──!?」
「その週、『君たちが手掛けるリリカの楽曲再生数が、一日でも天下を取ること』。それが出来たらば、君達を一つ、大手アニメの『社内コンペ』に参加させることを約束しよう」
「──なっ!? シンシア・サリトーヴァですって!?」
「──おじいさまっ!?」
音々さんとリリにゃがほぼ同時に声をあげた。おいおい、なんだなんだ? シンシア・さりなんとかって誰? 外人? どっかで聞いたことあるような気がするけど、そんなことより、リリにゃんサインくれねえかにゃ〜ん。
「そう、シンシア・サリトーヴァ。君もよく知るドリコンの創設者、フェナード・サリトーヴァの一人娘としても有名じゃな。つまり、君と同じ2世アーティストというわけだ。西園寺 音々君──」
「…………!」
おいおい、なんだかよく分からねえ、壮大な展開になってる気がするけど、大丈夫なのかにゃ? そんなことより俺、リリにゃに嫌われた気がするんだが大丈夫なのかにゃ〜ん…?
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