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闘え!ひょっとこ仮面!  作者: 椎家 友妻
第一話 情けない主人公と、イケメンの転校生。
2/40

1 ダメ主人公の、黒歴史

 男は昔から単純な生き物で、昔あった些細な事なんてすぐに忘れてしまう。

それに対して女は昔から実に賢い生き物で、昔あった些細な事も、事細かに覚えている。

そしてその能力を活かし、しばしば男を苦しい立場に追い込んだりする。

 俺、(こころ)()(きょう)(すけ)(十五歳)も、そういう経験をした事がある。

というか、今現在も経験し続けている。

 俺は大阪の日出郎(ひいろう)(ちょう)という田舎町に住む、極々平凡な高校生。

というか、平凡な高校生よりも勉強は苦手で、スポーツも大して出来ず、ルックスも決して良くはない。

体つきはスリムを通り越して貧弱で、顔つきも貧相。

そしてその顔に浮かぶ表情は、不安と自己嫌悪に満ち溢れた、典型的なもやしっ子。

ホンマに、自分でも嫌になるほどのヘナチョコぶり。

それがこの俺、心野鏡助なのや。

そんな事を言うてたら、改めて自分の事が嫌になってきた。

もうこの辺で物語を終わらしてもよろしいですか?

え?もうすこし続けろ?分かりました。

 えーと、最初の話の続きやけど、女は昔のちょっとした事でもよく覚えていて、それをいつまでもブチブチと言い続ける事がよくある。

そしてそれは、正に今の俺も身をもって体験していて、それのせいで、俺はこれ程までのダメ男になったんやないかとさえ思う。

 そう、あれは今から約十年前。俺が小学校に上がるちょっと前の頃。

俺の家の右斜め向かいの家に、()()という、俺と同い年の女の子が住んでいた(今も住んでるけど)。

家が近所で歳も同じという事で、俺と彼女は毎日のようによく遊んでいた。

守菜ちゃんは昔から明るくて元気で(恐ろしいまでに)気の強い、実にしっかり者の女の子やった。

それに比べて生まれつき気の弱かった俺は、そんな彼女に憧れるとともに、淡い恋心を抱いていた。

いわゆる初恋というやつや。

いつまでもこの守菜ちゃんと仲良く遊べたらええなぁ、なんてその頃は思っていた。

 ところがそんな俺のささいな願いは、ある事件によって無惨に打ち砕かれる事になる。

それは、ある日俺と守菜ちゃんが近所の公園に遊びに言った時。

俺達はそこで、体がやたらデカイ野良犬にでくわした。

そしてその野良犬は、俺達に向かって吠えまくってきたのや。

当時はまだ幼かった俺にとって、それはとてつもない恐怖やった(今でも怖いけど)。

普段は気丈な守菜ちゃんも、この時ばかりは恐怖に体を震わせていた。

ホンマやったらここで、男の俺が守菜ちゃんを守らなあかんかったんや。

好きな女の子を守るっちゅうのは、男として至極当然の振る舞いやからな。

でも、あの時の俺はよりにもよって、


 守菜ちゃんを置いて、逃げた。


 そう、逃げたんや。

その時の俺は正直言うて、逃げる事しか考えてなかった。

守菜ちゃんを守ろうとか、俺が(おとり)になろうなんて考えは、全く浮かばんかった。

とにかくその場から逃げたいという一心で、俺はひたすら逃げた。

好きやった守菜ちゃんを、そこに残して・・・・・・。

 ちなみに俺が逃げた後、その守菜ちゃんはどうなったのかと言うと、俺が逃げた直後に、たまたまその場に通りかかった同世代の男の子が、見事にその野良犬を追っ払い、守菜ちゃんを助けたらしい。

その男の子は俺とは比べモンにならん程のイケメンで、野良犬をおっぱらった後、恐怖に震える守菜ちゃんを慰めるため、お菓子を恵んでくれたそうや。

そして名前も告げずに去って行ったとか。

 その話を俺は、翌日守菜ちゃん本人に聞かされた。

そして最後に、トドメをさすようにこう言われた。


 『それに引き換え、あんたはホンマに弱虫やなぁ』


 『弱虫やなぁ』。

彼女のあの一言が、俺の心に深~く刻み付けられた。

そしてそれ以来、守菜ちゃんは俺に露骨に冷たくなり、事あるごとに、『あんたはホンマに弱虫やなぁ』と言われるようになって、それが現在に至っても続いているという訳や。

おかげで俺は、ただでさえ気弱な性格に加えて、『弱虫』のレッテルまで貼られ、どうしょうもなくダメな人間になりさがってしもうたのやった。

 俺はこのまま死ぬまで、ダメ人間として生きて行くしかないんやろうか。

守菜ちゃんに、俺のホンマの気持ちも伝えられへんままに、死んでしまうんやろうか。

 はぁ・・・・・・。


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