1 悪の企み
「誘拐に、失敗しただと?」
場所は再び、ある町外れにある研究所の一室。プロローグで登場した白髪の男が、眉を潜めてそう言った。
その男の正面には、全身を黒タイツで包んだ中年男が、申し訳なさそうな表情で立っている。
そしてこう続けた。
「申し訳ありません、突然邪魔が入りまして」
「邪魔といっても、貴様程の戦闘能力を以てすれば、それを排除するくらい造作もない事であろう?」
「ところが、私の弱点である、七味唐辛子を目に入れられてしまいまして・・・・・・」
「何?ヒ(・)チミトウガラシを?」
「いえ、シ(・)チミトウガラシです」
「どちらでも構わん。それよりその邪魔者は、お前の弱点が、目に七味唐辛子を入れられる事だと知っていたのか?」
「それはただの偶然だとは思うんですが。何せその邪魔者というのは、ちょっとイケメンのただの男子高校生でしたし」
「ちょっとイケメンのただの男子高校生が、普段から七味唐辛子を持ち歩いたりするのか?」
「きっと、あらゆる食べ物に七味唐辛子をかけるタイプなのでしょう。いわゆる『七味トウガラシスト』というやつです」
「そんな言葉は初めて聞くが。とにかく、相手がお前の弱点を知っている以上、こちらもそれなりの対策を立てなければならない」
「一味唐辛子で対抗するんですね?」
「もうお前はあまり喋るな。とにかく次こそは、必ずやあの娘をさらってくるのだ。あの娘さえ居れば、この世界を滅ぼす事が出来るのだからな!」
「お任せください!次は必ずやワルダー様のご期待に応えて見せます!」
「うむ!期待しているぞ!クァーックァックァックァ!」
「キョーッキョッキョッキョ♪」
「クァーックァックァックァ!」
「キョーッキョッキョッキョ♪」
「クァーックァ──────」
「キョーッキョッキョ♪」
「ク──────」
「キョーッ♪」
「うるさい!」