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闘え!ひょっとこ仮面!  作者: 椎家 友妻
第一話 情けない主人公と、イケメンの転校生。
6/40

5 迫りくるイケメン

 そんなこんなで昼休み。

 午前の授業でこれでもかというくらいヘコまされた俺は、逃げる様に教室から出た。

 朝の俺の嫌な予感は見事に的中した。

隣の席に、あのイケメンで成績優秀な室戸がやって来た事によって、俺のダメっぷりは更に目立つようになった。

ただ隣に座ってるだけやのに、何でこんなにも劣等感を感じんとあかんのか?

おまけにあいつは女子に大人気やし、スポーツも万能らしい。

あいつが近くに居ると、ホンマに劣等感で押し潰されてしまいそうになる。

 ああ、早く席替えにならへんかなぁ・・・・・・。

 と心底願いながら、ガックリうなだれて廊下を歩いていると、

 「また背筋が曲がってる!」

 という叫び声とともに、守菜ちゃんがまた俺の背中を思い切りひっぱたいてきた。

 「ぐひぅっ⁉」

 朝と同じ様に背中をのけ反らせ、守菜ちゃんの方に振り向く俺。

すると守菜ちゃんは、朝よりも五割増しくらいの不機嫌さで声を荒げた。

 「午前中のアレは何や⁉ちょっとカッコイイ転校生が隣に来たからって、そないに縮こまる事ないやろ!」

 「う、で、でも、彼は成績優秀で、スポーツも万能で、女子にもモテモテで・・・・・・」

 「そんなんあんたには関係ないやろ!あんたはあんたなんやから堂々としいや!」

 「そ、そうやけど・・・・・・」

 「けどやない!ウチはあんたみたいにいつもウジウジネチネチしてる人間が大嫌いやねん!」

 「がーん⁉」

 守菜ちゃんの言葉があまりにショックで、思わず口に出てしまった俺。

 確かに、十年前のあの出来事以来、嫌われてしもうてたのは知ってたけど、こうやって面と向かって言われると、猛烈にツライ。

 俺、ホンマに守菜ちゃんに嫌われてるんやなぁ・・・・・・。

 「や、やっぱり守菜ちゃんも、室戸君みたいな男子がタイプなん?」

 心に深刻なダメージを負った俺は、虫の息で守菜ちゃんに訊ねた。

すると守菜ちゃんは、キッパリとこう答えた。

 「そんな訳ないやろ!ウチはああいう何でもソツなくこなす奴は好きやない!あの手のタイプは自分がチヤホヤされて当然と思うてるからな!」

 「そ、そうなんや・・・・・・」

 イケメン相手でも容赦ないなあこの人。

でもそれやったら守菜ちゃんは、一体どんなタイプの男が好きなんやろう?

そう疑問に思ったその時。

 「何だか、随分と嫌われてしまったみたいですね」

 という声が背後からしたので振り向くと、苦笑いを浮かべた室戸が、そこに立っていた。

 「あ・・・・・・」

 今の言葉を本人に聞かれたと悟った守菜ちゃんは、流石に気まずそうな顔をした。

 「あー、いや、今のはね?別に室戸君の事を嫌ってる訳やなくて、室戸君みたいな人に、そういうタイプが多いというだけで、室戸君本人がそういう人やと言いたいんやなくて、えぇと・・・・・・」

 何とか取り繕おうとする守菜ちゃんやけど、その裏表のない性格が災いして、却って墓穴を掘る結果になっている。

しかし室戸は別に気を悪くする風でもなく、

 「いえ、別に気にしませんから」

 と、爽やかな笑みを浮かべながら言った。

この男は人間性までもが優等生なのやろうか?

 とか思っていると、室戸は意外な言葉を続けた。

 「その裏表のない性格は、あの頃と変わっていませんね(・・・・・・・・・・・・・)」

 「え?」「へ?」

 室戸の言葉に、俺と守菜ちゃんはほぼ同時に目を丸くした。

どういう事や?『あの頃と変わってない』って。

これやとまるで室戸は以前、守菜ちゃんと()うた事があるみたいやないか。

まさか室戸は、守菜ちゃんと顔見知りやったんか?

そう思った俺は、守菜ちゃんの顔を見やった。

その守菜ちゃんは、目を丸くしたまま静止していた。

そして数秒経ってから発した言葉がこれやった。

 「えっと・・・・・・何処かで()うた事、あったっけ?」

 どうやら守菜ちゃんは分からない御様子。

これは、守菜ちゃんが室戸の事をど忘れしているのか?

それとも室戸の方が、守菜ちゃんを他の誰かと勘違いしてるのか?

 とか考えていると、室戸は特に表情を変えずに言った。

 「まあ、もう随分と前の事ですからね。でも、近々思い出すことになると思いますよ」

 そして何やら意味深に目を細めると、踵を返してそのまま歩き去っていった。

その後姿を眺めながら、俺は守菜ちゃんに訊ねた。

 「ホンマに、彼に心当たりないの?」

 それに対して守菜ちゃん。

 「覚えてない・・・・・・ていうか、あの人の勘違いやと思うんやけど」

 「でも彼は、近いうちに思い出すとか言うてたやん?」

 「そんなん言われても、知らんモンは知らんねんもん」

 「気になれへんの?」

 「なれへん。身に覚えのない事を、ウダウダ考えてもしゃあないもん。ウチはもう教室に戻る。あんたはどうすんの?」

 「あ、えと、購買にパンを買いに行こうかと」

 「あ、そ。じゃあね」

 守菜ちゃんは素っ気なくそう言うと、スタスタと教室の方へ歩いていった。

そういえば守菜ちゃん、俺に何の用があったんやろう?

『背筋が曲がってる』って言いに来ただけかいな?

俺の背筋が曲がってるのが、よっぽど気に入らんのかなぁ・・・・・・。

 まあそれはさておき、室戸のさっきのあの言葉。

守菜ちゃんは気にせぇへんって言うとったけど、俺はメチャクチャ気になっている。

室戸の口振りからして、守菜ちゃんを他の誰かと勘違いしているようには俺は思われへん。

となると、彼は守菜ちゃんの何なんやろう?

古い友達?遠い親戚?

・・・・・・まさか子供の頃に、結婚を誓い合った仲とか?

『本当は高校を卒業をしてからプロポーズするつもりだったけど、待ちきれずに迎えに来たよハニィ』みたいな?

 もしも、そうやとしたら・・・・・・ふんぎゃーっ!



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