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闘え!ひょっとこ仮面!  作者: 椎家 友妻
第三話 新たなる敵
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6 エリックの正体と、悪の科学者の存在

 「プロフェッサーワルダー。本名室戸(むろと)忠信(ただのぶ)は、アメリカのある研究所で、人工生命体の研究をしていました。しかしそれは人類の繁栄や医療の進歩が目的ではなく、世界を破滅させる事が出来る力を持った、人工生命体を作る為だったのです」

 「いかにも悪の科学者が考えそうな事やな」

 「やがてその企みが研究所の上の人達にバレてしまい、室戸は危険な思想を持った科学者として、世界中の研究所に相手にされなくなってしまいます」

 「まあ、当然やわな」

 「ですが自分の野望を諦めきれなかった室戸は故郷だった日本に戻り、独自に人工生命体の研究を続けました。そして今から約十年前、ついに室戸は人工生命体を作り出す事に成功したのです」

 「まさか、それがお前やと言うんか?」

 「そうです。ですが僕は初期型という事もあって、戦闘能力の低い、ただのクローン人間同然の人工生命体でした。なので室戸は更に戦闘能力の高い人造怪人を生み出すべく、新たな研究に取り組み始めました。そんなある日の事です。室戸は全くの偶然で、あるとんでもない物を発明してしまったのです」

 「とんでもない物?何やそれは?」

 「名づけて、『地球破壊パワー配合チョコレート』」

 「・・・・・・何それ?」

 「地球破壊パワー配合チョコレートとは、地球を、破壊する、パワーを、配合した、チョコレートです」

 「区切って言うただけやないか。でも、何でまたそんなチョコレートが出来たんや?」

 「室戸は意外にもお菓子作りが趣味でして、その日はチョコレートを作ったんですが、何か新しいタイプのチョコレートを作ろうと色々な材料を入れた結果、そういうチョコが完成したそうです」

 「凄い偶然やな!しかもそのチョコを見ただけでそれに地球を破壊するパワーが配合されてるって、よく分かったな?」

 「室戸は悪の科学者ですが、科学者としての頭脳は一級品なので」

 「そういうモンなん?まあともかくそのチョコを食べた奴は、地球を破壊するパワーを手に入れられるという事なんか?」

 「そのチョコレートを食べただけでは力は得られません。室戸が開発した『地球破壊人間培養溶液』に数時間つからせて、初めてその人間は力を得ることが出来るんです」

 「つまりその変なチョコを食ってその変な溶液に数時間つかれば、その人間は地球を破壊するだけの力を持った、恐ろしい怪物になってしまうという事なんやな?」

 「そういう事です。そして室戸はそのチョコレートを僕に食べさせ、僕の体を改造しようとしたのです」

 「まあ、お前は元々そのために生み出されたのやろうしな」

 「ですが僕はそれを拒否しました。地球を破滅させたいという室戸の企みにはとても賛同出来なかったし、何より僕は普通の人間として、この世で生きてみたかったから」

 「まあこうして見る分には、お前は普通の人間と同じやもんな」

 「人間と同じ様に歳もとりますしね。だから僕は室戸の研究所から逃げ出したんです。地球破壊パワー配合チョコレートを持ち出して」

 「じゃあワルダーのオッサンは、お前の事を探してるんとちゃうか?」

 「勿論です。何しろそのチョコレートは全く偶然出来た物でしたから、室戸自身も同じ物を作り直す事が出来なかったのです。なので室戸は新たな人造怪人を作り出し、必死に僕を追いかけてきました。ですが僕も捕まる訳にはいかなかったので、今から十年前、当時室戸の研究所があった長野県の山中から、大阪へと逃れました。そして大阪のある小さな公園に辿り着いた時、僕は野良犬に襲われていた、ある少女に出会ったんです」

 「そ、それってまさか⁉」

 「はい、小中さんです。僕はその時野良犬をおっぱらってあげましたが、余程怖かったのか、小中さんはなかなか泣き止みませんでした。何か彼女を泣き止ませる方法がないかと悩んだ僕は、ズボンのポケットにチョコレートを入れていた事を思い出し、そのチョコを彼女にあげました」

 「何やて?」

 「すると彼女は泣き止み、嬉しそうにそのチョコをパリポリと食べました」

 「ちょっと待てや。その時お前が守菜ちゃんにあげたチョコって・・・・・・」

 「ズバリ、地球破壊パワー配合チョコレートです」

 「うぉおおいっ!何を食べさせとんねんお前は⁉」

 「いや~、うっかりしてました」

 「うっかりで済むか!」

 「うっかりハチベエとお呼びください」

 「呼ばんわ!それよりつまりはアレか!守菜ちゃんがワルダーに狙われてるのは、お前のせいっちゅう事やないか!」

 「サンスクリット語で言うとそうなるかもしれません」

 「サンスクリット語ではならんわ!日本語で言え!とにかく責任取れ責任!」

 「で、ですから僕は、あれからすぐに長野に戻って、室戸の動きをずっと監視していたんです。すると室戸は今年に入ってから『地球破壊パワー配合チョコレートを食べた人物探知機』を作り出し──────」

 「分かり易いけどもっと言い易い名前はないんか⁉」

 「──────とにかくその機械を使って、チョコを食べたのが大阪に住む小中さんだというのを突き止め、彼女をさらうべく、大阪に研究所を移したのです。勿論僕もそれを追って大阪へ来ました。そして室戸が新たに作り出した人造怪人に対抗すべく、ひょっとこ仮面の変身腹巻きを開発し、それを着けて戦ってくれる人を探す為に、小中さんが通う高校に転校生として入り込んだ。そこで出会ったのが鏡助君、あなたという訳です。以上で僕の話は終わりですが、何か質問はありますか?」

 「ある」

 「何でしょう?」

 「お前がひょっとこ仮面として戦ったらええんとちゃうんか?」

 「それでは質問もないようですので──────」

 「うぉおい!無視すんなやコラ!」

 「ひょっとこ仮面は鏡助君でないとダメなんです」

 「何でやねん⁉今の話やとお前が責任を取って戦わんとあかんやろ⁉それやのに何で俺がお前の尻拭いをせんとあかんねん⁉」

 「それはですね、昨日もお話ししましたけど、ひょっとこ仮面が本来の力を発揮するには、守りたいと思う相手への愛情が不可欠なんです。鏡助君が小中さんを想う気持ちは、ひょっとこ仮面の力を発揮するのに充分すぎるほど大きなものです。だから僕なんかより鏡助君の方が、はるかにひょっとこ仮面にふさわしいんですよ!」

 「そ、そんな、そうは言うけどやな、俺が守菜ちゃんの事を、好きでも、守菜ちゃんは俺の事、何とも思ってないやろうし。それに守菜ちゃんは、むしろお前の事を・・・・・・」

 「え?小中さんが?僕の事を?それはないと思いますよ?」

 「何でやねん?お前は守菜ちゃんの身の危険を二回も救った命の恩人やろ?それに、性格はともかく、お前はイケメンやし、俺とお前を比べたら、守菜ちゃんはお前を選ぶやろうが」

 「確かにその通りですね」

 「少しは謙遜(けんそん)せぇや!」

 「ですが僕は、小中さんのようなタイプの女性はあまり好みじゃないんですよ」

 「な、何やと⁉確かに守菜ちゃんはちょっとばかし性格がキツくて暴力的やけど、優しいところもある(はず)やろ!じゃあお前の好みのタイプの女性ってどんなんやねん⁉」

 「ズバリ、子持ちのバツイチ女性ですね」

 「何でやねん⁉若い身空(みそら)で何でそんなに根気の要る恋を求めんねん⁉」

 「ちなみに、今の彼女がそうです」

 「実際に付き合ってるんかい⁉」

 「彼女はバツイチの三十八歳で、十四歳の娘さんが居ます」

 「リアルなシングルマザー!」

 「それが困った事に、最近娘さんも僕の事を好きになってしまったみたいで、この前告白されてしまいまして」

 「親子二代との三角関係⁉ドロドロすぎるやろ!」

 「母親は母親で、僕に結婚を迫ってくるし」

 「状況が重過ぎる!聞いてるだけでしんどいわ!」

 「僕は、どうしたらいいでしょうか?」

 「知らんわ!み○もんたにでも訊け!」

 「まあそういう訳ですので、僕は小中さんとお付き合いする事は出来ないんです」

 「何ちゅうやっちゃ」

 「だから小中さんを守れるのは、鏡助君だけなんですよ!」

 「何か面倒な事を押し付けられてる気がするんやけど」

 「何を(おっしゃ)るウナギさん」

 「ウサギさんや」

 「そもそもこれは、鏡助君が小中さんとの距離を縮める絶好のチャンスなんですよ?小中さんが人造怪人にさらわれそうになっているところに、鏡助君が颯爽(さっそう)と現れてひょっとこ仮面に変身。そして彼女の見ている前で鮮やかに人造怪人をやっつければ、小中さんのハートは鏡助君のモノ。『鏡助君ってステキ♡あなたになら、私のおチチを揉ませてあげてもいいわ♡』となる事請け合いです」

 「お前は守菜ちゃんを馬鹿にしとんのか⁉あの子がそんな事言う訳ないやろ!」

 「まあとにかく、今日は小中さんが人造怪人に襲われた所に、タイミングよく助けに入るという作戦でいきましょう。小中さんに鏡助君の勇姿を見てもらうんです」

 「気が進まんなぁ。ていうか、今日もあの場所に人造怪人が現れるんか?」

 「間違いないと思います。ワルダーも一刻も早く小中さんを手に入れたいでしょうし」

 「もしそうやとすれば、昨日とはまた違う人造怪人が来るんやな?」

 「そうです。今日の相手は、昨日の黒タイツの男よりも手ごわいと見ていいでしょう」

 「ああそうかい・・・・・・」

 そう言って俺は、げんなりしながら天を仰いだ。

上空では綿(わた)(あめ)のような雲が、能天気に空を泳いでいた。

そんな今が地球の危機やと言うたところで、一体どれだけの人が信じるやろう?

そう考えると、自然と口から溜息が出た。



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